日本はキリンカップの決勝、チュニジア戦で0-3の完敗。タイトルを逃したうえに、6月シリーズの最終戦を勝利で飾ることはできなかった。

 もちろん、ワールドカップのメンバー選考のための1試合であることは理解できる。だが私の意見としては、大会の決勝戦なのだから、タイトルという結果にもっと貪欲に向き合ってほしかった。

 選手個人がアピールすることに必死になって、チームとしてまとまりがなかったように見えたし、絶対に優勝するというこだわりがあまり感じられなかった印象だ。

 内容を見ても課題が残る試合となった。4-3-3のミラーゲームとなったなか、日本のビルドアップの場面でチュニジアの3トップは、CBの吉田と板倉をフリーにして、アンカーの遠藤を厳しくマーク。CBがボールを持ったときには、遠藤への縦パスのコースも上手く消しながら前線から守備をしてきた。
 
 それを嫌がった遠藤が、パスを受けやすいように吉田と板倉の近くまでポジションを下げたことで、チームも全体的に下がった。そのためチュニジアが押し上げてきて、前からのプレッシャーがさらに厳しくなった。ビルドアップがしにくくなり、日本にとって不利な状況が長く続いた。

 遠藤の立ち位置はゴール前の人数不足にも影響。伊東が右サイドを果敢に仕掛け、精度の高いクロスを何回も上げていたなか、ビルドアップの際に遠藤が下がっていたので、そのスペースを埋めるために前線の南野も下がらざるを得なくなってしまい、ゴール前に浅野か鎌田しかいないというシーンが多くあった。

 遠藤がポジションを下げなくてもいいよう、吉田と板倉がドリブルで前に出ていく積極性も必要だった。またベンチからの指示や周囲の選手の声掛け、遠藤が自ら判断してポジショニングを変更するなど、誰かがこの問題に気が付いて、試合中に改善することはできなかったのか。
 
 課題は守備にもあった。1失点目のPK献上は、ペナルティエリア内にスルーパスを通されて、抜け出した相手選手を吉田が背後からスライディングで倒してしまった。だがよく見ると板倉のカバーが間に合っていたので、吉田は無理して止める必要はなかったはず。この失点は完全にCB2人の連係ミスから生まれた。

 最終ラインの裏へロングボールを入れられた流れから喫した2失点目も2人のミス。ゴール近くでバウンドしたボールを吉田と板倉がお互いに処理してくれるだろうと譲り合ってしまったのは最悪だ。

 今回の4連戦を振り返ると、パラグアイ戦の伊藤とガーナ戦の山根のパスミスも含め、多くの失点は自滅によるもの。相手に崩されたわけではないからこそ、自分たちの判断ミスで点を取られているのは残念だった。
 
 前線から相手のプレスを受けたとき、簡単にタッチラインに逃げずにビルドアップするというチャレンジは素晴らしい。でも、もっとセーフティに処理するプレーもチーム内で整理する必要がある。

 ときには簡単にクリアする、コーナーキックに逃げる、ということをチーム全体で良しとしないと。ワールドカップのように一瞬の判断ミスが失点につながる高いレベルの戦いでは、状況に応じて、簡単に処理をする判断力がさらに問われる。

 こうした様々な課題がワールドカップ開幕の約5か月前という時期に露呈したことは、プラスにも捉えられる。ここから森保監督とコーチングスタッフがしっかりと分析したうえで修正して、万全な状態で本番を迎えてほしい。

【著者プロフィール】
金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、64歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。

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