【プレミアリーグ】クリスタル・パレス0-2アーセナル(8月5日・日本時間6日/セルハースト・パーク)
8月5日に開幕したイングリッシュ・プレミアリーグ。アーセナルはクリスタル・パレスに2-0で勝利し、2022-23シーズンの初戦を白星で飾った。前半20分にセットプレーから先制すると、後半40分にも追加点を挙げて逃げ切っている。
■昨シーズン、チームの“救世主”となった冨安健洋はベンチ外
アルテタ監督の就任から4年目。現役時代は技巧派MFとして華麗なパスワークを支えたクラブOBに課せられるノルマは「CL出場」だ。昨シーズンは最終節までCL出場圏の4位以内になる可能性を残したが、あと一歩及ばず。5位に終わった。
とはいえ、序盤戦の戦いぶりを思えばCL出場を争ったのは上々の結果といってもいい。なにしろ開幕から0得点9失点、67シーズンぶりの3連敗という最悪のスタートを切ったのだから。だが、がけっぷちに追い込まれたチームは驚異的な巻き返しを見せる。
復調の立役者となったのが、日本代表DFの冨安健洋だった。セリエAのボローニャから加入した新戦力が右サイドバックに入ると、守備の安定感が格段に向上した。「相手のウイングを止めることが僕の仕事です」というように、冨安の最大の武器は1対1の強さだ。
188cm・84kgの大柄なサイズと、陸上の短距離選手のようなスプリント能力を併せ持つ。右サイドバックは相手の左ウイングとマッチアップするが、リーチの長さと守備範囲の広さを生かし、面白いようにドリブル突破を止めてみせた。
冨安の加入後、アーセナルは8試合負けなし。9月にはアーセナルの月間最優秀選手として表彰され、イギリスメディアが選ぶ右サイドバックランキングでは5位にランクインするなど、プレミア初挑戦ながら堂々たるパフォーマンスを示した。
しかしながら、本人が「全然満足のいくシーズンではなかった」というように、出場数は38試合中22試合と半分程度にとどまった。1月に筋肉系のトラブルで戦線離脱すると、2月に復帰を果たすも再び同じ箇所を怪我してしまう。
開幕戦のクリスタル・パレス戦も怪我からの回復が間に合わずにメンバー外。アルテタ監督は冨安とティアニーについて「彼らが万全な状態だったら、我々はもっと強いチームになれる」と復帰を心待ちにしている。これまで何度も繰り返してきた怪我をどこまで防止できるか──。それこそが冨安にとって最大のテーマと言えるだろう。
■戦術に変化をもたらす“シティコンビ”
CL出場という目標を叶えるために、この夏アーセナルは1億2000万ポンド、日本円にするとおよそ200億円もの大金をかけて新戦力を補強した。とりわけ、大型移籍として話題になったのは王者のマンチェスター・シティからやってきた2人だ。
1人目がブラジル代表のガブリエウ・ジェズス。攻撃の組み立てにも参加しながら、DFラインの背後への飛び出しや、ゴール前での豊富なフィニッシュワーク、前線からの献身的なプレッシングなど、FWに求められるあらゆる要素を持ったオールラウンダーだ。
ジェズスはプレシーズンマッチの5試合で7ゴールと大暴れ。アーセナルでの初めての試合となったニュルンベルグ戦で2ゴールを挙げると、エバートン戦やチェルシー戦でもゴールを決めて、セビージャ戦ではハットトリックも達成した。
アルテタ監督はジェズスについて「センターフォワードでも、ウイングでも、左右どちらでもできる。多くの柔軟性を与えてくれる」と賞賛を惜しまない。“9番”がアーセナルのエースと呼べる働きを見せられるかは、今シーズンを占う大事な要素だ。
2人目がウクライナ代表のジンチェンコだ。もともとは攻撃的な中盤の選手だったが、キック技術と戦術眼を買われて、グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティでは左サイドバックにコンバートされた。
クリスタル・パレスとの開幕戦ではジンチェンコの特徴をチーム戦術に落とし込んでいる場面が見られた。基本ポジションは左サイドバックだが、中に入ってボールを受けて攻撃の組み立てにも参加する。“偽サイドバック”と言われるものだ。
試合中にボランチのジャカと左サイドバックのジェンチェンコがポジションを入れ替えることで、相手にパスの出しどころを絞らせず、マークをしづらくさせる。アルテタ監督の戦術的なアイデアを実行できるピースがいるのは大きい。
昨シーズンのベースに新戦力が加わって、戦術的にもスケールアップを遂げつつあるアーセナル。6シーズンぶりのCL出場はもちろん、2003-04シーズン以来のプレミア優勝も決して夢ではない。(ABEMA/プレミアリーグ)
文/北健一郎(ウニベルサーレ)