イングランド代表にも選ばれた

昨季の夏、1億ポンドの高額な移籍金が支払われ、アストン・ヴィラからマンチェスター・シティへ移籍することになったジャック・グリーリッシュ。背番号は10とセルヒオ・アグエロの番号を受け継ぐ好待遇であり、大きな期待が寄せられた。

しかし昨季のプレミアでは26試合で3ゴール3アシストと1億ポンドの移籍金に見合う活躍はできなかった。今季は未だゴールがなく、難しい状況に陥っている。

「マンチェスター・シティのジャック・グリーリッシュは上手くいっていない。彼にできることは左サイドを走り、ドリブルをしてボールをキープするだけだ。(交代でピッチに入った)フィル・フォーデンは左右に動き、(相手が嫌がる)あらゆる問題を引き起こした」

「何も見えてこない。彼は1年以上シティにいるが、ジャック・グリーリッシュからは何も感じない。もし彼がイングランド代表に選ばれたら私は驚くね」

「私は彼に同情している。彼には1億ポンドの値札が付いていて、自分に合わないシステムでプレイするように言われているんだ」

このようにイングランド代表MFを批判するのは英『talk SPORT』のエイドリアン・ダーラム氏だ。グリーリッシュとフォーデンを比較し、前者は違いを見せることができていないと酷評。イングランド代表入りも疑問視しており、グリーリッシュのスタイルとシティのスタイルがあっていないと輝けない理由を考察している。

確かにここまでノーゴールは厳しい。移籍金の高さでいえばハーランド級の活躍が必要になる。ただシティで10番を背負う男を擁護するのであれば、グリーリッシュとフォーデンでは指揮官であるジョゼップ・グアルディオラから求められているタスクが違うのだ。

以前ペップは英『The Athletic』にてグリーリッシュの強みはプレイを意図的に遅らせる「パウサ」にあると主張している。スペイン語で「小休止」の意味を持っており、プレイに落ち着きを持たせることができる。

シティはハイライン・ハイプレスのサッカーをスタイルとしている。しかしこの戦術は後方に広大なスペースが生まれるためカウンターに弱く、近年シティの負けパターンはこの速攻での失点が多い。昨季であればレアル・マドリード戦やトッテナム戦では強烈なカウンターから失点を喫してしまった。ドルトムント戦はそのカウンターに対抗できるカイル・ウォーカーが不在であり、常にリスクがあった。そのため縦に急ぎすぎるフォーデンではなく、意図的に攻撃を遅らせるグリーリッシュが先発だったといえる。グリーリッシュの価値は短期決戦のCLではさらに高まることになる。

イングランド代表でも同様のことがいえる。クラブに比べ活動期間が短い代表での試合はカウンターの打ち合いになることが多く、失点のリスクが大きい。そのためグリーリッシュは前述した理由から重宝される。SNS上ではマンチェスター・ユナイテッドのジェイドン・サンチョとグリーリッシュを比較する声は多いが、サンチョのライバルはグリーリッシュではなくフォーデンやラヒーム・スターリング、ブカヨ・サカらになる。

とはいっても数字は欲しいもので、初ゴールが待ち遠しい。今季シティでは2年目であり、グリーリッシュは覚醒が期待されている。ベルナルド・シウバやジョアン・カンセロ、リヤド・マフレズらは2年目から輝かしい成績を残しており、グリーリッシュも彼らに続けるか。