カタール・ワールドカップ(W杯)の開幕まで2カ月を切った中、日本代表はリスタート。メンバー発表前のラスト2試合に臨んでいる。
ドイツへ遠征した日本は、23日にキリンチャレンジカップ2022でアメリカ代表と対戦。結果は2-0で勝利を収めることに成功した。
アメリカが主軸選手をケガで書いていたこと、そして平均年齢が24歳と経験が浅かったことなど、数々のエクスキューズはあるが、相手に何もさせずに勝利できたことはプラス材料だ。
あまり手応えのない試合だったようにも見えるが、日本にとっては色々な発見があったと言える試合ではなかっただろうか。しっかりと本番に向けた準備を進められている印象があった。
◆システムの幅
この試合、森保一監督は[4-2-3-1]のシステムを採用して臨んだ。元々使っていたシステムだったが、アジア最終予選で結果が出ないという事態を受け、[4-1-4-1(4-3-3)]にシステムを変更。これが結果的にハマり、本大会の切符を掴んだ。
[4-1-4-1(4-3-3)]に変更してからは基本システムが変わった日本。中盤はアンカーに遠藤航(シュツットガルト)、インサイドハーフに守田英正(スポルティングCP)と田中碧(デュッセルドルフ)を配置。ボランチタイプの3人を中盤に並べ、1アンカー2インサイドハーフとも、3ボランチとも言えるシステムで戦った。
中盤の強度が上がり、ボール奪取の数も増え、攻撃は右サイドの伊東純也(スタッド・ランス)を軸に組み立てていった。
ただ、これは急場凌ぎの結果であり、結果が残ったという事実があるだけであり、日本代表の選手の構成から考えると最適とは言い難いシステムでもあった。
その森保監督は、6月の日本代表4試合で[4-1-4-1(4-3-3)]を継続。ただ、インサイドハーフに原口元気(ウニオン・ベルリン)、鎌田大地(フランクフルト)を配置するなど、選手を変更して試すことに。また、キリンカップのガーナ代表戦では[4-2-3-1]に戻し、堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)、三笘薫(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)を2列目に並べ、ダブルボランチを採用していた。
また、3バックも試し、[3-4-2-1]の形もトライ。最終予選を終えたことで、本番に向けて準備を進めていたが、アメリカ戦で辿り着いたのは[4-2-3-1]だった。
◆変化が見られた[4-2-3-1]
ただ、この[4-2-3-1]も以前のものとは異なって見えた。配置こそ変わらずも、[4-1-4-1(4-3-3)]で戦って来たことが非常に生きていた。
まず、ボランチでコンビを組んだ遠藤と守田は横並びになったことで、よりコンビでのバランスを取ることに成功。その結果、よりボールを奪いに行く強度を高めることに成功した。互いにボールを奪い、時には2人で囲むというプレーも見せ、ドイツのデュエルキングとポルトガルの名門でレギュラーを張る2人の高いパフォーマンスが見られた。
さらに変化を感じたのは2列目の選手の意識だ。元々強度の高さを求める森保監督であったが、この試合で2列目に入った伊東、鎌田、久保の3人のプレスバックは非常に効いていた。
これは[4-1-4-1(4-3-3)]で生き残るために求められたものであることに加え、スタッド・ランス、フランクフルト、ソシエダとそれぞれのクラブで攻撃的なポジションを務めながら、クラブでも求められる能力だった。
それぞれが、代表、クラブで磨いたものであり、求められるものに応えようとした結果、中盤の5枚が非常にタイトな守備を見せ、アメリカを機能させなかった。
加えて言えば、1トップに入った前田大然(セルティック)も同様だ。スピードを生かしたプレス、ボール奪われた後のプレスバックと守備で貢献。攻撃面では今ひとつだったが、セルティックで求められているプレーの一端は見せられたと言える。
チームとして積み上げて来たもの、そしてクラブで各選手が成長したことで、その精度が高まったことは、アメリカ戦でも感じられた。
◆増やしていきたいオプション
そしてアメリカ戦ではオプションも試すことができた。
病み上がりの酒井宏樹(浦和レッズ)は非常に高いパフォーマンスを見せたが、ハーフタイムで交代。そこで右サイドバックに入ったのは、山根視来(川崎フロンターレ)ではなく冨安健洋(アーセナル)だった。
これまでであれば山根との交代になっていたはずだが、クラブでサイドバックを務める冨安を右SBに配置。その冨安は、伊東との縦関係で何本か良いパスを供給。さらに、アーセナルで培ったビルドアップのうまさも随所に見せた。久々のCBでも高いパフォーマンスを前半見せていたことを考えると、2つのポジションを高いレベルで務められるという武器を手にしたと言える。アメリカ戦のみでチームを離れたが、あとはケガをせずに2カ月を過ごしてもらいたいところだ。
また、流れの中だと感じられるが、攻撃時には遠藤が降りての3バックになる形も何度か見られた。冨安と左サイドバックの中山雄太(ハダースフィールド・タウン)が高い位置を取り、[3-4-3]のような形になる場面があった。相手の陣形を崩すこと、試合中に対応するという点では、進化しているとも言えるだろう。
他にもトップ下でありながらフランクフルトでのパフォーマンスと同様にボックス内に積極的に飛び出す姿も見られ、最も得点チャンスを作っていたのが鎌田だった。それぞれが、しっかりと戦い方を理解し、クラブで積み上げたものを発揮できたという点で、良い試合になったと言える。
残すは27日のエクアドル代表戦。本大会ではドイツ代表、コスタリカ代表、スペイン代表と実力国と対戦するだけに、相手の力はこんなものではない。まだまだ精度を上げる必要はあるが、ひとまずはポジティブな変化が見られた試合と言って良いだろう。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》