【専門家の目|橋本英郎】クロアチア戦を展望、中盤のベストな組み合わせは?
森保一監督率いる日本代表は、現地時間12月5日のカタール・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦する。勝てば、日本史上初のベスト8と新たな歴史を刻むことになる一戦の展望を、元日本代表MF橋本英郎氏に聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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クロアチアはグループFでベルギー代表、モロッコ代表、カナダ代表と同居し、1勝2分でモロッコに続く2位通過を決めた。W杯での日本との対戦は2006年のドイツW杯以来で、通算3度目となる。
日本はドイツ代表、スペイン代表と強豪を破ってきているが、また違った難しさがあると橋本氏は、「FIFAランキング的にもクロアチアはドイツ、スペインより力は劣ると思いますが、それゆえに日本を舐める展開がなくなる。ドイツ、スペインは前半で余裕と感じていたので、後半に少し隙ができた。2試合すでに後半から奇襲をかけるという手を見せているので、さらにクロアチアは対策してくるはず」と試合展開を語る。
では、日本がどのような戦い方をするべきか。橋本氏は「早い攻撃、ハイプレスで前から行く対策が望ましい」と言及。「9月に行われた欧州遠征のアメリカ戦では上手くハマっていて良かったが、グループリーグでは成功していない。ドイツ戦の後半、スペイン戦の前半の後半で少しハマる気配はあっただけに、クロアチア相手にどうするか。しっかりリスクを冒す時には冒すべきで、タイミングがとても大事」とその理由を説明する。
また、クロアチアはルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)、マテオ・コバチッチ(チェルシー)、マルセロ・ブロゾビッチ(インテル)と、出場国の中でも屈指の中盤を形成するが、日本はどのようなメンバーで対応すべきなのか。「守備を考えた時に、遠藤(航)選手と守田(英正)選手がスタメンで、途中から元気な田中(碧)選手が出てくるのがベスト。ただ、スペイン戦で守田選手は足をつっていて、遠藤選手は少ししか出ていない。あとはコンディション次第だと思う」と、短期決戦ならではの事情も指摘している。
三笘の起用法、CFは誰が務める?
スペイン戦では、田中の逆転ゴールをアシストした三笘薫だが、ここまでスタートからの起用はない。橋本氏は「三笘選手の起用法がとても重要になってくる。圧倒的優位な質を持っているので、スタメンで使うのか、それともこれまでと同じく後半から奇襲をかける際に使うのか。これもコンディション次第だと思うが、試合を動かしたい時にいると助かるので途中からの起用がいい」と、グループリーグと同じ起用法を推奨している。
またセンターフォワード(CF)の起用では「前田(大然)選手をスタメンにしてほしい。浅野(拓磨)選手とタイプ的には似ている。スペイン戦みたいにある程度引いて守って、前線に起点がほしい場合は浅野選手のほうがいいと思うが、ハイプレスをするほうがハマると思うので前田選手を」と提言している。
さらに、好調な堂安律をスタートから使う案もあるが、橋本氏は「3バックの場合は久保(建英)選手とポジション争を争うことになる。堂安選手も三笘選手と同様に途中から流れを変えられる選手。後半に点が欲しい時などの為にベンチに置いておいたほうが助かる」と分析している。
スペイン戦で初出場ながら好パフォーマンスを見せたDF谷口彰悟に関しては「板倉(滉)選手が出場停止なので、クロアチア戦でもそのままスタメン出場が濃厚。冨安(健洋)選手がスタメン可能なら右CBで、谷口選手が左CBに入る。また、冨安選手を右ウイングバック(WB)で起用する、またはスタメンが厳しい場合、谷口選手を右に持っていき、左に伊藤(洋輝)選手を起用するのもありだと思う」とコンディション次第で柔軟な起用法が求められると見解を述べた。
ドイツ戦とスペイン戦では、後半からのフォーメーション変更や、選手交代での策が実って撃破した。目標であるベスト8進出に向けて、指揮官の采配が再び冴えわたることに期待したい。
[プロフィール]
橋本英郎(はしもと・ひでお)/1979年5月21日生まれ、大阪府出身。ガンバ大阪の下部組織出身で98年にトップチームへ昇格。不動のボランチへ定着し、西野朗監督体制下で、J1リーグ初制覇やアジア制覇などを経験するなど、クラブの黄金期を支え、日本代表にも選出。G大阪では下部組織時代から合わせて20年プレー。ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、AC長野パルセイロ、東京ヴェルディ、今治FCにも所属。22年より関西サッカーリーグ1部に所属する社会人クラブのおこしやす京都ACで選手兼ヘッドコーチとしてプレー。(FOOTBALL ZONE編集部)