酒井、吉田、長友とベテランが多かった最終ラインはどうなる?
カタール・ワールドカップ(W杯)でドイツ代表、スペイン代表を破り、グループEを首位通過した日本代表。しかし、決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表にペナルティーキック(PK)戦の末に敗れて、初のベスト8進出を成し遂げることはできなかった。
目標を達成できなかった日本は、再び4年後にアメリカ、メキシコ、カナダの3か国で共同開催されるW杯に向けて動き出すことになる。しかし、複数のポジションで選手の入れ替えが必要になるだろう。まずは2年後にカタールで開催されるアジアカップが目標となるため、4バックでの4-2-3-1を想定して、「この布陣で戦う日本が見たい」という視点で選手選考をしていく。
今回のカタールW杯の日本代表では、守備的なポジションにベテランが多かった。特にGKは川島永嗣(ストラスブール)を筆頭に、権田修一(清水エスパルス)、シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)と全員が30歳以上。レギュラーをシュミット・ダニエルに移行するにせよ、若手の台頭が期待されるポジションだ。
また、最終ラインでは右サイドバック(SB)のDF酒井宏樹(浦和レッズ)、センターバック(CB)を務めたキャプテンのDF吉田麻也(シャルケ)、左SBのDF長友佑都(FC東京)が4年後もメンバー入りできるとは考えにくい。右SBのバックアップとなっていたDF山根視来(川崎フロンターレ)は現在28歳で4年後も狙えるが、日常的に海外で経験している選手の台頭が欲しいところ。今大会のメンバー入りを逃したDF菅原由勢(AZアルクマール)、DF室屋成(ハノーファー)、DF橋岡大樹(シント=トロイデン)らの飛躍に期待が懸かる。
CBは、今大会でも活躍を見せたDF冨安健洋(アーセナル)とDF板倉滉(ボルシアMG)の2人が軸となっていくだろう。4バックの場合は、吉田もその能力を高く評価するこの2人が十分に役割を務めてくれるはずだ。3バックにする場合は、もう1人、強さのあるDFが必要になるが、DF伊藤洋輝(シュツットガルト)が第一候補となる。カタールW杯ではコスタリカ戦(1-1)に出場しており、その経験を今後につなげてくれるはずだ。また、中盤の人材が多いことを考えると、MF遠藤航(シュツットガルト)をコンバートするプランも試していいかもしれない。
左SBには、今大会のメンバーにも選ばれていたが、右アキレス腱を損傷して辞退となったDF中山雄太(ハダースフィールド・タウン)に期待が懸かる。現時点で、イングランドで日常を過ごせている点も4年後にはポジティブだろう。大卒1年目で川崎のレギュラーとなったDF佐々木旭も、今後は代表に選ばれてくるのではないだろうか。
ボランチは若手の松木の台頭にも期待
中盤では、今後も遠藤が軸になる。遠藤は吉田がいなくなった場合のキャプテンとしても有力候補だ。中盤の底にはMF守田英正(スポルティング)、MF田中碧(デュッセルドルフ)もおり、若い世代ではMF松木玖生(FC東京)、MF藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)も成長が楽しみなところだ。
日本の武器であることが示せた両ウイングは、右のMF伊東純也(スタッド・ランス)と左のMF三笘薫(ブライトン)が、この先もしばらくはベストな選択肢になるだろう。トップ下には、カタールで本領を発揮できなかったMF鎌田大地(フランクフルト)を入れたい。W杯で2ゴールを挙げたMF堂安律(フライブルク)を先発させられないのは、心苦しいところだ。
そして1トップだが、FW前田大然(セルティック)の守備力は、どんな相手にも脅威となることが今大会で証明された。これは日本がこの先も持ち続ける武器だろうが、やはり物足りなかったのはキープ力。後方からボールを入れても、なかなか収まらずに押し込まれる苦しい展開となった。
FW上田綺世(セルクル・ブルージュ)、FW町野修斗(湘南ベルマーレ)の成長にも期待したいところだが、個人的にはMF久保建英(レアル・ソシエダ)の偽9番もありなのではないかと思う。カタールW杯でも、初戦のドイツ戦で存在感を示せなかったが、スペイン戦ではボールを持つ場面も作った。最前線に置いた場合、どのように機能するのか、試す価値はあるのではないだろうか。
W杯という4年に一度の祭りでの戦いが終わり、次に日本代表が再始動するまでは、まだ時間もある。どんな日本代表が見たいかを考えながら、森保一監督の続投、もしくは新監督就任の報を待ってみてはいかがだろうか。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)