[キリンチャレンジカップ]日本 0-0 エクアドル/9月27日/デュッセルドルフ・アレーナ
日本代表はドイツのデュッセルドルフでエクアドルと対戦し、0-0の引き分けに終わった。
内容的には前半、エクアドルが日本をほぼ圧倒するなかで、なんとか耐えた日本が後半に挽回。森保一監督は後半のスタートから前線に上田綺世を投入すると、67分には遠藤航、相馬勇紀、鎌田大地の3枚替えで堅守から攻撃の推進力を上げて、攻勢を強めた。
それでも、76分にFWエネル・バレンシアを投入したエクアドルは、引かずに4-3-3から4-4-2にして点を取りにきた。オープンな展開になった時間帯で、日本はシンプルなサイドからのボールに対して、受け手のFWミカエル・エストラーダをCBの谷口彰悟が倒してしまい、判定はPKに。このピンチに、再三好セーブを見せていたシュミット・ダニエルがバレンシアのキックを止めて、日本を救った。
終盤には、交代で入った伊東純也を前に上げて、最終ラインに吉田麻也を加える3-4-1-2という、これまで森保ジャパンに見られなかったシステムも採用。安定した守備からの速攻を繰り出したが、エクアドルのゴールを破れずにスコアレスドローとなった。
90分をトータルすれば、引き分けが妥当な試合ではあったが、前半は6月のブラジル戦(0-1)と見紛うような苦しい内容だった。
その大きな理由として、エクアドルの強度が個人、組織ともに強かった点。そして、本大会の2試合目のシミュレーションとメンバー選考のサバイバルを兼ねて、森保監督が2-0と勝利したアメリカ戦から先発11人ターンオーバーを実行したのは、様々なメディアで指摘されている通りだ。
個の力だけでなく、組み合わせの問題もあった。特にボランチで柴崎岳と田中碧を組ませたのは、中盤のボール奪取やフィルターとして考えた時に、ブライトンで三笘薫の同僚であるモイセス・カイセドなど、国際レベルでもフィジカル、インテンシティに優れる中盤に対して、ミスマッチと言ってもいい状況が生まれていたのは否めない。
しかしながら筆者は、仮にアメリカ戦の11人でスタートしていたとしても、それなりに苦しい前半になったと想定している。その理由は、エクアドルが前回のアメリカよりも戦術的に巧妙で、日本のスタイル的にも相性が悪く、別途対策の必要な相手だったからだ。そのひとつが4-3-3システムを利用した”ローリング“にある。
試合前、エクアドルはロングボールを主体にセカンドボールを拾って前に圧力をかけてくるという予想が、日本のメディアや選手からも出ていた。確かに南米予選ではブラジルやアルゼンチンなど、明らかに力が上の相手に対して、堅守速攻の度合いが高く、そうした割り切りが見られたのも確かだ。しかし、ここ数試合のプレーを見ると、後ろから組み立てながらアタッカーが前向きに仕掛けられる状況を作る意識が見られた。
エクアドルは開催国カタールと同じグループAに入った。そのほか、欧州の強豪オランダ、アフリカ最強との呼び声もあるセネガルと同居。もちろんW杯なので簡単ではないが、日本のE組を含む8グループ全体の中では恵まれている。おそらくそうした事情もあり、名門ボカ・ジュニアーズを率いていたグスタボ・アルファロ監督は、自分たちからアクションを起こす攻撃を構築していると考えられる。
実際、日本戦の前にはポゼッション能力の高いサウジアラビアを相手に、ボール保持率で大きく上回る戦いを見せていた。結果はスコアレスだったので、前日会見ではエクアドルのメディアから批判的な質問も出ていたが、これまでエクアドルに持たれていた印象とは違うスタイルに危惧するところはあった。
エクアドルのビルドアップは4バックの4枚回しと、俗に”サリーダ“と呼ばれるボランチがCBの間に落ちて、SBを高い位置に上げる3枚回しを使い分ける形。これ自体は4バックを使う多くのチームに見られる攻撃戦術だ。
日本は4-4-2のコンパクトな守備から、3枚回しに対してはサイドハーフの1人が中に入り、南野拓実が一列落ちたところでボランチを見るなど、チームでの約束事は共有されてきている。しかし、ここで大きな問題を与えたのが、サイドにおける”ローリング“だった。
右に展開すれば、ウイングのアンヘル・メナとSBのバイロン・カスティージョに、中盤のホセ・シフエンテスが加わってトライアングルを作るのだが、この3枚がかなり自在にポジションを入れ替え、フリーでボールを持った瞬間に縦のギアを上げてきた。
そうした攻撃に対して三笘と長友佑都に加えて、田中もワイドに開いて参加したが、どうしてもリアクションになるため、エクアドルの素早いポジションチェンジに対応できず、中にボールを入れられてしまう。
その時に、4-2-3-1の弱点である、1人のボランチがワイドに引っ張られた時の中央のフィルター問題が生じた。しかも、残っているのは明らかにアンカータイプではない柴崎だ。
これを逆サイドからもやられたが、それに乗じて右SBのカスティージョが斜めに飛び出してくるなど、非常に厄介だった。要するに4-2-3-1とのかみ合わせが良くなかったのだ。
少なくとも日本の4-2-3-1は、高い位置でボールを取れてこその部分もある。それができない流れで、早めに4-1-4-1にチェンジして、後半の頭から遠藤を投入するような形も有効だったのではないか。
ここは森保監督が手の内を隠している可能性もあるので何とも言えないが、こうした状況にも臨機応変に戦っていくために複数のシステムを構築しているはず。前半はなんとか無失点に終わり、後半はエクアドルが前半ほど強度の高い攻めをしてこなかったのもあり、失点という形で弱点は露呈しなかった。
今回のエクアドルはドイツ、コスタリカよりもスペインに似たところがあるチームで、1試合目、2試合目のシミュレーションとは別に参考になる点があった。
今回出た課題をどう検証して、2か月を切った本大会に向けてブラッシュアップできるか。選手の誰が良かった・悪かったという評価だけではない部分の詰めも問われてくる。
取材・文●河治良幸
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