カタール・ワールドカップ(W杯)開幕まで約20日。メンバー発表を間近に控える中、注目を浴びるCF争いの行方はどうなるのか。2大会連続のグループステージ突破、そして初のベスト8進出を目指す日本代表はどう戦うべきなのか。そして、日本サッカーの未来はどうなるのか。
 1998年のフランス大会に出場した経験を持ち、サムライブルーとして活躍した元日本代表FW城彰二氏に話を伺った。

【プロフィール】城彰二 じょう・しょうじ 
1975年、北海道生まれ。鹿児島実業高校サッカー部を卒業後にジェフユナイテッド市原(現:ジェフユナイテッド市原・千葉)へ入団。デビュー戦から4試合連続ゴールを挙げるなど、ルーキーイヤーから大きな注目を浴びた。1996年のアトランタ五輪や1998年のフランスW杯では前線の主軸としてプレーし、日本代表としても豊富なキャリアを誇る。2006年に現役を退いてからは解説業を軸に活躍。2020年11月よりYouTubeで『JOチャンネル』を開設し、自身の経験をもとにした動画を配信するなど、多岐にわたる活動で日本サッカーの発展に貢献している。

■3人の日本人監督に対する印象

 今大会チームを率いる森保一監督は、岡田武史監督と西野朗監督に続いて、W杯を指揮する3人目の日本人監督だ。このうち岡田監督と西野監督から指導を受けている城氏は、2人に対する印象を語ってくれた。

「岡田さんの場合は、加茂(周)さんの下でコーチに就いていて、途中から監督代理という形でW杯予選を戦っていて。岡田さんは“代理だから”と言って、辞めるつもりでしたからね。だけど、選手の思いなどを感じて“自分が指揮を執る”と決めたと話していて、そういった部分に関しては情に厚いですよね。

 まずキャラクターがいいじゃないですか。あの時代は岡村さん(ナインティナイン)が真似してブームになりましたから。それだけの注目度はあったし。しっかり勝たせるような一面もありました。

 西野さんも、ハリルホジッチ監督が解任されて、誰かがやらなきゃいけないという状況で就任して。そこで選手をうまくコントロールして結果を残せたというのは大きいですよね。西野さんの特長はやっぱりマネジメント力なので。監督というよりかは兄貴分といった感じでマネジメントするんですよね。だから選手の話をよく聞きますし。

 だけど最終的には自分の戦略や戦術をしっかり落とし込むので。“勝つためにはこうしなきゃいだめだよ”ときっちり判断してくれるから、みんなが信頼して1つの方向に向かって行けるんです」

 続けて森保監督にも言及。西野監督と同じように選手の意見を取り入れるタイプではあるが、過剰に取り入れることでデメリットが発生していると分析した。

「森保監督も選手の話を聞くんですけど、聞きすぎるんですよね。それでキャプテンの吉田麻也の存在がチームの中で大きくなりすぎてしまって、彼が監督みたいになってしまって。歯止めが効かなくなっている印象です。

 この前は(キリンチャレンジカップ2022)で長谷部(誠)を呼びましたよね。だけどチームの中には長谷部信者も多いので、逆に難しくなっちゃうんじゃないかなと思いますね」

■日本代表のピッチ外での課題

 自身のYouTubeチャンネルでは、日本代表やサッカー界について忌憚のない意見を投げかける城氏。一方、現在の代表にはメディアの前で注目を浴びるような発言をする選手が少なくなったが、それについて同氏は以下のように語っている。

「大きなことを言う人もいなくなりましたよね。本田圭佑で止まっちゃったんですよね。みんなキャラクターがあるんですけど、押し殺しちゃってる部分もあるし。遠藤(航)なんてすごい面白いやつだし、意外にムードメーカーだったりするんですけど、そういうのも見せないですし。

 今の世代にありがちじゃないですか。内面に気持ちを隠しちゃうっていうのは。でも、そういうのを見せていかないと伝わらないし。

 森保監督ももっと主張すればいいのに、と思いますね。もちろん代表監督だから言葉を選ぶとか、そういうことをしなきゃいけないんでしょうけど、毎回似たコメントだと“この人に注目しよう”とは思いづらいですし。そういうマネジメントの部分は協会も含めてサポートしていく必要があるかもしれないですね」

 そして、かつて日本代表を率い、城氏もその指揮下でプレーしたフィリップ・トルシエ監督の指導を引き合いに出した。

「彼はすごく勉強していたんですよ。日本代表に就任する前から、日本人の考え方やJリーグのレベルとか、いろいろなことを全部分析してやって来て。

 日本人の足りないところ――自分の気持ちを出すとか。“感情的な部分がすごく少ない。そういう部分を変えないと戦えない”と言っていました。それで彼は意図的に大きなジェスチャーをしたり、“なんか言ってみろよ。向かって来いよ”と体を押してきたりしましたね。でもそれも戦略で、ちゃんと話せばすごく温厚な人です。

 だから見せ方ってすごく重要で。政治家の皆さんもそうじゃないですか。話し方の勉強もするし、ネクタイの色を変えて印象を植え付けることもするし。これは当たり前のことなんですよね。だけど、そういうのが日本代表には見られないっていうのが魅力の減少につながっているんじゃないかなと思いますね。

 日本代表に関心を持つ人が少なくなっているので、今大会ベスト8に行けなかったらサッカー人気は相当落ち込むと思いますよ」

 A代表には日本サッカーの人気度が特に色濃く反映される。現在のサムライブルーにはピッチ外の部分でも問題がありそうだ。しかし、いま眼前にあるのはカタールW杯。城氏の言うように、国民のサッカーに対する関心を高めるためにも、まずは目標であるベスト8進出を期待したいところだ。