トーレスがプレーするビジャレアルは、人口約5万人の田舎町をホームとする。予算規模こそ大きくはないが、リーガ・エスパニョーラで安定した順位をキープし続ける強豪クラブだ。一昨シーズンにはUEFAヨーロッパリーグを制してクラブ史上初めて主要タイトルを獲得すると、昨季はUEFAチャンピオンズリーグでベスト4に進出する快進撃を見せた。
今季も開幕から安定した戦いぶりを見せていたが、躍進の立役者である監督のウナイ・エメリがプレミアリーグのアストン・ヴィラに引き抜かれることが発表されたばかり。後任にはヨハン・クライフを敬愛し、ポゼッションサッカーを志向するキケ・セティエンを招へいして新たな冒険を始めようとしている。
そんなビジャレアルでトーレスは、今季も開幕からセンターバックのレギュラーとして攻守に渡り高いパフォーマンスを発揮している。新監督のセティエンはセンターバックにかなり高水準のビルドアップ能力を求める傾向にあり、高いボールテクニックと広い視野を兼ね備えるトーレスはその条件にマッチしている。そのため、セティエン体制においてもこれまでと変わらずセンターバックの中心として起用される可能性が高いだろう。
ビジャレアル生え抜きの成長株
スペインのビジャレアルに生を享けたトーレスは2002年に地元のクラブであるビジャレアルの下部組織に加入。14年もの時間を同ユースで過ごし、カテゴリーを順調に昇格していった。しかしスペインの世代別代表にはあまり縁がなく、有望株ではあったものの同世代の他の選手と比較するとそこまで注目されていなかったのも事実だ。
2016年にはビジャレアルのBチームに昇格し、同年の12月にはコパ・デル・レイでトップチームデビューを飾った。 翌年にはリーガ・エスパニョーラ初出場を果たすもトップチームへの定着は叶わず、2018年夏には経験を積むために2部に所属していたマラガへのローン移籍を決断する。
ローン先に選んだマラガではレギュラーとして起用されリーグ戦38試合に出場。チームの昇格プレーオフ進出に大きく貢献した。2019年夏にビジャレアルに復帰したトーレスはプレシーズンで猛アピール。当時の監督だったハビエル・カジェハの信頼を掴み、センターバックのレギュラーに抜擢された。すると1年を通して安定した活躍を見せ、シーズン終了後にはリーガ屈指のセンターバックと評価されるまでに成長した。
トーレスの急成長に一役買ったのがセンターバックでコンビを組んでいた元スペイン代表DFのラウール・アルビオルだ。レアル・マドリードやセリエAのナポリでプレーした経験を持つベテランのプレーを間近で感じられたことで、トーレスのクオリティは格段に向上し、ワールドクラスの域に足を踏み入れることができたのだ。
2020-2021シーズンに監督に就任したエメリの下でもトーレスの立ち位置は変わらず、最終ラインの要としてハイパフォーマンスを披露した。この年のヨーロッパリーグではプレミアリーグのアーセナルやマンチェスター・ユナイテッドを撃破してチームの優勝に貢献すると、2021-2022シーズンのチャンピオンズリーグではベスト4進出の立役者に。中でもブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンと対戦した準々決勝の2試合は圧巻で、アルビオルとのコンビで世界最高のセンターフォワードとも言われるポーランド代表ロベルト・レヴァンドフスキ相手に堂々たるプレーを見せた。
世界の名選手たちと比べても遜色ない現代型センターバック
高い身体能力と技術力を兼ね備え、攻守両面でチームに貢献できる現代型のセンターバック。スピードを武器としているため快速アタッカー相手でも振り切られることは滅多になく、自身の裏のスペースを突かれることは稀。積極的なパスカットやボール奪取を狙う思い切りの良さも持ち合わせており、相手のFWに自由を与えない。
ビルドアップ能力の高さもトーレスの長所だ。ボールテクニックに優れており、正確無比なロングフィードで相手の裏のスペースを使うことができる。ドリブルでボールを持ち運ぶスキルに関しても、センターバックの中では世界でもトップクラスと言えるだろう。
カタールではディフェンスリーダーとして期待
2019年11月にスペイン代表デビューを飾るとすぐさまレギュラーに定着。UEFA EURO 2020では全6試合に出場し、スペイン代表のベスト4に貢献した。東京五輪でも決勝までの全6試合でフル出場を果たし、日本戦でのプレーも記憶に新しい。
現代表では左センターバックのレギュラーの座を確固たるものにしており、FIFAワールドカップカタール2022(カタールW杯)ではディフェンスリーダーとしての活躍が期待されている