●4人が欠場…。サッカー日本代表を襲う非常事態
サッカー日本代表は17日、UAEでカナダ代表と国際親善試合を行う。FIFAワールドカップカタール前最後のテストマッチでは、遠藤航らを欠くボランチの起用が注目を集める。起用が予想される柴崎岳と田中碧は、この一戦に向けた意気込みを語る。(取材・文:元川悦子【UAE】)
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23日のFIFAワールドカップカタール(カタールW杯)初戦・ドイツ代表戦まで1週間。日本代表は17日、隣国・UAEのドバイで本番前最後のテストマッチとなるカナダ代表戦に挑む。
「ここまで来たら、チームとしてどう本大会に勢いを持って、波に乗って入っていけるかだと思う」と4年前のロシアW杯16強戦士の1人である柴崎岳も語った。W杯出場国のカナダ代表相手にいい結果と内容を手にして、大舞台に向かいたいところだ。
ところが、この重要な一戦で、遠藤航と守田英正という中盤の要が揃って欠場を余儀なくされた。遠藤は8日のヘルタ・ベルリン戦で負った脳震盪からの回復プログラムの真っ最中。守田も左ふくらはぎに違和感を訴え、2人揃ってドーハ残留調整となった。
さらに森保一監督はリハビリ中の冨安健洋の不出場を明言。体調不良でまだ合流できていない三笘薫を含む4人が欠場を強いられたのだ。
「ケガ人や体調不良、大会期間中は出場停止など不測の事態は起こりうる。さまざまな想定をしてメンバーを組んでいる」と指揮官は言うものの、トラブル続出の事態はチームにとって大きな不安に他ならない。
とりわけ、主軸である遠藤・守田を欠くボランチの現状は気がかり。キャプテン・吉田麻也も「チームは中盤が変わるとガラッと変わる。予選で起動修正できたのは、守田や碧がリーダーシップを発揮したから。そこは(本番に間に合うことを)祈るしかない」と切実な表情で語っていたほどだ。
●遠藤航&守田英正不在のボランチに入るのは?
そんな中、迎えるカナダ戦。森保監督は「明日は田中碧と柴崎が先発する」と、9月のエクアドル代表戦で先発させた2人の再トライを前日会見で明言した。このコンビが実戦で共闘したのはこの1試合のみ。まだまだやりづらさは拭い切れないはずだ。
しなしながら、じっくり合わせている時間的余裕はない。2カ月前はギクシャク感が拭い切れず、チームが落ち着きを失いがちだったが、今回は短期間でドイツ代表と対峙できるレベルの連係と強度を構築することが必須。それは極めてハードルの高いテーマだが、田中碧が「岳君に限らず、いろんな選手とやる時には攻守の比重を変えていかないといけない」と言うように、お互いの強みを発揮しあえるような関係性を模索していくべきだ。
「碧は運動量もありますし、非常に活動的で、ゴール前にも顔を出したり、守備でも貢献してくれる選手だと思っている。彼の良さを僕が引き出しながら、同時に自分の良さもしっかり出していきたいなと思ってる。そこらへんのバランスはしっかり見ていきたい」と年長者の柴崎はかじ取り役を担う覚悟だ。
一方で、田中碧が右ひざ負傷から回復したばかりというのも不安材料だ。10月29日のホルシュタイン・キール戦の受傷後、公式戦から遠ざかり、代表合流後も直近15日までは全体練習に完全合流していなかった。そんな状態だけに、カナダ戦に出るにしても、途中から時間限定だと目されていた。が、遠藤・守田の離脱でそうも言っていられなくなったのだろう。
●鎌田大地のボランチ起用は?
本人は「先発できる? らしいです」と冗談交じりに笑い、「試合から2週間離れただけで、動いたりボールを受けたりもしていた。僕は痛みに強いタイプなんでそこまで痛いとも感じない」と前向きにコメントした。
ただ、本当にどこまでフル稼働できるのかはしっかり見極めるべき点。仮に田中が90分間は難しいとなると、センターバック(CB)で先発予定の板倉のコンバート、あるいはトップ下の鎌田大地の抜擢も考える必要がある。それは森保監督が前日会見でも語っていた点だ。
特に鎌田に関しては、クラブで3列目を主戦場にしていて、ダイナミックな攻め上がりから攻撃に厚みをもたらし、ゴールを量産しているという事実がある。
「明日の試合でどこまで試せるか分かりませんが、鎌田に関しては3列目での組み立て、相手の攻撃を止めて前線の攻撃に絡んでいくというクラブでやっていることを我々にも生かせるようにしてほしい」と森保監督も有力なオプションとして考えている様子。鎌田自身もその起用法はやぶさかではないだろう。その反面、鎌田は代表のトップスコアラー。後ろに下がると得点チャンスも減ってしまう。それは日本代表にとって芳しいことではないだけに、難しい選択になってきそうだ。
板倉にしても、2カ月ぶりの実戦復帰で試合勘を取り戻すことが先決。それが叶ったとしても、冨安の状態が不安視されるだけに、やはりDFをメインに考えていくしかない。ジュビロ磐田時代にボランチもやっていた伊藤洋輝らを含め、誰を入れるにしても「帯に短したすきに長し」といった状態になってしまうのは確かだ。
●「1試合で全てが変わる」2人が見据えるものとは?
だからこそ、吉田が願うように遠藤と守田の早期復帰を今は祈るしかないわけだが、必ずW杯に間に合う保証はない。ゆえに、現有戦力で乗り切れる目処をカナダ戦でつけること。そこに集中しつつ、結果を求めていくことが今回の最重要テーマとなってくる。
仮に柴崎・田中碧コンビが攻守両面のいいバランスや安定感を見出せれば、ドイツ代表戦の先発も見えてくるかもしれない。実際、4年前のロシアW杯直前のパラグアイ代表戦でも、控えだった柴崎が先発で目覚ましいパフォーマンスを披露。長谷部誠のパートナー役を射止め、本番につなげたという過去がある。
「あの時はその前まで結果も内容もついてこない中、パラグアイ戦でメンバーが変わって、出た選手が結果を残して本大会にのぞんだ経緯がある。でも今は違って、スタートで出ている選手たちが非常にいいプレーをしてますし、それにプラスして、ベンチで見ている選手たちがチームの総合力を高めるようなプレーができればいい。状況は違います」と本人は自身の立ち位置を冷静に客観視した。
とはいえ、1つのチャンスを契機に序列を激変させることはサッカーの世界では往々にしてある。昨年10月の最終予選・オーストラリア代表戦で、一気に定位置をつかんだ田中碧は「一瞬のチャンス」の重要性を誰よりも熟知する存在。今回も虎視眈々とレギュラーを狙っていくに違いない。
「自分がいいパフォーマンスをすれば、大会を通して出れる時間が増えるだろうし、すべての試合がつながっていると思う。自分もオーストラリアで点を取ったから最終予選に出れたし、それは明日の試合も同じ。1試合で全てが変わる。深く考えず、自分の結果を出せるようにしていければいい」と目の前のゲームに全力を注ぐ決意を固めている。
2人のボランチがカナダ代表を凌駕し、周囲の不安を一掃してくれるか否か。鎌田や板倉が入った形が見られるのか。中盤を巡る複数の課題をカナダ代表戦で解決すべく、選手たちには地力を見せてほしいものである。
(取材・文:元川悦子【カタール】)
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