日本代表のカタールでの戦いは、ベスト8を前に幕を閉じた。

 アジア勢として初めて2大会連続の決勝トーナメント進出を果たす快挙を成し遂げたが、ラウンド16でクロアチアにPK戦の末に敗れ、悲願の“世界8強入り”はふたたび4年後に持ち越しとなった。

 元日本代表MFで、現地カタールで森保ジャパンのゲームも観戦した橋本英郎はサムライたちの挑戦をどう見たのか。今回は登録メンバー全26選手(未出場の選手は除く)のパフォーマンスと森保一監督を5段階(S、AA、A、B、C)で評価してもらった。

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【GK】
権田修一(清水エスパルス)
4試合出場(390分) ■評価:AA
「ドイツ戦でPKを取られた点はマイナス要因だが、その試合の中でも気持ちを切り替えてビッグセーブを連発。コスタリカ戦では難しい失点もあったが尾を引くことなく、スペイン戦、クロアチア戦と安定したパフォーマンスを発揮した。特にクロアチア戦はひとつのミスも許されない雰囲気にあって、空気に呑まれず、守護神としてゴールマウスに立ち続けた」

【DF】
吉田麻也(シャルケ)
4試合出場(390分) ■評価:A
「苦しい時間を何度も乗り越えさせ、不安定になる守備を何度も修正して安定をもたらした。コスタリカ戦のミスは痛かったが、大会を通じて安定した守備を見せてくれた」

板倉 滉(ボルシアMG)
3試合出場(270分)/1アシスト ■評価:A
「彼の出場にゴーサインが出たことで3バックのオプションが生まれ、ドイツ戦の勝利に繋がった。対人でもほぼ負けなしで安定。スペイン戦の失点シーンは吉田選手とのコミュニケーションにおける一瞬の出来事で残念だった。4年後が楽しみになるパフォーマンスだった」

長友佑都(FC東京)
4試合出場(211分) ■評価:B
「苦しい役回りで、結果に直結するプレーは発揮できず。ただ、上手くいっていない時間帯でも耐えるプレーを徹底。それによってドイツ戦、スペイン戦の逆転勝利に繋げられた。クロアチア戦はチームとして機能していただけに、攻撃面での課題が浮き彫りになってしまった」
 
谷口彰悟(川崎フロンターレ)
2試合出場(210分) ■評価:A
「3戦目からの出場で難しいなか、コンスタントなパフォーマンスを披露。ミスもほぼなく、ポゼッションでも優位に立てるよう心がけ、受け手に対してメッセージのあるパスを送り続けた」

冨安健洋(アーセナル)
3試合出場(186分) ■評価:A
「クロアチア戦以外は短い時間の出場だったが、チームポゼッション、カバーリングと目に見えない部分を休まずに怠らずしっかりとプレー。自然とチームを良い方向に持っていく力は素晴らしかった。残念だったのは、クロアチア戦の失点シーン。伊東選手とのコミュニケーションで防げた可能性もあり、また自分のマークを吉田選手に渡せていたら状況は変わっていたはず。今後は怪我との向き合い方が鍵になりそうだ」

酒井宏樹(浦和レッズ)
2試合出場(119分) ■評価:B
「初戦でもっとできたはずと、個人的に正直感じた。クロアチア戦はいつもの酒井に戻っていたのが嬉しかった」

山根視来(川崎フロンターレ)
1試合出場(62分) ■評価:C
「大会前の親善試合(カナダ戦)に引っ張られていた印象。パフォーマンスがさほど悪くなっていたわけではないが、彼自身がチャレンジできるメンタリティー、置かれた環境と状況が良くないのが残念だった」

伊藤洋樹(シュツットガルト)
1試合出場(45分) ■評価:C
「急成長してメンバー入り。連携面などの足りない部分が本番で出てしまったように感じた。彼自身の能力というより周りとの関係性のところで、プレースタイルを確立しきれていなかったのがコスタリカ戦で現れてしまったように思える。まだまだ伸び盛りなのでプレーの幅を広げて、次回ワールドカップでは主力になっていてほしい」
【MF】
鎌田大地(フランクフルト)
4試合出場(324分) ■評価:C
「期待が高かっただけに自他ともにショックを受けているはず。ゴールへ直結するもうひとつ上のクオリティーを見せてほしかった。また守備面では穴としてかなり狙われてしまっており、ボランチ、サイドバックへの負担が大きくなっていた」

伊東純也(スタッド・ランス)
4試合出場(323分)/1アシスト ■評価:A
「ポジションを変えながらも持ち味を出そうと工夫していた。ウイングバックにコンバートされてからは守備面もかなりハードワークをし、また攻撃時には前線までスプリントとするなど新たな可能性を見せてくれた」

遠藤 航(シュツットガルト)
4試合出場(303分) ■評価:A
「ピッチ中央での守備の強度はどの対戦国とやっても一番良かった。攻撃の起点にもなれたらスーパーな選手、世界的にみても唯一無二の存在になれる。そのポテンシャルを感じさせてくれた」

守田英正(スポルティング)
3試合出場(285分) ■評価:B
「怪我の影響もあり、本大会までのパフォーマンスを遺憾なく発揮というところまではいかなかった。ただ、その状態でも攻守にアグレッシブにプレーしていた」

堂安 律(フライブルク)
4試合出場(228分)/2得点 ■評価AA
「ドイツ戦、スペイン戦と試合を振り出しに戻すゴール。強いハートがチームを引っ張った。結果という形で貢献したので評価は高いが、スタメンで出た試合のなかでは消えている時間も長かった。中盤の選手らしくさまざまな場面で顔が出せるようになれば、スーパーな選手になれるはずだ」

田中 碧(F・デュッセルドルフ)
3試合出場(173分)/1得点 ■評価:A
「スペイン戦で値千金の決勝ゴールを挙げる。プレー面では守田選手同様のパフォーマンスを発揮。コスタリカ戦では思い描く展開には持っていけなかったが、ボランチとして最低限の中央を破られない守備を実践し続けた」
 
三笘 薫(ブライトン)
4試合出場(162分)/1アシスト ■評価:AA
「“戦術三笘”と言われるだけのプレーを発揮。S評価でもおかしくない活躍だったが、徹底的に対策してきたクロアチア戦では、出場時間が延びるなか、チャンスを生み出せたのがカウンターのみになってしまったのが今後の課題か。この点は、彼自身の問題ではない部分も多くあったかもしれないが……。これからビッグクラブを相手にした、切れ味鋭いドリブル、ゴール、アシストを観ていきたい」

久保建英(レアル・ソシエダ)
2試合出場(90分) ■評価:B
「チーム戦術と組み合わせで、本来のパフォーマンスをほぼ観ることができなかった。ただそれは彼自身の問題のようには感じなかったので、4年後にこの悔しさを晴らしてくれると期待したい」

相馬勇紀(名古屋グランパス)
1試合出場(82分) ■評価:B
「コスタリカ戦のパフォーマンスは悪くなかった。一方で結果に直結するプレーができず。ゲーム中になかなかボールを引き出せず、持ち味を出せる時間が短かった」

南野拓実(モナコ)
3試合出場(56分) ■評価:C
「ドイツ戦では途中出場でアクセントになる。ただ、他の試合ではいまひとつ思い通りのプレーができずに終わってしまった。アジア予選までと本大会でみせたプレーの違いに自分自身も歯痒かったと思う」
【FW】
前田大然(セルティック)
3試合出場(183分)/1得点 ■評価:AA
「ドイツ戦、スペイン戦とFWの誰もが嫌がる、ただ追い続ける仕事をやり続けた。結果的にやり続けてくれたことで、後半の逆転に実を結んだ。クロアチア戦は、その努力と頑張りを神様が認めてくれたのか、こぼれ球が自分の足下に落ちてきてゴールも決められた。ここからは周囲の見方や苦手意識(ポストプレーなど)の克服を図れば、スピードを武器にした海外でも稀有な存在になれるはずだ」

浅野拓磨(ボーフム)
4試合出場(162分)/1得点 ■評価:AA
「個人的な下馬評を一番覆してくれた選手。ポストプレーは苦手なはずだったがチームのためにしっかりチャレンジ。裏への動き出しも多く、チームを助けるプレーも多くあった」

上田綺世(サークル・ブルージュ)
1試合出場(45分) ■評価:C
「コスタリカの戦術・戦略に呑み込まれ、自分の良さも引き出せず、ワールドカップを終えた。ポテンシャルがあるだけにいろいろな引き出しを増やして、ステップアップを遂げていってほしい」

【未出場のため評価なし】
GK 川島永嗣(ストラスブール)
GK シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)
MF 柴崎 岳(レガネス)
FW 町野修斗(湘南ベルマーレ)

【監督】
森保 一 ■評価:S
「今までに感じたことのないリスク許容度を本番のワールドカップで見せてくれた。超攻撃的なシフトを組み、応援する側をワクワクさせてくれ、またその交代策も的中させた。今回、あえてS評価は監督のみとした。理由は、他の選手の伸びしろを考えたら、もっともっとできたはずだし、期待を込めて。選手たちは本気で、ベスト8を目ざしていたとも思うからだ」

<了>

橋本英郎
 
PROFILE
はしもと・ひでお/1979年5月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、AC長野パルセイロ、東京ヴェルディでプレー。2019年からJFLのFC今治に籍を置き、入団1年目で見事チームをJ3昇格に導く立役者のひとりとなった。2021年5月2日の第7節のテゲバジャーロ宮崎戦で、J3最年長得点(41歳と11か月11日)を記録。2022年は関西1部リーグ「おこしやす京都AC」に籍を置いた。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場。現役フットボーラーとして奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中だ。173センチ・68キロ。血液型O型。

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