サッカーの世界では時間の流れが早く、次々と新星たちが登場してくる。カタール・ワールドカップでも、注目される若手が多い。その一方で、見逃したくないベテラン選手たちがいる。ベテランのサッカージャーナリスト・後藤健生には、3人のベテランW杯戦士の「日の出」の時代のエピソードがある。

■日本代表のレジェンド

 そう。日本代表にも今大会で4度目のワールドカップ出場となるレジェンドがいる。長友佑都である。

 僕が彼のプレーを見てびっくりしたのは、明治大学時代のことである。

 場所は江戸川競技場だったと思うが、大学リーグの試合を見に行った時、明治大学の右サイドバックが激しいアップダウンを繰り返す姿に目を見張ったものだった。

 メンバー表を見ると、それが長友だった。「長友」というやや珍しい苗字には記憶があったが、どんなプレーヤーだったかはまったく思い出せなかった。とにかくその元気いっぱいのアップダウンには強烈な印象を受けた。

 最近は大学経由でJリーグのスターになる選手は珍しくもないが、長友が大学生の頃は高いハードルがあった。だが、僕はその試合で長友の試合を見ていて「これは、プロでも十分にやってけるポテンシャルがある」と思ったし、ちょうどこれから北京オリンピック予選という時期だったので、「一度、オリンピックチームでも試してみたらどうだろう」とも思ったのだ。

 そして、そのことをある雑誌で簡単に紹介した。すると、次に大学リーグの試合を見に行った時に明治大学の監督をしていた神川明彦さん(現、スフィーダ世田谷=なでしこリーグ1部=監督)から「よく書いてくれました」とお礼を言われた覚えがある。

■大学時代と変わらないプレー

 とにかく、その後、長友はFC東京に入団して大活躍。オリンピック代表にも選ばれて、北京オリンピックに出場。そして、北京組の中から大抜擢されてフル代表に入って2010年のワールドカップメンバー入りを果たす。

 さらに、南アフリカ大会の後にはイタリア・セリエAのチェゼーナに移籍すると、わずか半年後には名門インテルに移籍してここでもポジションを確保。当時のインテルのキャプテンだったハビエル・サネッティが欠場した時にはキャプテンを任されるほどの信頼を置かれる存在となっていった。

 大学リーグで初めて見た時から、まさに信じられないようなスピード出世を遂げた長友。代表にもすっかり定着し、2011年にはドーハのハリファ・インターナショナル・スタジアムで行われたアジアカップ決勝のオーストラリア戦では左サイドからのクロスで李忠成の決勝ゴールをアシスト。

 その後も、いくつものクラブを渡り歩いて、現在は古巣FC東京に復帰。そして、代表への意欲も持ち続けて5回目のワールドカップ出場を果たそうとしているのだ。

 クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシと同じように、35歳になった長友のプレーも、あの最初に明治大学の試合で見た時とまったく変わらないのがうれしい。元気いっぱいの長友のプレーを、ハリファ・インターナショナル・スタジアムで再び見てみたいものである。