カタール・ワールドカップで、日本代表は初戦でドイツ代表相手に2-1の逆転勝利を収めた。一気に話題が沸騰しているが、この勝利にはさまざまな情報と意味が込められている。歓喜がもたらされた理由と今後への影響について、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が熱戦直後の現地で激論を交わした。
■ボールをつなげなかった日本
――前半はドイツが良かったか、あるいは日本が悪かったのか、どちらだったのでしょうか。
後藤「相手がうまいからプレスに行けないのは、しょうがない。確かにドイツはうまかったよね。でも、あれほど引かないで、もう少し前で何とかする姿勢を見せ続ける必要はあった。あと言えるのは、ドイツは非常に攻撃が強くて、日本の守備陣で止め切るのが難しいのは間違いない。でも、日本の攻撃力をもってすれば、ドイツの守備陣にミスを引き起こすことはできるんだから、守る試合をする得策じゃなかった。日本が攻める時間を多くすれば、最後のゴールシーンのようなことが起こるんだから。ただ、ドイツを相手に勝った後で試合運びが不満だとか言えるんだから、日本代表は大したものだよね」
――他に気になった点はありますか。
後藤「バイタルエリアの守備がちょっと弱かったから、守田英正にいてほしかったな、というところだよね。それから、せっかくボールを奪ってもパスがつながらなかった。冨安健洋が万全の状態で出場していたら、何とかつないでくれたんじゃないかな。日本は蹴り返すばかりだったからね」
大住「その点が、前半はひどかったよね。狙ってはいるんだけど、パスが相手に通ってしまったりしてさ。守田がいなかったのもとても大きかったと思うけど、中盤では前半だけで交代してしまったけど、久保建英はよく守っていたと思うよ」
■鎌田が存在感を放てなかった理由
後藤「最近の久保の守備はすごいよ」
大住「突破されたけど、戻ってクリアした場面もあった」
後藤「ゴール前まで戻っていたよね」
大住「出来が悪かったから代えられたわけじゃないから、また次の試合では久保に頑張ってもらわないといけないね」
――中盤では、ボールを持てない展開で、鎌田大地が存在感を出せませんでした。
大住「前半の苦戦には、その影響もあったんだよ。前線で前田大然と鎌田が並んでも、プレスの強度でギャップができていた。ボールを奪えないものだからずるずると引いて、守備陣も慌ててしまって前線へとパスを通せない。だから鎌田に良いボールがまったく行かなかったんだけど、後半は割りと良くなったよ」
後藤「前半の鎌田は孤立してしまったね。ドイツの選手も鎌田のことは分かっているから、潰しに来るしさ」
■マン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら…
――この試合のマン・オブ・ザ・マッチは…。
大住「大会公式では権田修一だったね」
――おふたりにとっては誰ですか。
後藤「僕は流れを変えたという意味で浅野拓磨。浅野が出すようになった前線からのちょっかいは、随分役に立ったと思う。点も取ったしね」
大住「僕が選ぶなら、森保一監督かな」
後藤「なるほど。森保監督はラージグループをつくったり、良いチームづくりをしたと思っていたけど、采配に物足りなさがあった。カタールに負けた2019年のアジアカップ決勝とかね。だけど、大会直前のカナダ代表戦で3バックにして一気に流れを変えてみせたし、今回はそれを上回った。攻撃的なカードを次々と切っていったのはすごかったし、彼は変わったね」