サッカー日本代表は27日、カタールワールドカップのグループステージ第2戦でコスタリカ代表と対戦する。
3大会連続のワールドカップ出場となるコスタリカ代表では、ブラジル、ロシア、カタールと3大会全てに参戦しているMFブライアン・ルイスが10番を背負う。37歳になった痩身のベテランMFは9月に今年限りでの現役引退を表明しており、カタールワールドカップが国際舞台でのラストダンスとなる。
年齢的な衰えは隠せなくなっている。全盛期のようなアグレッシブさは鳴りを潜め、運動量は見る影もない。それでもルイス・フェルナンド・スアレス監督が8月の段階で「ブライアンだけは決まっている」とワールドカップでの代表招集を確約するほど、チーム内での影響力や信頼は絶大だ。
ブライアン・ルイスがコスタリカ代表で英雄的存在になった理由は、2014年のブラジルワールドカップで同国史上初のベスト8進出に大きく貢献したからだけではない。彼自身のキャリアがコスタリカサッカー界への見方を大きく変えたのである。
母国のアラフエレンセでプロデビューしたのが2003年11月のこと。その後、2006年夏にベルギーの名門ヘントに移籍して欧州参戦を果たす。それからはオランダのトゥエンテ、イングランドのフルアム、オランダのPSVアイントホーフェン、ポルトガルのスポルティングCP、そしてブラジルのサントスを渡り歩いた。
トゥエンテ時代の2009/10シーズンには、クラブ史上初となるオランダ1部リーグ優勝の立役者となった。加入1年目だったブライアン・ルイスはリーグ戦34試合に出場して24得点を挙げた。アヤックスのウルグアイ代表FWルイス・スアレスに得点王は譲ったものの、トゥエンテのクラブ史にコスタリカ出身のカリスマの名前はしっかりと刻まれている。
クラブで数々のタイトルを獲得するだけでなく、個人としても2016年に北中米カリブサッカー連盟の年間最優秀選手賞を受賞。国際サッカー歴史統計連盟(IFFHS)による北中米カリブ地域の2010年代ベストイレブンにも選ばれている。
ブライアン・ルイスはコスタリカ代表の通算キャップ数でMFセルソ・ボルヘスに次ぐ歴代2位、通算得点数では歴代4位につけている。ただ、彼の本質はストライカー然とした得点力ではない。広い視野、高いキープ力、圧倒的なパスセンスが融合したチャンスメイクが真骨頂だ。
現在のコスタリカ代表でスタメン出場の機会は少なく、後半の途中から投入されることがほとんどになっている。それでも頼られるのは、確実に流れを変えられるアイディアを持っているからだ。交代出場とともにブライアン・ルイスをトップ下に配置するシステムに変わり、そこから攻撃が一気に加速する。
サッカー日本代表にとっても注意しなければならない選手になるだろう。劣勢でもブライアン・ルイスがピッチに立てば、スタジアムの雰囲気が一変する恐れすらある。2014年のブラジルワールドカップで対戦したコートジボワール代表のFWディディエ・ドログバのように。
現役ラストマッチは、12月17日に予定されているアラフエレンセと古巣トゥエンテによる親善試合になる予定だ。ただ、カタールワールドカップの決勝が同18日のためブライアン・ルイスは「決勝進出で僕の引退試合が延期になるよう、持てる力の全てを尽くす」と意気込んでいる。
2020年からは若手時代を過ごしたアラフエレンセに復帰し、所属クラブでも代表でも精神的支柱として後輩たちを引っ張ってきた。現役引退の瞬間はプロデビューを果たしたクラブで、と決めている。ブライアン・ルイスが夢の舞台で放つ最後の輝きは、コスタリカ代表を高みへと導く光となるだろうか。