FIFAワールドカップカタール2022(カタールW杯)において、グループリーグ第2節までを終えたサッカー日本代表。11月23日(日本時間)ドイツに2-1で勝ち、27日コスタリカには0-1で敗れて、現在勝ち点3でグループ2位につける。これで決勝トーナメント進出の条件は、12月2日に控える第3戦のスペイン戦に勝利するか、あるいは引き分けの場合ドイツ対コスタリカの結果次第となった。
ここまで2戦ともが、大方の予想に反する結果となっている。なぜこのようになったのか。日本対ドイツ戦、コスタリカ戦それぞれの試合の流れを振り返り、スペイン戦で勝つために必要な要素をまとめた。
コスタリカ戦の誤算
W杯グループリーグ初戦のドイツ戦(11月23日)から、スタメン5人を入れ替えて挑んだ第2戦コスタリカ戦(27日)。日本は開始直後にチャンスを作り、良いスタートを切ったように見えた。しかし最終的なスコアは0-1。日本は敗れた。
時間の経過とともに、5バックで固めるコスタリカのペースに巻き込まれたことが敗因の1つだろう。ボールは握れどなかなか縦パスを入れられず、ボールはDFラインを行ったり来たり。攻撃的なパスをみせていた山根視来を高い位置へ移して3バックへ移行するも、決定機は創出できない。
この試合で攻撃を担った上田綺世、堂安律、鎌田大地、相馬勇紀の攻撃陣は自らの特徴を発揮できず、改善するためのアピールも足りなかった。前半を0-0で終え、後半開始から伊藤洋輝と浅野拓磨を投入し3バックとしたが、それでも明確な変化は与えられない。
W杯優勝経験のある強国ドイツに勝てたのだから、初戦でスペインに0-7で完敗したコスタリカには勝てるだろう、という多数派の考えは、試合が進むにつれて不安に変わっていく。選手たちにも、焦りが生まれていった。すると81分には吉田麻也が無理に繋ごうとしたボールを奪われ、後半唯一許したシュートで失点。終盤は三笘薫の突破からチャンスを生み出したものの、その他は可能性を感じる場面は少ないまま、試合終了の笛を聞くこととなった。
サッカーにはよくあることだが、ボールを失わないことに気を配るあまり「繋ぐこと」に執着してしまったことは痛恨だった。5-4のラインで守りを固めたコスタリカから流れのなかで得点を奪うには、大きくわけて3つの方法が考えられた。
少ないタッチ数でパスを繋ぐ、サイドからクロスを送る、ドリブルで勝負してバランスを崩す。
技術とパスワークに優れたスペインであれば、大勝した初戦のようにパスを繋いで崩しただろう。または前線に高さのあるチームならば、クロスを選んだだろう。だが、強い日差しの影響か動きが少なく前線に高さのない日本には、そのいずれもが難しかった。
であれば、多少強引にでもドリブルで仕掛けることが必要ではなかったか。特にペナルティエリア内であれば、相手はPKとなることを恐れ、無理に止められない。しかし実際には、相馬が左から仕掛けてシュートに持ち込んだ1回と、伊東純也がペナルティエリアの外で倒された1回、終盤に三笘が見せた2回の突破を除いて、危険なエリアでのドリブルはほぼ見られなかった。これでは偶発的なものを除いて得点を奪うのは難しく、見ている者からすれば得点への執着心がないように感じてしまう。終盤怒涛の攻勢をみせたドイツ戦と比べると、その差はより顕著に感じられた。
先手を取れたドイツ戦
では第1戦のドイツ戦はどうだったか。W杯優勝4回を誇るドイツに普段通りの4-2-3-1のシステムで対抗しようとした日本だったが、前半は想像以上に押し込まれることになった。
伊東と前田のスピードをいかしたカウンターからネットを揺らしたものの、その他に効果的な手は打てず。完全にボールを握られ、33分にはPKを決められ失点。0-1で終えたものの、前半アディショナルタイムのオフサイドとなった場面など、より大きな差がついても不思議ではなかった。
日本は後半開始から冨安を投入し、3-4-2-1へと変更。前半自由にしてしまったドイツのサイドバックを抑え、さらに攻撃的な選手を次々と投入していく。
一方のドイツは、前半で日本を推し量り、負けるはずがないと感じたことだろう。さらにあの時点では、グループを1位で突破するための大一番と想定されたスペインとの試合を控えていた。意識は徐々に、そのスペイン戦に向かっていく。67分にトーマス・ミュラーとイルカイ・ギュンドアンを交代させたことがその象徴で、この試合の結末を大きく変えるものとなった。
日本は脅威の減ったドイツを徐々に押し返し、途中出場の選手たちが躍動。75分に堂安律、83分には浅野拓磨がゴールを決め、試合をひっくり返すことに成功した。
ドイツは26本ものシュートを放ったが、1得点に留まり敗戦。前半アディショナルタイムのオフサイドとなった場面、ギュンドアンのポストに当たったシュート、日本の守護神権田修一の4連続セーブなど、確かにドイツには数多くの決定機があり、決め切れなかったという見方もある。
だが、日本としてはある程度想定内だった。ドイツに許した決定機のうち、ペナルティエリア内で決定的なシュートを許したのは、前半アディショナルにオフサイドとなった場面と、4連続セーブのうちの後半2回の場面ぐらいだ。
サッカーにおいて得点率の高い位置で簡単にシュートを許さず粘り強く戦えていたこと。加えて遠藤航がデュエル(1対1)での勝率で73.3%を記録し、チーム全体としても50%を超えるなど劣勢のなかでも球際で戦えていたことが、ドイツをPKの1得点のみに抑え金星を掴めた理由だった。
スペイン戦で2度目のサプライズを起こすには
日本はここまでの2試合で、16人をスタメン起用した。途中出場の選手を含めると、すでに26人中21人がプレーしている。ベースはドイツ戦のメンバーだろうが、その中から個としてのパフォーマンスはもちろん、組み合わせとしてのパフォーマンスを考えてベストと思われる11人を起用しなければならない。
負傷中の冨安健洋、酒井宏樹の動向にも注目が集まる。加えて、さまざまな展開を前もって想定しておくべきだろう。
ただしそれだけで勝てるほど、スペインは甘くない。ドイツ戦と同様かそれ以上に守備に身体を張ることは最低限。得点を奪うには、セットプレーでの工夫も必要だ。高さにやや欠ける日本が得点を奪うためには、ここまでの2試合では見せていないトリックプレーなどの策を講じなければならない。流れのなかでも、三笘の突破力や伊東のスピードに頼りすぎず、手を変え品を変えあらゆる手段を試すべき。そのためにはコスタリカ戦で失われていた勇気を、前面に押し出さねばならない。
日本対スペイン戦は、日本時間12月2日の朝4時キックオフと視聴には不向きな時間帯だ。それでも多くのファンやサポーターが、早起きして声援を送るはず。日本を代表する選手としてチームとして、そして何よりこの舞台に向けて準備を重ねてきた自分のために。再びサプライズを起こし、目標のベスト8へと大きく前進することはできるだろうか。