スペイン人のアルベッツ記者が日本の印象について語る
日本代表は現地時間12月1日、カタール・ワールドカップ(W杯)グループE第3節でスペイン代表と対戦する。コスタリカ戦(0-1)の翌日となる28日に、この試合に向けて森保ジャパンは再始動したが、そんな日本を取材にスペインメディアも訪れていた。そのなかの1人であるスペインメディア「カデナセール」のアドリア・アルベッツ記者に、日本とスペインの試合に向けて話を聞いた。
日本とスペインは、これまでに一度しか国際Aマッチを戦っていない。2001年4月25日の国際親善試合で、この時はスペインに0-1で敗れている。カタールW杯の試合は、通算2度目となる対戦だが、アルベッツ記者は「試合は拮抗するものになるだろう」と予想する。
「もちろんスペインは勝利したいが、引き分けでも僕らにとっては十分だ。勝点5になれば、グループステージは突破できるからね。理想は勝つことだけれど、引き分けで次に行けるというメンタリティで、リラックスして試合に臨めるだろう。日本にも引き分けたり、勝ったりする力はあると思うから、拮抗すると思う。マズいのはスペインが敗れて、コスタリカが勝利した時。この時ばかりはスペインが敗退となるからね」
コスタリカ戦前の日本の心構えのようにも聞こえるが、同じなのはそれだけではない。日本は初戦のドイツ戦からコスタリカ戦で5人の先発メンバーを入れ替えたが、決勝トーナメント進出が確実視されているスペインも、ここでターンオーバーをする可能性があると指摘する。
「スペインの人々たちは、日本はとても良いチームだと認識している。チームとして戦うことに長けていて、久保建英、鎌田大地のようにクオリティーの高い選手もいる。彼らは素晴らしい選手たちであり、スペインも警戒しないといけない。日本は試合に向けて複数のオプションも持っているが、スペインも同じだ。ルイス・エンリケ監督は、この試合でまだW杯でプレーしていない選手を試すだろう。それでもスペインの強さは変わらないよ」
日本は初戦でドイツに勝利して、世界を驚かせた。そして、そんな結果を出したにもかかわらず、次のコスタリカ戦を0-1で落として再び世界を驚かせた。スペインとドイツの試合に向かう車内で、ラジオで日本とコスタリカの試合を聞いていたアルベッツ記者も、驚かされたという。
「日本とコスタリカの試合は、正直なところ、本当にビックリした。日本のドイツとの初戦を見ていたからね。あの試合ではドイツが、もっと良い結果を得てもおかしくなかった。でも、日本の戦いぶりには良い意味で驚かされた。そして昨日は悪い意味で、とても驚かされたよ」
それでもスペイン戦に向けては、「ドイツ戦を見ても、日本は良いチームだとわかる。そして彼らは次に進むために勝利するしかない。スペインに対して全力を尽くすだろう。スペインは最高の日本と対戦することになると思っているから、間違いなく試合は難しいものになるよ」と、日本はコスタリカ戦の時とは違うチームになるだろうと予想した。
日本の注目選手には久保を挙げ、出場機会の少なさに「本当に驚き」
注目する選手については、予想通りの答えが返ってきた。
「日本の選手で良いと思っている選手は、久保建英と言わざるを得ないね。ただ、それは彼がスペインでプレーしているからだけではないよ。彼はトップ選手になれるクオリティーを持った選手だ。彼はもっと試合に出場し続けなければいけないが、本当に質が高い。日本代表でなぜこんなに出場時間が少ないのかは、本当に驚きだよ。コスタリカ戦でも先発出場すると思ったのに、彼はまったく出なかった。ドイツ戦でも、彼は良いプレーをしていたからね。でも、スペイン戦は彼が先発出場することになると思っている。彼も、この試合に向けて照準を合わせている。彼は技術のすべてを出したいと思っているし、インタビューで『人生で最も重要な試合』と言っていたからね。スペインは警戒しないといけない。彼とアンス・ファティの再会も楽しみだね。彼らはラ・マシアで一緒に過ごしたし、友人同士だ。彼らにとって、非常に大きな1日になるだろう」
最後に勝敗予想もしてもらった。
「申し訳ないけれど、スペインが勝つと言わざるを得ない。スペインは日本よりも、少しだけ質が高いからね。(少しだけ?と聞き返すと)いや、日本向けのインタビューだから言ったらダメかなと思ったんだけど、本音を言うとスペインは日本よりもはるかに質が高いからね。これはキミが言わせたんだぞ(笑)。スペインは本当にクオリティーが高いし、誰もがW杯を優勝するという目標に向かっている。結果を予想するなら、3-1でスペインが勝利だね」
そう言ってから彼は、「僕は日本が好きだから、彼らが帰国してしまうのは寂しい。日本には2回行ったけど、サッカーだけでなく、文化も、食べ物も日本のことはすごく気に入っているからね。でも、この試合が日本のカタールW杯、最後の試合になると思っている」と母国の勝利を確信していた。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)