【中国サッカー考察コラム#13】カタールW杯の日本戦は中国でも大注目

 日本のサッカーファンのみなさま、こんにちは。中国サッカーメディアにて活動をしています久保田嶺です。私は日本代表のカタール・ワールドカップ(W杯)での躍進を、中国で観戦していました。長く中国に関わる私もW杯の時期に中国にいたのは初めてとなり、特に中国人による日本代表への熱狂には大変驚かされました。そこで、今回は「中国で見た日本代表」として、私が経験したこと感じたことを書ければと思います。

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「ぜひみなさん、日本代表の試合を楽しんでください、必ずドイツ代表に勝ちます」

 11月23日18時。私は「日本代表はドイツ代表に必ず勝ちます」という1つの激励動画を中国の動画サイトへ投稿し、その後、「上海found158」というスポーツバーが集まる場所へと向かいました。私が生活する中国の上海には、日本代表を応援する「SAMURAI BLUE応援会上海支部」という中国の若者が結成した組織があり、彼らが集まるというバーでともに日本対ドイツの試合を観戦することしたからです。

「森本貴幸選手が一番好きです。見てください。彼の2010年のユニホームを持っています」
「2018年のロストフの14秒もここで皆と見ていました。バモ、ニッポン」

 約20人の中国の若者がバーには集まっており、私が日本人サポーターだと分かるやいなや、日本代表への熱意や敬意を立て板に水のごとく私へ話してくれました。森本選手のことや、日本代表のチャント「バモ! ニッポン(VAMOS NIPPON)」を中国で中国人と歌えるとは私も思っておらず、彼らの本気度に非常に驚かされ、嬉しくもありました。

 そして、試合結果はみなさんご存知のとおり、日本代表が2-1とドイツに逆転勝ち。私も大興奮でビールを飲んでいると、そこへ友人から連絡があり、どうやら私が試合前に投稿した日本代表激励動画が凄いことになっていると教えてくれました。

 動画を確認してみると、同時接続1万人、すでに再生数は100万回を超えており、「本当に感動した!」「この興奮を日本人のあなたにぶつけたい! ありがとう!」など、日本代表への賞賛でパンク状態となっていました。中国での日本代表バブル到来です。

日本の快進撃に中国では「嫉妬」も

「イタリアが2度も続けてW杯に出場できないことを考えれば、日本の試合が見れることがどんなにありがたいことか。スペイン戦は初心に戻ってサッカーを楽しもう」

 これは、元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が日本対コスタリカ戦後にツイートしたものです。私も今回のW杯を中国で見ることになり、母国がW杯に出場して応援することができる、ということへの感謝に改めて気付かされました。

 ここ中国でも街中のバーでは連日連夜W杯が放送され、ケンタッキーなどはW杯特別セットを販売し、SNSのトレンドはW杯関連ばかりなど、大いに盛り上がっています。

 しかし、「中国は中国代表チーム以外はすべてW杯に参加している」という有名な言葉があるとおり、中国大手企業はW杯のメインスポンサーをし、多くの中国サッカーファンは現地カタールまで足を運んでいますが、中国代表チームはこの20年間、W杯に出場できていません。

「とにかく“酸”です。久保田さん、この意味を知っていますか?」

 これは先日、上海で行われた日本サッカーについて討論するイベントで、中国のビジネス紙「第一財経日報」のサッカー記者、佟(トン)氏が私へ質問してきたことです。この中国語の意味は「嫉妬」であり、つまり同じ東アジアである日本がW杯で躍動する姿をとても嬉しく感じるが、強烈に嫉妬もしている、ということなります。

「売上は倍になりました。やはり三笘薫選手が一番人気です」

 最後に、こう話してくれたのは中国のネットサイトにて日本代表ユニホームを販売する高(コウ)氏です。1500円という値段からすると、おそらく彼が販売しているのは偽物の日本代表ユニホームなのですが、何はともあれ日本代表の今回の躍進により、ユニホーム売上は好調、数多くの中国人に日本代表の影響が出ていると感じます。

 大学生が食堂に集まり、日本対スペイン戦の逆転に興奮する様子や、三笘選手の中国での愛称「三球王」のトレンド入り、そして私もユニホーム姿でコンビニに入ると「ジャパン!」と中国人のお客さんに声をかけられました。まさに日本代表バブルです。

 ここ中国で初めてW杯、そして日本代表の躍進を見ることになり、中国人の日本代表に対する熱狂と尊敬、そして嫉妬を目の当たりにしました。1人の日本人として、この日本代表バブルが長く続くこと、引き続き彼らに熱狂を届けられること、そして「中国は、今回は中国代表チームもW杯に参加している」と、2026年は彼らが言えること、日本代表だけではなく中国代表バブルも中国へ到来することを強く期待しております。(久保田嶺 / Rei Kubota)