日本代表はグループステージ第3戦のスペイン戦で2-1の逆転勝利。E組首位で決勝トーナメント進出を決めた。

 誰もが突破は難しいと思っていた、この地獄のようなグループで、強豪のドイツとスペイン相手にワールドカップの本番で勝つなんて信じられない。誰がこんな展開を予想できただろうか。

 スペイン戦ではほとんどの時間、押し込まれたなか、日本は3-4-2-1という捉え方もできるけど、基本的には5-4-1という守りを固めるスタイルが功を奏して、勝点3を手にできた。

 今大会では守備的に前半を凌いで、後半のメンバー投入でさらに守りの強度を上げるというスタイルが確立されてきている。相手にボールを支配されるなかで、組織的な守備でボール奪取。そこから、スペインの守備のバランスが崩れている隙を狙って、時間をかけずに攻めていく。これまで培ってきた戦術が見事にハマったゲームとなった。
 
 ディフェンス陣の働きは素晴らしかった。なかでもキャプテンの吉田は、非常に良いカバーリングや何度もボールをはね返して、強さを見せた。攻められているのに守備に安心感があるって凄いことだよ。今の日本にとっては、逆に攻めている時にカウンターを受けるほうが怖いかもしれないね。

 途中出場の選手も大きなインパクトを残した。後半からピッチに立った堂安が右サイドから中に持ち込んで、ペナルティエリア手前右の得意な角度から、左足の強烈なミドルで同点弾を奪った。あのゴールがチームに勇気を与えたと思う。

 同じ時間に投入された三笘も、堂安のクロスに対して、ファーサイドに懸命に飛び込んで折り返し、田中のゴールをアシストした。それ以外にも攻守で圧巻のプレーを見せ、チームに勝利を呼び込んだ。2人の存在感には目を見張った。

 そのほか、伊東のパフォーマンスも見事だった。同点のシーンで、相手の中途半端なクリアボールに身体を投げ出してヘディングで競り勝って堂安に繋ぎ、同点ゴールをもたらした。勝ちたいという思いが存分に伝わる気迫のプレーだったね。
 
 森保監督も称えたい。どんなシチュエーションでも堂々としていて、押し込まれている状況を受け入れているように感じた。スペインに先制されても、あまりリアクションせず、得点を奪っても大きく喜びを表現しなかった。

「最後は責任を取るから、ピッチに上がったらしっかりやれよ」という選手に向けた指揮官の決意表明だったように感じた。その立ち振る舞いがプレーヤーにも良い意味で伝染しているんだろうなと。監督が一喜一憂していたら、選手にも影響するからね。森保監督の肝の据わり具合は半端じゃないよ。

 采配にも驚いた。日本は前半に、板倉、谷口、吉田の3バック全員がイエローカードをもらってしまった。もし、もう1枚もらって退場となってしまったら、数的不利で絶体絶命のピンチになるところだった。それでも森保監督は、センターバックを誰一人交代させることなく戦い抜き、最少失点に抑えて見せた。
 
 これ以上カードをもらわずに守り抜いた守備陣も称えなければいけないけど、なんといっても、3人を信じて使い続けた指揮官の判断にも拍手を送らないといけない。選手の経験値やパーソナルな部分も見たうえで、選手を信頼している森保監督の心構えに感心した。

 次戦は史上初のベスト8進出が懸かるクロアチア戦だ。攻めるのが好きで、レベルの高いチーム。ただ、スペイン戦のように良い守備から良い攻撃に出ていければ、勝機は大いにある。

 クロアチアのグループステージの試合を見ていたら、モドリッチら選手たちが試合後に疲れ切っているような素振りを見せていた。回復力、コンディションは日本のほうが上だと感じたよ。

 とにかく切り替えて、次の一戦に向けて準備する必要があるのは分かっているけど、まずは森保監督、コーチングスタッフ、選手のみんなに本当におめでとうと言いたいね。

【著者プロフィール】
金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、64歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。

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