カタール・ワールドカップに出場している日本代表は現地時間1日、グループステージ最終戦でスペイン代表を2-1で破り、決勝トーナメント進出を決めた。ドイツ代表に続く今大会2度目の優勝経験国撃破の理由と、この勝利が次のラウンド16でのクロアチア代表戦、さらにその先の日本代表にもたらすものを、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り尽くす。
■流れを変えた堂安の一撃
――後半、一番変わったところはどこですか。
大住「マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは田中碧だったけど、やはり試合を変えたのは堂安律だよね。あのゴールは、決定的に効いた」
後藤「相手にもショックを与えるような、きれいなシュートだった。後半開始からプレーを変えたと言われるけど、前半の最後で少し前田大然が前から圧力をかけて、相手のGKやDFがミスをしかけていた。前半30分くらいまで、そういうことを全然しなかったんだけど、前半の終盤から少しそういうのを出して変わりつつあるな、というのはあった。それを受けての後半の変化だったんだよ」
大住「後半は相手との距離がずっと近くなって、引っかけたりする場面が増えたね」
後藤「前半は意図的にプレスを抑えていた、というのは間違いないと思う」
大住「前半は最終ラインに5人、中盤に4人で、2つのラインをつくって守っていたからね」
後藤「90分間プレスをかけ続けるのは無理だろうし、結果を求めることを第一に、さらに今回対戦する相手チームのレベルを考え合わせると、プレスを控えるべき時間帯には控えて、いくべき時間に集中してエネルギーを使うという戦略を選択するのは、仕方ないことだったのかなと思いますね」
■森保監督と三笘の話し合い
――大住さんは堂安とのことでしたが、後藤さんが挙げるマン・オブ・ザ・マッチは誰ですか。
後藤「前田大然。彼がプレスにいったことで、前半の終わり頃に流れが変わったから」
大住「結構、相手は嫌がっていたよね」
後藤「そうそう。途中から、何度もGKにプレスがかかるようになっていたよね。ドイツとの第2戦を見て、スペインも後ろの選手は結構ミスをするなと思っていたんだよ。だから、ちょっかいを出せば、いつかはミスをしてくれるだろうとずっと思っていたわけ。それなのに前半は全然プレスにいかなかったから、もちろんプレスを外されることもあるだろうし、90分間は続かないけれど…と思っていたら、プレスをかけ始めたら案の定で相手にミスが起こった」
――逆転するのが早すぎるとも感じました。
大住「そう。だから、3点目を取らないと難しいかなと思ったけどね」
後藤「点を取ってから、守備も積極的になったよ」
大住「構えているのではなくて、ボールを奪いにいく守備になったからね。関心したのが、三笘薫の守備。すごく良かったよね。VARが終わって2点目が確定した直後に、三笘はこのままでいいのかと森保一監督に確認していた。三笘は攻撃の担い手として交代で出てきたので、逆転した後にどうするかということを森保監督に確認して、非常に冷静にやっていた。1対1での対応も、非常に良かったよね」
■4年前からの成長
後藤「大学生の頃の三笘を見ている僕としては、あんなに強い選手になったんだ、という意味で相当に意外だったなあ。守備自体も頑張っていたし、ボールを奪ってドリブルすることで、相手を下げる効果もあった。三笘は結構、守備面で効いていたよね」
大住「昨シーズンのベルギーでプレーした経験が、すごく役立った気がする」
――ドイツ戦では話し合いも不要なほど、全員がスムーズに交代やシステム変更に対応していました。
大住「今回は、逆転した時間が本当に早かったから。同点にしてからあっという間に試合をひっくり返したから、選手たちもちょっと驚いたんじゃないかな」
後藤「4年前はベルギーを相手にリードした後、全員驚いたままで話し合いもせず、西野朗監督も的確な指示を出せないまま戦ってやられちゃった。あの経験もあるから、リードしたらこうしようというプランが、チームの中であったんでしょう」