サッカー日本代表は現地時間5日、FIFAワールドカップカタール2022・ラウンド16でクロアチア代表と対戦する。ルカ・モドリッチを筆頭に、クロアチア代表の中盤は今大会屈指のクオリティを誇る。そんな強敵に、日本代表はどのように挑むのか。マッチアップが予想される田中碧は対戦相手をどのように分析するのか。(取材・文:元川悦子【カタール】)

●クロアチア代表の「武器」

 カタールワールドカップ(W杯)もグループリーグが2日までに終了し、3日からラウンド16に突入した。5日のクロアチア代表との大一番を控える日本代表も2日のオフを経て、3日から再始動。冒頭以外、報道陣をシャットアウトしてリカバリーとクロアチア代表対策に時間を割いた。

「(グループステージのクロアチア代表は)0-0が2試合あって、しっかりと堅いとは思いますし、もちろん4点取ってますけど、どちらかというと硬い、3試合で失点1のところの方が印象には残っていますね」と冨安健洋は手堅い守備を1つの特徴に挙げた。

 日本代表にとって脅威なのが、クロアチア代表の中盤だ。アンカーのマルセロ・ブロゾビッチ、インサイドハーフのルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチはいずれも2018年のロシアW杯準優勝を経験している百戦錬磨のタレント。高度な国際経験と安定感は今大会随一と言っても過言ではないだろう。

「クロアチアはすごくテクニカルで個人としてもハードワークしてくる。特に中盤の3人はチームの核。世界的にもビッグクラブでやっていますし、どの選手もすごく動ける。

 スペインだったら(セルヒオ・)ブスケツ(バルセロナ)が真ん中にいて動かないけど、ブロゾビッチは凄く上がってきますし、左右にも動く。フレキシブルかつ広範囲に動ける機動力はどの選手にもある。そこは彼らの大きな武器だと思います」とスペイン代表戦で殊勲の逆転弾を奪った背番号17は警戒心を露にした。

●田中碧が分析するクロアチア代表

 日本代表がクロアチア代表戦を4バックで行くのか、スペイン代表戦と同じ3バックで行くのは定かではないが、中盤の攻防が激しくなるのは確実。現時点では田中が先発するかサブなのかも予想がつかない。仮に頭から出るとしたら、先発復帰するであろう遠藤航、トップ下の鎌田大地と連係・連動しながら、敵の神出鬼没な動きを封じることに全力を注ぐ必要がある。

 とりわけ、キャプテンであり精神的支柱のモドリッチは要注意人物。37歳でありながら、無尽蔵のエネルギーを前面に押し出し、試合終盤になっても隙を突いてゴール前に上がって得点を狙ってくる。そういうシーンは1日のベルギー戦でも見られただけに、彼を勢いづけてはいけない。

「彼らは試合の最後まで運動量が落ちない。走り切れる能力がある」とも田中碧は分析する。だからこそ、24歳という若さを強みにして、まずは運動量で凌駕するところから始める必要があるだろう。

 クロアチア代表が老獪なのは、ドイツ代表やスペイン代表のようにボール保持にこだわらず、敵を見ながら「ボールを持たせるサッカー」ができること。日本代表はその展開になったら厳しい。象徴的なのが、11月27日のコスタリカ代表戦。自分たちがボールを保持できても、強固な守備ブロックを構築してくる相手を崩しきれず、逆に隙を作って、失点しまうという悪循環に陥りがちだからだ。

●「クロアチアがどう来るかは正直、分かんない」

 最終予選でもそういったシーンが見受けられた。クロアチア代表のズラトコ・ダリッチ監督はサウジアラビアのアル・ヒラルやUAEのアル・アインで指揮を執っていたため、アジアのサッカーへの造詣が深い。昨年9月の最終予選・オマーン代表戦や10月のサウジアラビア代表戦もしっかりチェックし、あえて日本代表に持たせる戦術を選択してくるかもしれない。

 120分走り切れるスタミナと粘り強さを誇るクロアチア代表なら、それでも勝てるという絶対的自信があるに違いない。そこが日本代表にとっては高いハードルになりかねないのだ。

「クロアチアがどう来るかは正直、分かんないですね。やってみないと分からない。ただ、やり方を変えすぎるのはよくないし、コスタリカ戦みたいに90分間の中で変えていくのも1つの案。前半で2-0になることもあるだろうし、そうなったら前回大会の(ロストフの悲劇の)経験を踏まえてやればいいと思います」

 田中碧は状況に応じて個々がブレることなく。的確な判断を下しながら、ゲームを運ぶ重要性を改めて強調していた。

 1998年生まれの彼は覚えていないだろうが、日本はW杯で過去に2度、クロアチアの壁にぶつかっている。

●「今までやってきた結果はひとまず置いといて…」

 最初は初出場した98年フランス大会。日本代表がチャンスを作る場面もあったが、やはり勝敗の分かれ目になったのは、小さなミス。そこからダヴォール・シュケルの決勝点につながってしまった。一瞬の隙を見逃さずに決めきる点取り屋がいるという意味ではアンドレイ・クラマリッチを擁する今回も同じだ。

 2006年ドイツ大会の時はスコアレスドローだったが、日本は宮本恒靖が献上したPKを川口能活が阻止。逆に柳沢敦がこれ以上ない決定機を逃し、勝利をつかみ切れなかった。

 このように、クロアチア代表との勝負の明暗を分けるのはいつも細部。そこにどれだけこだわれるかで、日本代表のベスト8入りの行方が決まると言っていい。

 スペイン代表戦で三笘薫がゴールライン上にコンマ数ミリ残っていたボールを折り返してくれて決勝点を奪った田中碧には「細部にこだわることの重要性」が誰よりもよく分かっているはず。その経験を今回のゲームにも生かしてほしい。

「僕らはやれるんじゃないかというふうに思う。あとはそれを現実にするかどうかだけ。今までやってきた結果はひとまず置いといて、自分たちを信じてやれればいいのかなと思います」

 その言葉通り、日本サッカー界が過去3度跳ね返された8強の壁をこじ開けるためには、しっかりと中盤を制するしかない。ここまでドイツ代表・スぺイン代表に勝利した成功体験を糧に、クロアチア代表との駆け引きに挑めば、今の彼らならやれないことはない。

 自身を「持ってる男」と言う田中碧ならば大仕事をやってのけるはず。ゴールという結果も含め、日本代表に大いなるダイナミズムをもたらしてほしい。

(取材・文:元川悦子【カタール】)

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