クロアチア戦でシュート失敗、南野が改めてPK戦を振り返る
日本代表はカタール・ワールドカップ(W杯)のラウンド16で、クロアチア代表と対戦。120分間を1-1で終えて、迎えたPK戦で1-3と敗れた。日本のPKキッカーの一番手を務めたMF南野拓実(ASモナコ)はシュートコースを読まれてGKドミニク・リヴァコヴィッチに止められて失敗し、流れを作れなかった。
試合後、号泣していた南野はミックスゾーンを無言で通り抜けていたが、一夜明けて「皆さんに申し訳なかった。整理できていなかった部分もあったし、喋ると抑えきれない気持ちがあった」と謝り、改めて取材に応じた。そして、「本当に悔しいのと自分に対しての怒り。励ましてくれたチームメイトの言葉が痛いなっていうか、申し訳ないなって。前を向くことができなかった」と、前夜の心境を語った
PK戦に入る前、森保一監督はキッカーを指名するのではなく、選手たちに立候補を促したという。「PKには自信があった。自信があったから1番か5番を蹴ろうと思っていたが、5秒くらい、誰も手を挙げなかった。『じゃあ、俺が』と言って手を挙げた。でも、結局それでチームに迷惑をかけてしまった。PK戦の流れがある。相手のGKをのせてしまったし、悔しいですね」と、唇をかんだ。
スタンドから見ていても、南野がPKを蹴りに出た時、相手GKが大きく見えた。PKを「運」「ロシアンルーレット」と言う人もいるが、決してそれだけのものではないのではないか。
現在、イングランド1部アーセナルに在籍するDF冨安健洋も、PK戦について「運という意見もあると思います」と言い、数秒の沈黙のあと、「分からないというのが正直なところでありますが、去年のカラバオ杯決勝でリバプールとチェルシーのPK戦をやっていましたが、PK戦ですらちょっと空気が違ったというか、レベルが違ったというふうに見ていて思いました」と話した。ただし、PKの強化については、「毎回リーグ戦でやるわけではないので、難しいところもあると思います」と口にした。
PK戦に最先端技術を用いた強化策、リバプール所属当時を回想
チームとして、PK戦の強化に時間を割くことは「すごく難しい」と南野も同調するが、個々で技術をアップさせることは可能だと考えている。
「代表チームでPK戦になる機会は、あまりない。国際試合とか、大会でしかPK戦はない。現代サッカーだとPKに対しての作戦がいろいろある。GKを見て蹴るのか、助走をするのか、メンタル的なところでルーティンを作るか、作らないか。笛が鳴った瞬間に蹴るのか、いろんなことがある。そういうのを選手各々が、考えながら一番自分の間で蹴れるやり方を身に着ける必要があるかなと思いました」
さらに、2020年から22年まで、世界屈指の名門であるイングランド1部リバプールに所属していた南野は、当時のチームの取り組みを明かした。
「リバプールでは、頭に何かをつけて脳波を図ったりして、笛が鳴った瞬間に蹴るほうがいいか、一呼吸おいてから蹴るほうがいいかというのは、セットプレーのキッカーは、全員がやっていた。そういう最新の科学を取り入れてやるのは、自分のルーティンやパターンを作る良い機会にもなると思う。『なんでそんなところに、そんなお金を使うの』と思うかもしれませんが、今思うと、そういう細かいところが勝負を分けると思った」
2010年の南アフリカ大会、そして今回と4度のうち2度、PK戦でベスト8進出を阻まれている日本。一見、異常にも思えるほど、細部にこだわった強化ができるかが、新しい景色を見るためには必要なのかもしれない。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)