今後の4年間で日本はどの方向へと進むのか

FIFAワールドカップ・カタール大会ラウンド16の全日程が終わり、8強が出揃った。波乱が起きたのは、モロッコ対スペインで、モロッコがPK戦の末、次のステージに駒を進めた。同国が8強入りするのは史上初のことだ。

モロッコに敗れたスペイン、日本に負けてグループステージ敗退となったドイツには共通点があってそれは軸とするスタイルがポゼッションスタイルということだ。ボールの保持率を高めゴールを目指す。モロッコ対スペインでのスペイン側のボール支配率は77%、ドイツ対日本のドイツ側のボール支配率は74%とかなり高いものとなっている。

ポゼッションサッカーの流行りはジョゼップ・グアルディオラが生み出したものであり、EURO2008、W杯・南アフリカ大会、EURO2010を制したスペイン代表の中心にはティキ・タカがあった。

その対極にあるのが、ジョゼ・モウリーニョの守備をベースにしたサッカーだ。モウリーニョがレアル・マドリードを、ペップがバルセロナを率いていた際のエル・クラシコの盛り上がりは凄まじかった。

代表での各チームのスタイルは大まかにポゼッションか守備に分類されることが多く、ドイツやスペインはポゼッション、日本やモロッコは守備をベースにしている。

近年はこの守備のレベルが上がっており、堅守速攻ベースの日本とモロッコが結果を残した。モロッコはベスト8に名を連ねており、次はポルトガルと対戦する。

対するポゼッションベースのドイツとスペインは苦戦。スペインは近年ネガティブトランジションの強化など新たな要素を取り入れていたが、結果は前回大会と同じベスト16敗退となってしまった。

このことからもわかる通り、長くボールを支配してゲームをコントロールするサッカーは下火である。クラブレベルでも同様のことが起きているが、マンチェスター・シティはアーリング・ハーランドを獲得して状況の打破を目指している。クラブと代表での違いは補強できるかどうかであり、もちろん代表ではできない。

「彼らは何もしなかった。彼らはただカウンターの機会を待っていた。彼らは後ろに留まり、カウンターの準備をしていた」

英『Manchester Evening News』ではスペイン代表のロドリが、モロッコの戦い方を批判している。

ロドリはモロッコに対し怒りを見せているが、守備ベースのチームとしては正しい戦い方だ。相手にはハーランドのような絶対的なストライカーはおらず、空中戦はさほど脅威ではない。自陣に引きこもれば地上戦でやられる心配はなく、あとは守備でミスをしないこと、カウンターやセットプレイからゴールを目指すことを重要視すればいい。

日本は現状W杯では守備ベースを基本としているが、年々選手のレベルが上がっており、攻撃ベースにシフトする時がくるかもしれない。代表の長友佑都は攻撃面での改善が必要だと声を挙げており、すでにその時が来たかもしれない。

その際、ドイツやスペインのスタイルを目指してはならない。なぜなら日本にも相手の堅守を真正面から打ち破れるストライカーがいないからだ。三笘薫のストライカー版が今後誕生するかもしれないが、低い可能性には賭けられない。

目指すべきは現状結果を残しているカメレオン型だろう。攻撃も守備もハイレベルに、その場に応じてどちらに重点を置くべきか、試合の中で判断する。フランスがそうで、トップレベルの堅守に、トップレベルの攻撃を持つ。

引く選択肢ができれば失点するリスクも高まるのだが、逆に得点できる可能性は高まる。相手が自陣から離れるからだ。スイスを6-1で撃破したポルトガルの試合が分かりやすく、ハイプレスで出てきた相手をカウンターで打ち破った。ジョアン・フェリックスの個人技で相手の組織を破壊したのだ。

カメレオン型を目指すには選手個々のレベルアップと、即時に判断を下せる監督の手腕が必要になる。選手は日々海外で成長しており、今後は監督の成長も求められることになるだろう。