アメリカ人のサッカージャーナリストであるグラント・ウォール氏が、9日に行われたFIFAワールドカップカタール2022準々決勝オランダ代表vsアルゼンチン代表の取材中に亡くなった。48歳だった。

『ESPN』によると、『ルサイル・スタジアム』の記者席に座っていた同氏は、延長戦の最中に意識を失った模様。現場で緊急医療処置を受け、救急車で近くの総合病院に搬送されたという。死因は公表されていない。

 ウォール氏は今月5日、自身のWebサイトでカタールの医療機関を受診したことを明かしていた。「私の体はついに壊れてしまった。3週間の睡眠不足、ストレス、そして仕事の多さがそうさせるのだろう。この10日間、風邪気味だったのが、アメリカ対オランダ戦の夜にはもっとひどいものになり、胸の上部に新たな圧力と不快感が生じたのを感じた。新型コロナ陽性ではなく(ここで定期的に検査している)、今日診療所に行ったら、おそらく気管支炎だろうと言われた。抗生物質と強力な咳止めシロップを処方され、数時間後にはすでに少し良くなっている。でも、やっぱりダメだ」

 また、8日のポッドキャストでも、再び医療機関を訪れたことを告白。「咳が止まらないんだ。多くのジャーナリストが狂ったような咳をしているように、決して私に限ったことではない。新型コロナの症例はあまり見かけない。一般的な病気、咳、風邪が多く、早く治したいと思っている。でも、準備は万端だ。9日の試合に参加する」とコメントしていたという。

 ウォール氏は1996年から2021年にかけて『Sports Illustrated』で活躍。2012年から2019年にかけては『FOXスポーツ』でも働いた。元イングランド代表MFデイヴィッド・ベッカム氏に関するノンフィクション作品『The Beckham Experiment』を執筆したことでも知られている。

 カタールW杯はウォール氏にとって、男女通じて8度目のW杯取材だった。11月21日に行われたアメリカ代表vsウェールズ代表では、LGBTQIA+の人々を支持するため虹色のTシャツを着用。カタールでは同性愛が法律で禁じられているなか、同氏は警備員に約25分間ほど拘束されたことを自身のTwitterに投稿して話題を呼んでいた。

 先月には、国際スポーツ記者協会と国際サッカー連盟(FIFA)が共催したジャーナリスト・オン・ザ・ポディウムで表彰されたばかり。FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、「彼のサッカーに対する愛は計り知れないものであり、国際的な試合を追いかけるすべての人々が彼の記事を懐かしがることになるでしょう」と追悼のコメントを発表した。

 また、アメリカサッカー連盟もウォール氏の訃報に際して声明を発表し、「USサッカー・ファミリー全体がグラント・ウォール氏の訃報に胸を痛めています。私たちの試合に対する彼の多大なる献身と影響力に改めて感謝申し上げます。彼の文章と物語は生き続けます」と哀悼の意を表した。