ムバッペ含め得点力健在のフランス、メッシ率いるアルゼンチンも調子向上

 カタール・ワールドカップ(W杯)は現地時間12月6日に決勝トーナメント1回戦が終了し、ベスト8が出そろった。全32チームのうち24チームが大会を去り、全64試合のうち56試合が終わった。それでもここからが本番という感もあるクライマックスに向け、勝ち残ったチームをチェックしていきたい。

■オランダ

グループA 1位通過
対セネガル 2-0
対エクアドル 1-1
対カタール 2-0

決勝トーナメント1回戦
対アメリカ 3-1

8得点、2失点

 オランダ代表はエースと目されたFWメンフィス・デパイが負傷を抱えて出遅れる中、グループリーグではFWコーディ・ガクポが3試合連続ゴール。そして、デパイが徐々にコンディションを上げて決勝トーナメント1回戦のアメリカ代表戦で先制ゴールを奪うなど、チームの循環はうまくいっている。

 相手ボールでは5バックに構え、整理された状態から前向きに圧力を掛けてボールを奪い取る。右サイドのDFデンゼル・ダンフリースはアメリカ戦で1ゴール、2アシストと大活躍。大崩れの気配がないオレンジ軍団は、開催国カタール代表と同組だったことからも日程的な優位性も持っている。悲願の初優勝へ、条件は整っている。

■イングランド

グループB 1位通過
対イラン 6-2
対アメリカ 0-0
対ウェールズ 3-0

決勝トーナメント1回戦
対セネガル 3-0

12得点、2失点

 昨年の欧州選手権で準優勝したイングランド代表は、初戦から19歳のMFジュード・ベリンガムの先制ゴールに始まり若手選手たちが躍動。また、FWマーカス・ラッシュフォードとFWブカヨ・サカが3得点ずつで並ぶなど、4試合で12ゴールという強烈な得点力を見せつけている。

 決勝トーナメント1回戦のセネガル戦では、エースFWハリー・ケインにも今大会の初ゴールが生まれてチームに明るい材料がさらに加わった。課題はMFデクラン・ライスへのパスを制限された時に、DFハリー・マグワイアとDFジョン・ストーンズが有効にボールを前進させることができていない点が挙げられるが、この先の戦いは真っ向勝負が増えてくるだけに自然と問題が解決してライスの良さが際立つ場面も出てくるかもしれない。1966年の自国開催以来2回目の優勝を狙っている。

■アルゼンチン

グループC 1位通過
対サウジアラビア 1-2
対メキシコ 2-0
対ポーランド 2-0

決勝トーナメント1回戦
対オーストラリア 2-1

7得点、3失点

 アルゼンチン代表は初戦でサウジアラビア代表に逆転負けして悪い意味で世界を驚かせたが、負ければ敗退決定のメキシコ代表との一戦でFWリオネル・メッシが強烈ミドルを決めてチームが蘇った。ポーランド代表戦からは、4-3-3のセンターFWの位置にメッシをゼロトップ気味に配置することでバランスが整い、安定感が増してきている。それにより、MFエンソ・フェルナンデスやFWフリアン・アルバレスが良さを出す好循環も生まれている。

 決勝トーナメント1回戦でもメッシが先制ゴールを決めるなど、5大会連続出場のエースはチームの大黒柱。今大会が最後のW杯とされるだけに、アルゼンチンのレジェンドである故ディエゴ・マラドーナ氏を中心に世界の頂点に立った1986年メキシコW杯以来の優勝が悲願だ。

■フランス

グループD 1位通過
対オーストラリア 4-1
対デンマーク 2-1
対チュニジア 0-1

決勝トーナメント1回戦
対ポーランド 3-1

9得点、4失点

 前回ロシアW杯の王者フランス代表は、勝ち上がった8チームの中でも最も「個の能力」がフォーカスされるタイプのチームだろう。前回の優勝はMFポール・ポグバ、MFエンゴロ・カンテ、MFブレーズ・マテュイディといった、ボール扱いの巧みなフィジカルエリートに支えられたが、今大会は前線でFWキリアン・ムバッペやFWウスマン・デンベレが明らかな違いを作る。そして、ムバッペが5得点で得点王レースをリードし、FWオリビエ・ジルーも3得点とゴール前で勝負強さを見せている。

 前線の個が強烈すぎるが故に印象は薄いが、全試合で失点しているのも事実だ。チュニジア代表戦ではターンオーバー起用によりチームの機能性が落ちたが、ムバッペを徹底的に抑えに来る相手や、完全にボールを支配されるような展開になった時にどれだけできるか。それでも、3回目の優勝に向けた有力候補なのは間違いない。

日本をPK戦で破ったクロアチアは堅実な戦い、優勝候補ブラジル相手にどう立ち向かうか

■クロアチア

グループF 2位通過
対モロッコ 0-0
対カナダ 4-1
対ベルギー 0-0

決勝トーナメント1回戦
対日本 1-1(PK3-1)

5得点、2失点

 前回ロシアW杯で準優勝のクロアチアは、3戦全敗で敗退したカナダ代表との試合を除き、記録上は全ての試合を引き分けながら8強に残った。グループ2位通過の中では唯一の勝ち残りになっているが、そのしぶとさは日本のサッカーファンが目の当たりにした通りだろう。MFルカ・モドリッチ、MFマテオ・コバチッチ、MFマルセロ・ブロゾビッチのトリオが「黄金の中盤」としてチームのストロングポイントだ。

 前回大会は決勝トーナメント1回戦から準決勝まで全て延長戦かPK戦で生き残った。しぶとく守る能力の高さがあるだけに、FWイバン・ペリシッチやFWアンドレイ・クラマリッチが試合を決めるゴールを奪えるか。準々決勝のブラジル代表は強敵だが、もし延長戦に突入するようならクロアチアのアップセットも起こり得る。

■モロッコ

グループF 1位通過
対クロアチア 0-0
対ベルギー 2-0
対カナダ 2-1

決勝トーナメント1回戦
対スペイン 0-0(PK3-0)

4得点、1失点

 グループリーグのF組で欧州勢のクロアチアと前回3位のベルギー代表の一角崩しに成功。パリ・サンジェルマンのDFアクラフ・ハキミや、バイエルン・ミュンヘンのDFノゼア・マズラウィといった、要所に欧州ビッグクラブでプレーする選手もいるが、ここまで4試合でわずかに1失点の堅実な守備力は特筆すべきもの。決勝トーナメント1回戦でも、スペイン代表を相手にボールを持たれながらも硬さを見せ、それだけでなく速攻で十分に脅威を与えた。

 カタールと同じくアラブ系の国家ということもあり、今大会では多くのサポーターから大声援を受けている。ホームスタジアムのような雰囲気でプレーできていることはチームの力になっているだろう。ベスト8では欧州勢と南米勢以外で唯一の勝ち上がりになったが、それにふさわしい力を見せている。

■ブラジル

グループG 1位通過
対セルビア 2-0
対スイス 1-0
対カメルーン 0-1

決勝トーナメント1回戦
対韓国 4-1

7得点、2失点

 サッカー王国ブラジル代表はグループリーグでは最終戦のカメルーン戦でターンオーバー起用の中で不覚を取ったものの、開幕2試合の内容からも優勝候補の筆頭と名高い。FW登録が9人もいる選手構成が話題にもなったが、その選手たちが相手ボールになった瞬間には素早い切り替えでプレッシングを行う。そして、中盤の中央にはMFカゼミーロがスキのないプレーで鎮座。スイス代表戦では決勝ゴールまで奪った。

 決勝トーナメント1回戦の韓国代表戦では、無慈悲なまでに前半のうちにゴールラッシュで力の差を見せつけて残り時間をコントロールした。初戦で負傷したネイマールが復帰できたのも大きなプラス材料で、2002年日韓W杯以来の優勝で欧州勢の連続優勝を4大会でストップする可能性は十分にありそうだ。

■ポルトガル

グループH 1位通過
対ガーナ 3-2
対ウルグアイ 2-0
対韓国 1-2

決勝トーナメント1回戦
対スイス 6-1

12得点、5失点

 ポルトガル代表は2006年ドイツW杯以来のベスト8進出となったが、イングランド代表と並び4試合で12得点と攻撃力を見せている。一方で、5失点は8チームの中で最多でもあり危なっかしさは垣間見える。

 しかし、決勝トーナメント1回戦のスイス戦でFWクリスティアーノ・ロナウドをスタメンから外す決断を下すと、代わりにスタメン出場した21歳のFWゴンサロ・ラモスがハットトリックの大活躍。ロナウドを外したことで前線からのプレッシングが強度を増した側面もあり、ここからはピッチ外で話題を提供しすぎているスターをベンチの切り札に置いた起用が本線になるだろう。スイス戦の機能性を見れば、初優勝のチャンスもあると言えそうだ。(FOOTBALL ZONE編集部)