「らしくないな……」
 
 カタール・ワールドカップでようやくフランス代表を取材できたポーランド代表とのラウンド16(12月4日)でテオ・エルナンデズを見て、素直にそう思った。
 
 ポジションは同じ左SBながら、攻撃時は常に高い位置を取って半ばウイングと化すミランでのプレーと違い、フランス代表でのテオはバランス重視で攻め上がりをかなり自重していた。
 
 その最も大きな理由は、前方にいる左ウイングのキリアン・エムバペだろう。今大会のエムバペは実質的に守備が免除されているし、攻撃時はこの背番号10にスペースを与えるために左サイドにあまり人を集めないようにチームが調整されていた。テオがオーバーラップを自重しているのは、そんな事情があったはずだ。
 
 テオはそのチームバランスの中で、決して得意とは言えない守備で奮闘。とはいえ、彼の最大の持ち味は攻撃力だ。スピードとパワーが融合したドリブル、正確なクロス、そして豪快なシュートが制限されていることには、個人的にやや寂しさも覚えた。
 

 ただ、イングランド代表を破った準々決勝はポーランド戦(12月10日)と比べて攻撃への比重が上がる。そして、モロッコ代表との準決勝(12月14日)ではついに本領を発揮する。
 
 開始5分だった。アントワーヌ・グリーズマンが右サイドを抜け出して、ゴール前でキリアン・エムバペがシュート。テオはそのこぼれ球をボレーシュートでゴールに叩き込んだ。左SBながら攻撃の局面ではゴール前まで攻め上がってフィニッシュに絡む——。「これぞミランのテオ」という得点だった。
 
 ここ2試合のフランス代表は、攻撃時の配置を微調整してもいた。テオを左サイドの高い位置まで上げ、エムバペが左インサイドレーンにスライドする形で、4-2-3-1が3-4-2-1に可変するのだ。まだドリブルやミドルは少ないものの、これでテオが攻め上がるスペースが少しできた印象だ。
 
 データサイトの『Opta』によれば、今大会におけるテオのチャンスクリエート数は11回。グリーズマンの21回、リオネル・メッシの18回に次いで多い3位タイだ。同じく11回がエムバペとウスマンヌ・デンベレであり、攻め上がりが自重された左SBとしては破格の数字だろう。
 
 アルゼンチン代表と激突する12月18日の決勝でも、テオの攻撃力は必見だ。
 
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

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