サイバーエージェントグループもこのアニメ市場に本格参入した。2024年にアニメ&IP事業本部を立ち上げ、さまざまなIPコンテンツのアニメ化やビジネス展開を推進。サイバーエージェントが主幹事を担った映画『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』では、興行収入14億円を突破しロングランヒットを創出するなど、アニメを起点とした多角的な戦略を展開している。
また新しい未来のテレビ「ABEMA」では、15チャンネル以上(※1)のアニメ専門チャンネルを開設しているほか、人気の新作から国民的作品まで豊富なラインナップの無料放送、声優やタレントを起用したオリジナル番組など、幅広いアニメコンテンツを提供しており、さまざまなジャンルのコンテンツを放送する「ABEMA」全体の中でも人気ジャンルの1つとなっている。アニメ関連の視聴含め映画、グッズ、イベントの購買頻度が非常にアクティブなアニメコア層の視聴者も多く、地上波や主要VODサービスと並んで「アニメ視聴面に不可欠な面」としての地位を確立している。
(※1)2025年10月時点
そんな中、アニメ市場の中でも特にマンガ/電子書籍市場をけん引し続けているコミックシーモアは、「ABEMA」独自の広告コミュニケーション展開に期待を寄せている。圧倒的なマスコンテンツに変貌を遂げたアニメコンテンツの広告活用は急増しているが、両社が組む事でどういった化学反応を起こし、新しい広告・マーケティングが生まれているのか。コミックシーモアのブランディングチームに所属する坂元富士太氏と、ABEMA広告事業の企画プロデューサーである北本充氏に、これまでの取り組みと今後の展望を語ってもらった。
人気声優起用で、ファンから感謝される広告発信を実現
コミックシーモアは業界最大級の作品数を誇り、自社レーベル『シーモアコミックス』のオリジナル作品のアニメ/実写ドラマ化など、メディアミックス展開を自社の中長期構想に置いている。「ABEMA」を活用した広告コミュニケーションにおいては、電子書籍利用・マンガ購買率もアクティブなアニメファン層をターゲットとし、ファンとの中長期的な関係性構築を目的とした『アニメドミナント戦略』を軸として展開している。
中でもコミックシーモアが特に重要視しているのが、『ターゲットの広告に対する意識変化』への適応だ。24時間かけても見切れない情報・コンテンツ量で溢れている昨今、ユーザーは自分が求める情報のみを取捨選択して摂取している。企業からの一方的な情報発信は嫌煙されてしまうこともある。そんな環境の変化を踏まえて「ABEMA」の広告展開では、企画・クリエイティブはエンターテインメント性を最大引き上げ、広告色を極力おさえる「ブランデッドエンターテインメント型」という基本方針で一貫している。
アニメユーザーは、アニメの放送中や放送直後に作品への興味が高まり、原作マンガの購買も検討するケースが多い。その行動特性を生かし、毎クール放送される新作アニメの原作に関する訴求を取り入れながら、「話題のアニメ 原作読むならコミックシーモア」というキャッチコピーを活用したオリジナルCMの制作を継続的に実施。「ABEMA」の広告における「“音声アリ”での視聴完了率が高い」という特性を活用し、声の認知率が高い声優をCMナレーションに起用。田中真弓さんなど人気声優らを起用することで、耳からの認知獲得を最大化した。ユーザーからの反響について、坂元氏は「普通のCMを流した時とは、Xなどでの反応が違いましたね。“聞けば誰でも分かる声”というのはすごく大切で、画面を見ずとも音だけで理解できる点がかなり効果的なクリエイティブだと思いました」と声の認知度の高さによる反響の大きさを実感。北本氏も「ファンの方々から『起用してくれてありがとう』という反響もいただきました。感謝していただける企業広告というのも珍しいですし、引き続きどんなクリエイティブであっても一貫して重要視したいなと思います」と語った。

またコミックシーモアが2018年から主催しているマンガ賞『電子コミック大賞』への新規投票参加者の獲得を目的とし、毎週月曜から日曜まで人気声優がタッグを組んでMCを担当する「ABEMA」オリジナル番組『声優と夜あそび』とのコラボレーションも毎年継続して実施。自身が好きなマンガに投票することで大賞が決まっていく楽しさを視聴者に体験してもらいながら、「オリジナルの妄想マンガを出演者と視聴が共創していく」という参加型のエンタ―テインメント性を創出している。
これら2件の施策に共通しているポイントは、コミックシーモアからの一方的なメッセージ発信ではなく、視聴者を巻き込みながら展開している点だ。コミックシーモアはデジタル世界の中の大きな書店という役割を担っているため、ユーザーがアニメから原作コミック、さらにジャンルを超えた作品の魅力と出会う機会自体を創出することが重要である。書店と作品、そしてユーザーも巻き込んでアニメ・マンガ市場自体の活性化を共創することが、コミックシーモアの支持率向上にも直結した。
「“アニメなら○○”と思われたい」オンライン&オフラインでの複合的な挑戦
また、今年 2回目の開催となった『ABEMAアニメ祭 2025 supported by コミックシーモア』には、コミックシーモアが「スペシャルサポーター」として参画。参画の背景について、坂元氏は「オフラインでイベントに参加するのは、本当にその作品やアニメが好きなコアな人たちだと思います。そしてオンラインとオフラインの両方による複合的な接触の方が、(広告の)パフォーマンスも高いと思います。オフラインでのアプローチはこれまで弊社としてやれていなかったので、そういう機会がいただけたのはすごくありがたいです」とコメント。北本氏は「ABEMAもコミックシーモアさんも、お互いが“アニメ好きユーザーに対してこう思われたい、『アニメなら○○』という連想を取りに行きたい”という目的が一致しており、共創、さらには共闘関係になれたらいいなと思っていました」と、両社の重なる思いを語った。イベント自体の各宣伝施策に乗りながらSNSで多くの拡散が生まれたほか、ブランディング効果としても高い効果を獲得。イベント参加者における「電子書籍の中で一番使いたいサービスは何か」という第一利用意向について、コミックシーモアは全競合サービスの中で2位を記録し、3位以降の競合サービス比較で約194%以上高いスコア結果(※2)を得られた。
(※2)「ABEMA」調べ

話題作から最新作、異世界作品まで幅広くコラボCMを制作―平均の300%超の効果創出の秘訣とは
2025年新規導入を図り、目覚ましい効果創出に至ったのは単独アニメ作品とのコラボCM制作の取り組みだ。2025年 1月クールには、大ヒットとなったTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』とのコラボCM計3本を制作。CMを通して視聴者にどれくらいポジティブな影響を与えることができたかを図るブランドリフト効果比較では、最も高い月で平均値の500%以上(※3)と驚異的な結果を記録。コラボCM内では「もしそのアニメ作品内の日常に、コミックシーモアがあったなら?」というオリジナル設定のもと、コアファンも楽しめるように、アニメ本編の延長線上にあるような内容を作り上げたことで、高い効果が得られたと考えられる。ファンの反応について、坂元氏は「想定以上に反響があり驚きました。社内でも『すごい、さらにこういう取り組みをしていきたい』と好評でした」と当時の驚きを明かした。このコラボCMをきっかけに、コミックシーモアの「もしもアニメ劇場」としての認知が高まり、「次はどのアニメとコラボレーションするのか?」というファンの期待感も高めることに成功。両社が取り組みを継続する大きなきっかけとなった。
(※3)「ABEMA」調べ


(C)BanG Dream! Project
また2025年7月クールに放送され、大人気原作のアニメ化で話題を呼んだ TVアニメ『光が死んだ夏』とのコラボCM制作も実施。主人公のよしきと光との何気ない放課後の会話の中で描かれる「もしもコミックシーモアの話題で盛り上がったら?」という現実世界と交わるような設定に、ファンたちからの支持が集まった。本CMは、同期間に配信した全CMの中で最も高い効果を記録し、平均の300%超えとなるポジティブなブランドリフト効果(※4)を創出。同セグメントでは第一利用意向で競合サービス比較でトップスコアを記録する高い効果が得られた。
(※4)「ABEMA」調べ


(C)モクモクれん/KADOKAWA・「光が死んだ夏」製作委員会
そして同じく2025年7月クールには「異世界ジャンル」作品にも取り組みを広げ、TVアニメ『気絶勇者と暗殺姫』とのコラボCM制作に挑戦した。勇者・トトと3人のヒロイン・ゴア、アネモネ、シエルの主要キャラクターたちが「もしもコミックシーモアの宣伝を託されたら?」という設定の会話劇で計3本のコラボCMを制作実施。ここでもコラボCMが放送・配信されるたびに視聴者からポジティブな反響が集まり、平均の300%を超えるポジティブな効果(※5)を創出した。坂元氏は「広告は時に邪魔と感じられることもあるかもしれないですが、今回のように視聴者に純粋にコラボCMの内容を楽しんでもらい、さらに感想を発信していただけているところは、非常に面白いと思います」と語り、さらに、「コミックシーモアとコラボCMを制作していることが、アニメ作品側にとって1つの価値になるぐらい頑張りたい」と業界における新たな目標も明かした。
(※5)「ABEMA」調べ


(C)のりしろちゃん・雪田幸路(秋田書店)/「気絶勇者と暗殺姫」製作委員会
今後は、ジャンルを超えたさらなる発展に期待
坂元氏はこれまでの「ABEMA」とのさまざまな取り組みを振り返り、「ABEMAさんからは日々『こういうこともできる』というご提案をたくさんいただいています。だからこそ、年間を見据えての長期的なご相談がしやすいです。点ではなく継続する施策をご提案してくださるのが非常にありがたく思っています。アニメ、声優、イベントなど複合的な見せ方ができる点がすごく強いと感じていますね」と、「ABEMA」の強みを語った。さらに今後の可能性として「ABEMAはアニメ以外に野球やサッカーなどスポーツコンテンツやドラマ、恋愛リアリティーショーなども豊富なので、拡張や発展できるジャンルがあれば面白いなと思っています」と、ジャンルを超えた取り組みにも期待感を寄せた。さらに北本氏も「広告コミュニケーションは従来の広く告げるという形態から、熱狂的なファンダムとの関り合いをどう深めるか?という変化が重要な時代になっています。まずはそれぞれのファンダムの輪にどうしたら入れてもらえるのか?から解決する必要性がありますが、様々なエンタメコンテンツを日々発信しているABEMAだからこそ熟知しているその術をもって更に戦略進化&企画推進を図りたいと思っています。」と、のさらなる連携拡大を見据えながら展望を語った。
この情報過多な時代において、一方的な広告発信ではなく、広告主、メディア、アニメ作品に関わる出版社、制作委員会、クリエイターが共通のゴールに対して共創&共闘関係となり、コンテンツのファンに最大楽しんでもらえるコミュニケーションを取っていくことが重要である。コミックシーモアと「ABEMA」が紡ぐ『共創型マンガマーケティング』に引き続き注目だ。
話者プロフィール
■坂元 富士太
NTTソルマーレ株式会社 電子書籍事業部 マーケティンググループ チーフプロデューサー
NTTソルマーレが展開する国内最大級の総合電子書籍ストア「コミックシーモア」のブランディングチームでCMタレントやアニメ化作品などを軸としたWEBCMの企画・制作を担当。
■北本 充
株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 企画プロデューサー
2009年サイバーエージェント入社。これまでクリエイティブ企画、アカウントプランナー、ストラテジックプランナーを経験。現在企画プロデューサーとして、広告とエンタメの融合=「BRANDED ENTERTAINMENT」を軸に戦略立案から企画・制作プロデュースを務める。
「ABEMA」はテレビのイノベーションを目指し"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業。
ニュースや恋愛番組、アニメ、スポーツなど多彩なジャンルの約25チャンネルを24時間365日放送。CM配信から企画まで、プロモーションの目的に応じて多様な広告メニューを展開しています。
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