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◆キリン48年の思い なぜサッカーなのか?CSVと「絆」を深める価値共創活動

―キリングループはサッカー日本代表を、長年応援されています。「キリンとサッカー」は深く関わっているように見えますが、これはどのような形で生まれたのでしょうか。 

井上氏 キリンが1978年からサッカー日本代表を応援するようになって今年で48年目になりました。なぜ48年も応援し続けているのかと一言で言えば、それは「日本中をサッカーの力を通じて笑顔にしたいから」です。サッカーにはボール一つで人と人をつなぎ、人を笑顔にする力があります。そのサッカーの力を使って、日本中を笑顔にできればと思います。 

 軸として日本代表の応援と価値共創活動という、大きく2つのことを行っています。SAMURAI BLUE(日本代表)や、なでしこジャパン(日本女子代表)だけではなく、アンダーカテゴリー日本代表、障がい者サッカーの日本代表、フットサル、さらにはeサッカーなど、本当にフルカテゴリーで応援しています。価値共創活動とは、サッカーを通じた社会課題解決活動で、人の絆が希薄になっていることに対して、家族みんなでサッカーをすることで絆を深める「ファミリーチャレンジカップ」というイベントや、サッカーを通じての復興応援活動もあります。最近でも能登半島地震の被災者のみなさんに、サッカーで笑顔を届ける活動をしています。 

―スポーツだけでも多数ある中で、なぜサッカーなのでしょうか。 

井上氏 やはりサッカーの持つ力の大きさですね。サッカーはボール一つあればみんながつながれてルールも簡単です。共感しやすく、本当に世界的なスポーツだからこそ、日本のみなさんを笑顔にできるものだと考えています。 

 日本代表の応援を始めた1978年は、当時の日本では今ほどサッカー人気がなく、大会に協賛しても全然観客が入らないなんていうこともありました。今でこそワールドカップに8大会連続で出場していますが、なかなか出場できない時期も長かったです。キリンもサッカーも、いい時も悪い時も共に歩み続けた唯一無二のパートナーという気がしており、一緒に冬の時代を乗り越えてきたというのは、大切な歴史だと思っています。次回の大会も最高の景色を見るために、日本中のみなさんを巻き込みながら応援していきたいと思います。 

―サッカーの裾野を広げつつ、かつ人の絆も生むキリンファミリーチャレンジカップについて、もう少しお聞かせいただけますか。 

井上氏 特にコロナ禍以降の話になりますが、SNS上でつながる機会が増える中で、逆にリアルでつながることがすごく希薄になりました。それは同じ家で暮らしている家族であってもそう感じます。その絆の希薄さに対して、サッカーを通じて家族や地域の人とつながることで、笑顔が広がり人生も幸せになるのではという思いで開催しています。 

 ファミリーチャレンジカップは、ウォーキングフットボールという歩いて行うサッカーのイベントです。だからこそ性別や年齢、サッカー経験の有無も関係なく、0歳児の赤ちゃんを抱っこしながら歩いたり、車椅子のおばあちゃんや、90歳の方が参加されるなど、老若男女が一つになれるのもまたサッカーの魅力だと思います。 

◆一方通行ではないコミュニケーションを デジタル配信で若年層に活動を届ける狙い 

―10月のキリンチャレンジカップでは、ABEMAで放送冠をつけるという形で試合が中継されました。地上波だけでなく、今回デジタルメディアのABEMAを使うことで、期待した役割などをご説明願います。 

友岡氏 大前提として、地上波では届きにくくなってしまっている若年層をメインとした幅広い層に、日本代表の応援だけでなくファミリーチャレンジカップのような社会活動をしていることを届けたい、という点に一番期待をしました。地上波で放送することももちろんすごく大切です。ただABEMAさんのような動画媒体も一緒に実施していくことには、すごく意味があると思っていました。ABEMAさんは、サッカーだけではなく、スポーツ全体にも力を入れている特性も含めて生かせるといいなと考えました。地上波以外で、このような取り組みをするのは本当に初の試みだったので、大きなチャレンジができたかなと思っています。 

 地上波にしっかりと決まったフォーマットがある中では、どうしても露出しきれない、言い切れない部分があるとは思っています。今回で言えばハーフタイムで流している勝利のハチマキの訴求やブースの紹介も、単に紹介するだけではなく、ABEMAさんでは出演者の方が実際にハチマキを巻いて応援する姿を見せることができました。ファミリーチャレンジカップではABEMAさんに、実際に現地まで取材に来ていただき、その様子を試合後に放送しました。その点でも、すごく親和性を伝えることができました。 

―ABEMAで中継したからこそ感じられたものなどはありましたか。 

友岡氏 試合中ですと、やはり視聴者の方のコメントですよね。XなどSNSで発信することでの広がりはあるのですが、実際の映像の横でコメントが見えるところもよかったですし、ABEMAさんならではの画角であるマルチアングル(視点切り替え)で放送をしてもらえたところも、すごく大きいものでした。 

 10月のブラジル戦で勝利した時は、本当にものすごい盛り上がりでした。コメントでも「キリンさん、JFA(公益財団法人日本サッカー協会)さん、こんな場を作ってくれてありがとう!」というような声がナチュラルに出ていくのを体感しました。先ほどもお話が出たファミリーチャレンジカップの映像でも「90歳のおばあちゃんもサッカーしてるの!?すごい!」というコメントもたくさん見られました。実際にはなかなかそういう声は聞けないので、すごくいい機会になりました。 

井上氏 今、若年層にどうリーチさせるか我々もすごく悩んでいる中で、今回その層に伝えられたのはよかったと思います。 

 また、特によかったなと思うのは企業からのメッセージが一方的な発信にならず、あからさまな広告感がなかったことだと思います。たとえば今回は解説の方が勝利のハチマキを巻いてくださったり、企業へのコメントを自分の言葉で発話してくださったところは、その方の感想という形でお客様の心に届いたのではと思っています。 

 また広告についても「Live Screen Ad」という手法も展開していただきました。ハーフタイムなど試合が切れたタイミングで訴求するのではなく、試合中というお客様の気持ちがすごく高まっているタイミングで、そのモーメントを捉えられるというところは、すごくよかったなと思います。特に今回は、ファミリーチャレンジカップもブラジルに勝った直後に放送できたことで「やっぱりサッカーっていいよね」という気持ちが盛り上がったタイミングでご紹介いただけたのが、すごくよかったです。 

 また、友岡さんも言ってくださったこともすごく大事で、一方的に見ているだけではなく、みんなが参加したい気持ち、そこに入っているという気持ち、体験がすごく大事です。試合中にコメントが打てて、そのコメントに対して誰かがまた被せてくるというように、みんなバラバラの場所にいてもつながっていける、そういう機会が生まれたのはABEMAさんならではだと感じました。 

◆「切り抜き動画」に「独自取材」ABEMAの特性を生かした施策の数々

友岡氏 SNS投稿による「切り抜き動画」の施策も、かなり工夫してやっていただけたと感じています。キリンさんによる直接的な施策というよりは、施策にキリンさんがついているという形で、とても上手く切り抜いて見せていただけました。 

―放送媒体であるABEMAとして、今回の放送冠に際し、どんなことを提案し実施したかご説明をお願いします。 

伊藤氏 一例としては試合の中継だけでなく、ABEMAのスポーツ情報番組「ABEMAスポーツタイム」でもファミリーチャレンジカップの露出を行いました。中継内だけにとどまらず、いろいろな施策が打てるのがABEMAならではだと思いますしクライアント様、今回であればキリンさんに合わせてこんなこともできるのではと自由に考えながらご提案できる座組み、仕組みそのものもABEMAらしさなので、今回一緒にお取り組みができてすごくありがたい機会でした。 

―ABEMAとしては、過去にも国際的なサッカーイベントを配信したという実績がありました。 

伊藤氏 キリンさんと同じように、とまで言えませんが、ABEMAでも2022年のカタールワールドカップ以降も、全てではないですが日本代表戦を配信したり、なでしこジャパンやアンダー世代の試合も、可能な限り権利を取得して配信をしています。一緒にサッカーを育てていく点でご一緒させていただいているので、今回このタイミングですごくいい試合をキリンさんとご一緒させてもらったのはすごくありがたかったです。ABEMAとしてもサッカーに継続的に取り組んできた姿勢を、少しでもお伝えできたのであれば嬉しいです 

友岡氏 視聴者のみなさんの中で「ABEMA=サッカー」というものが根付いているという感覚はすごくありましたね。 

―デジタルメディアならではの施策としては「切り抜き動画」も欠かせないものになっていますが、過去の施策の経験値も踏まえ、今回はどのような展開になりましたか。 

伊藤氏 SNSをよく見る世代がABEMAのユーザーには多いので、ABEMA的にも力を入れています。これまでの取り組みを通じて、どういった切り抜きが届きやすいかについて一定の知見は蓄積されてきました。それによってリーチも広がりましたし、すごく盛り上がった試合だったという前提はありつつも、ハイライト動画などもかなり見ていただけました。 

 また、ABEMAでは、事後だけでなく事前の盛り上げにも力を入れてきました。試合の中継を見ていただくために、いろいろなABEMA内の面や社外メディアを使ってABEMA中継に触れてもらう施策を展開しました。例えば、ABEMAアプリのランディングジャックやホーム面でのバナー掲出、各種SNS面での見どころ発信などを実施しました。当日には、「Home Sponsored」という、ABEMAのホーム画面ファーストビューに動画広告を掲載できるメニューを使い、キリンさんのサッカー訴求CMの配信も行いました。 

◆デジタルメディアの活用でさらなる広がりを

―今回、デジタルメディアの放送冠によって得られた様々な知見を元に、今後もサッカーによる社会貢献活動を進められていくことと思います。今後の展望について、何かビジョンなどありましたらお願いします。 

井上氏 キリンとしては引き続きサッカーを通じてキリンへの共感といいますか、お客様から「キリンっていいね」と言っていただきたいと思っている中で、取り組みをより多くの方に知っていただきたいです。一度の番組や試合に留まることなく、様々な番組と連動をしていくこともすごくいい策だと思います。 

 今回ご提案いただいた中で実現できなかった企画もありましたが、実現できれば普段サッカーに全く興味がない方々が、サッカーを知るきっかけになれたと思います。今まで、どうしてもサッカーに興味がある人ばかりに向けての発信になっていましたが、サッカーの魅力やキリンの取り組みを、ABEMAさんとであればまだ知らない方に興味を持ってもらう、新しいきっかけを作れると思っているので、今後も新しいチャレンジをしていきたいですし、そういうご提案もぜひいただきたいです。 

友岡氏 やはりまず、キリンさんの取り組みをみなさんに知っていただき、その上で企業としてのブランド価値向上にもしっかりつなげていきたいという前提があります。繰り返しにもなりますが、ファミリーチャレンジカップは、お年寄りから小さいお子さんまで、いろいろな家族の笑顔が見られる、とてもいい取り組みなのですが、これまでのメディアでは伝えきれていませんでした。その部分をABEMAさんに第三者という立場から押し付けではない形で取り上げていただけました。 

 若年層にしっかり届いているところ、ABEMA=サッカーというイメージが浸透し、親和性があったからということもありましたが、それ以上に柔軟で機動力のあるABEMAさん目線で取材をしてもらい、それを発信してもらったことには、大きな意味があったと感じています。 

 またキリンさんがなぜサッカー日本代表を応援しているのか、ファミリーチャレンジカップってなんだろうと視聴者の方が思われた時に、従来のメディアだとその導線がなかったところ、デジタルメディアだからこそ、すぐにキリンさんのオウンドサイトにも移行してもらえました。導線が広がっていく、間口が広がっていくところはデジタルメディアならではの大きなポイントだと思っているので、この知見をもとにさらに新しい取り組みをしていきたいと思っています。 

―ご意見を踏まえ、ABEMAとしてどう取り組んでいくかをお願いします。 

伊藤氏 柔軟に企画を組み立てられる点が、ABEMAの特徴の一つだと思っています。「ABEMAでこういうことをしたい」、「こういう見せ方をしたい」と、これまでとは異なる切り口で取り組みたいというご相談をいただいた際に、それをどう反映していくかをご提案させていただくのが我々の役割です。中継に留まらず、またスポーツ番組でなくてもバラエティ番組やその他の若年層向け番組と一緒に取り組むこともできますので、そこは次回チャレンジさせていただきたいと思っています。 

 また、広告テクノロジーを活用した、新たな広告商品の開発も進めているので、スポーツ中継にマッチしたものが出てくれば、ぜひご提案させていただきたいと考えています。 

―ありがとうございました。 

◆井上剛輔 

キリンホールディングス株式会社 マーケティング戦略部 

2008年キリンビール株式会社に入社。量販営業・チューハイブランドのマーケティング業務を経て、2023年4月よりサッカー担当に。SAMURAI BLUEやなでしこジャパンなどサッカー日本代表の応援や、サッカーを通じた社会課題解決活動などに取り組む。  

◆友岡由依 

株式会社電通 第3ビジネスプロデュース局ビジネスプロデューサー 

2015年に株式会社電通新卒入社。 ラジオテレビ局にてローカル局・BSメディア、スポット担当を経て、 2021年より第3ビジネスプロデュース局にて、飲料メーカ―を担当する傍ら、サッカー関連事業にも携わる。 

◆伊藤理紗子 

株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 営業局 プランナー 

2022年10月 サイバーエージェント中途入社。2025年3月にAbemaTVに出向。 現在は「ABEMA」のセールス部門にて動画広告のアカウントプランナーを務める。 

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