子どもの選択が尊重される時代に合わせて求められた“変化”

―進研ゼミ高校講座は、家庭学習向けの通信教育で、これまで10代の若年層とその親の両方を念頭においたマーケティング活動をされてきたと思いますが、近年、親子にまつわる消費行動において、何か変化を感じられたことはありましたか。
 
椿綾音氏(以下、椿氏) 以前と比べてより一層、子供の意思を尊重する家庭が増えている印象があります。

 勉強の面で言いますと、今の高校生の親御さんの多くは“勉強して良い大学に行けば幸せになれる”という教育を受けてきた世代だと思いますが、実際の就職のタイミングではバブル崩壊後の就職氷河期を経験された人も多いと思います。そのため、自分の子供に対して“勉強が全てではないよ”だったり、“自分の好きなことをやって欲しい”という教育方針を掲げる傾向が強いように思います。自分が子供の時にこうだったらよかったな、という思いから、のびのびと育てるご家庭が多い印象です。

 ですので、塾や通信教育サービスの利用についても“成績が下がっているから使ってみたら?”という親御さんの関与は今も一定数あると思いますが、最終の意思決定は子供の意思が強く尊重されるように変わってきていると思います。
 
 加えて感じるのは、生き方や幸せの形が多様化し進路の選択肢が増えたということです。子どもの好きなこととか得意なこととかをしっかり伸ばしていってほしいっていうような親御さんの思いが年々大きくなってきていることも、子どもの意思の尊重につながっている気がします。
 
―進研ゼミ高校講座がリニューアルされたのはそういった時代背景も理由としてあったのでしょうか?

椿氏 そうですね。以前は行きたい大学に合わせて必要な教材をご用意し、着実に取り組めば大学合格に近づく、という商品だったのですが、生き方や進路が多様化してきたことでどんな学び方をしている学生さんにも助けになるようなものに変える必要があり、大規模リニューアルをいたしました。

―マーケティングについてもリニューアル前後で変化をさせたのでしょうか?

椿氏 はい。リニューアル前までの進研ゼミのマーケティングはダイレクトメールをメインチャネルにアプローチを行ってきましたが、リニューアル後はまずこの新しい高校講座を使っていただく高校生の方々に“いけてるじゃん”と思ってもらいたいという気持ちから、SNSや高校生が日頃から使っているメディアでの接点を重視する方針転換を行いました。

 また、進研ゼミという言葉自体はありがたいことに多くの方が知ってくださっているのですが、一方で進研ゼミ高校講座の指名検索数の減少はここ数年の課題でした。そんな中で今回のリニューアルを伝える際に、今の時代は企業が「変わりました」とメッセージを投げかけるよりも、第三者の方に「こんな風に変わったみたいだよ」と語っていただく方が、お客さまのリアルな生活に溶け込み自分事化してくれるのではないかと思いました。そこで、今の高校生のみんなが見ているのは『今日好き』だと考え、ABEMAさんにお声がけをさせていただきました。

インパクトと機能訴求の情報量バランスにこだわり、課題だった「指名検索」にもポジティブな成果が

―リニューアルの背景を踏まえて行われたCM制作では、どのようなことを意識されたのでしょうか。
 
斉藤広憲氏(以下、斉藤氏) このプロジェクトの動き出しから椿さんをはじめベネッセさんと何度も打ち合わせを重ね、CM制作の監督も撮影前から巻き込ませていただきました。

 そして浮かび上がった「ReBorn(リボーン)」という大枠のテーマのもとで進研ゼミ高校講座がリニューアルしたことを簡潔に伝えるとともに、第一弾CMでは今井環希さん、第二弾では相塲星音さん(いずれも「今日好き」参加者)に出演いただき、「神だよなぁ!」という決めフレーズに合わせて爆発演出を加えるなど、映像として“インパクトを残す”ことを念頭に置きました。

椿氏 一番こだわったのは、インパクトを出す部分としっかりと機能訴求していく情報量のバランスです。インパクトを強くすればリニューアルしたことは伝わりますが、“気になるから調べてみよう”という次のアクションに繋がらない、つまり指名検索が落ちている現状を変えることはできません。

 一方で、機能訴求をモリモリと盛り込むと、どうしても難しい言葉が並びますし、真面目な雰囲気に仕上がり、インパクトも薄まります。インパクトに固執し過ぎず、中身もしっかり伝えるこのバランスにはとても気を使いました。

―その結果、施策実施後の調査では、ブランド認知が81.2%→96.8%と15ポイント向上、ブランド利用意向については27.8%→62.9%と35ポイントも向上したそうですね。

椿氏 YouTubeやInstagramなどの動画広告で、様々なブランドリフトサーベイを行ってきましたが、今回のような上昇率は初めて見ました。間違いなく成功した施策だと言えると思います。

 プロダクト理解の調査項目でも、「AIを用いたデジタル学習で、24時間いつでも疑問を解決できること」と「定期テストに強いサービスであること」という2つの機能訴求がしっかりと伝わっていたことがわかりました。リニューアルしたばかりのサービス内容がしっかりと伝わるCMを制作でき、それが不特定多数に向けたマスメディアの広告で行えたことは、非常に有意義なことだったと感じています。

 社内評価もとても良かったです。第一弾のCMが流れた当日には、TikTokにあったトレンドタブで「進研ゼミ高校講座」の名前が上がり、瞬間風速的ではありますが、課題としてあった指名検索にもポジティブな成果が出ました。また、進研ゼミ高校講座のブランドサイトへの指名検索流入も5年ぶりに右肩上がりに伸びる結果となりました。全社会義でもCMを流し、弊社社長にも、「すごく良いね」とお褒めの言葉をいただきました。

 繰り返しになりますが、インパクトと機能訴求のバランスにこだわり続けたことが大きな成果に繋がったと思っています。今後作っていくCMに関しても、機能訴求をどうやってエンタメに昇華し盛り込んでいくのかが肝になりそうです。今回この塩梅を学べたことは、私にとっても大きな知見となりました。

斉藤氏 当初は椿さんと打ち合わせする中で、“第一想起を取りに行く”ということ、“それが結果的に指名検索に繋がればいいね”とお話しをさせていただいており、そこに関して、道中もぶれることはありませんでした。今回の調査結果はそこにつながるものだと思いますし、ABEMAとして一貫してそこに対してコミットできたと考えております。

―ニュースとしても多く取り上げられたと聞いています。

斉藤氏 今回の取り組みをPR TIMESで配信いただいたのですが、そこから各媒体に情報を引っ張っていただいて、最終的に転載含め96媒体にニュースとして掲載いただきました。

 「今日好き」という番組や参加者に対する人気・注目度に加え、ベネッセ様がこういうCMを作ったという話題性が組み合わさるとこんなにも拡散力が強くなるんだなと実感できました。

若者の感覚を謙虚に学びに取り繕わないことを大切にしたい

―『今日好き』とのタイアップCMは今後も継続されると聞いています。この先でさらに期待していること、今後チャレンジしていきたいことを教えてください。

椿氏 第一弾の成果が大きすぎたことで正直ハードルが上がっていると感じています(笑)。続けていくということは、見る人に飽きられる可能性も秘めています。ただ、進研ゼミというブランドは世間の中で真面目というイメージがある中、今回のようなチャレンジングなCMを打ち出すことで、お客さまに注目していただけました。これをしっかりスケールさせる方向に持っていかなくてはなりません。

斉藤氏 第2弾のCMもありがたいことにポジティブなお声をいただいておりますが、椿さんが仰る通り、この先も同じようなCMを作り続けてしまうと、マンネリを感じるようになってしまいます。「神だよなぁ!」というフレーズは活かしつつも、言い方を変えてみるか、演出を変えてみるのか――。様々なケースが考えられますが、しっかりと議論をしながら最良のCMを生み出していきたいですね。

―最後に、今回の施策やこれまでの経験を踏まえ、若年層にブランドを伝える際にはどういうことをケアすべきだと思われますか?

椿氏 1つは自分の感覚を正しいと思わないようにしています。ちゃんと高校生の話を聞いて、SNSを見て、今の若者ってこういう考え方をするんだ、と、ありのままをちゃんと学ぶ姿勢を謙虚に持ち続けることが重要だと思います。

 もう1つは取り繕うことをしないようにしています。今の中学生・高校生は広告というビジネスの仕組みもわかったうえでコンテンツとして消費をしていますので、変に取り繕うとか綺麗に見せようとしたものは気づかれ、秒で弾かれてしまいます。嘘がないことが若者の心を掴み、広告でもコンテンツとして楽しんでくれると思うので、これからもそこは大切にしたいと思っています。

―ありがとうございました。

◆椿綾音

株式会社ベネッセコーポレーション 横断マーケティング本部 高校生統合マーケティング部 統合マーケティング課
2021年 新卒入社。現在は、進研ゼミ中学講座・高校講座の新規販売領域におけるマス・SNSマーケティング全体を担当。

◆斉藤広憲

株式会社AbemaTV Business Development Division 営業局 プランナー
2025年、株式会社AbemaTVに中途入社。現在は、オリジナルCM制作や番組タイアップ企画などABEMA広告企画を担当。

「ABEMA」はテレビのイノベーションを目指し"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業。

ニュースや恋愛番組、アニメ、スポーツなど多彩なジャンルの約25チャンネルを24時間365日放送。CM配信から企画まで、プロモーションの目的に応じて多様な広告メニューを展開しています。

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