人気カミソリブランドのSchick(シック)が、Z世代向けの新ブランド「Schick FIRST TOKYO(シックファースト トーキョー)」で大きな挑戦に打って出た。2024年8月のローンチ時、認知獲得には成功したものの、Z世代には「自分向けの製品」として十分に認識されない課題が浮き彫りとなった。情報の取捨選択がシビアな世代に対し、いかにしてパーセプションチェンジを促すか。その突破口となったのが、ABEMAの超人気オリジナル恋愛リアリティーショー『今日、好きになりました。』(以下『今日好き』)とのタイアップだ。本プロジェクトでは『今日好き』の世界観そのまま、リアルな悩みを描く文脈作りを徹底。結果売上は施策前比で約25%アップ、店頭での若年男性の購入比率向上という成果を叩き出した。なぜ、この施策はZ世代の心を動かしたのか。シック・ジャパン株式会社の大網太郎氏、松本典子氏、そして株式会社AbemaTVの杦野莉鈴氏に話を聞いた。

大事なことは、彼らの日常的な文脈に沿って商品を届けること
―今回のターゲットであるZ世代に対し、ブランドとしてどのような課題をお持ちでしたか?
大網氏 Schickはカミソリの会社ではなく、”Make Beauty Grooming Joyful”、ビューティ グルーミングを通して、一人でも多くのお客様にワクワクと幸せを感じてもらえる毎日を届けることを掲げています。シェーバーも考え方を変えると、髭を剃るだけではなく、髭を剃ることで綺麗になれる「ビューティツール」になると思っています。その理念のもと、いろいろな世代の人たちにシェーバーやシェービングの肌をケアする製品を届けており、もちろん若い人たちもターゲットです。
主流となっているマーケットは5枚刃などですが、実は若い世代は髭が柔らかかったりするので、5枚刀はややオーバースペックだと言われています。また今までのシェーバーのイメージは黒やシルバーが多くメカっぽいイメージがあり、今の若い人からすると「上の世代に見える」「自分向けじゃないかも」と思われたりもしていました。
そこで若年層、いわゆるZ世代に向けて考えたシェーバーが必要だと思いローンチしたのが、今回の「Schick FIRST」です。セーフティワイヤーという技術を搭載した4枚刃など、やさしく剃れることにこだわった製品仕様にしたとともに、シェーバー本体にファッション性を持たせ、パッケージも従来と同じような紙箱ではなく透明パウチにするなど、もっと自分向けと思ってもらえるように工夫しました。

松本氏 この商品をローンチしたのは2024年8月なのですが、プロモーションに有名なグループを起用したことでブランドの認知度は大きく上がりました。若年層の中で「Schick First」ブランドのイメージは良化し、特に「肌にやさしい」「オシャレ」「肌を美しくしてくれる」といった項目は大きく向上しました。ただいろんな調査をしていく中で、製品を「知っている」だけで留まってしまい、製品機能の理解やそれが自分にとって必要だという認識まで醸成しきれなかったという課題が残りました。Z世代は、自分に関係のあるものだと思ってくれないとその段階で情報をシャットアウトしてしまう世代です。なので、彼らの日常的な文脈に沿って商品を届けることがすごく重要だと思いました。
『今日好き』で男性向けの商品は初!心掛けたのは「違和感なく無関心にならないような作り」
―それらの問題を解決するために、いわゆるインサイトを見つける糸口はどのように見つけられましたか。
大網氏 ローンチ後に、商品を購入していただいた方々にデプスインタビュー(調査対象者とインタビュアーが対話する調査手法)を行い、その結果をインサイトに反映させました。当時は2025年の春だったので、発売して半年弱経っている頃です。手に取ってくださっている方々は比較的アーリーアダプターの人たちですので、製品の魅力にいち早く気づいて購入してくださっています。そういう人たちにインタビューをすることで、製品として押すべきポイントや課題が見つかると思い、それを次の課題に反映させていこうと考えました。その調査の中で「自分は産毛だと思っていたけれど彼女に髭と指摘されて剃り始めた」といった声があり、確かに人から言われて気づく…というのは、重要なポイントだと思いました。あくまで一例ではあるのですが、そういったリアルな声をいくつかピックアップしていきました。買ってくださった方も本当に一部なので、引っかかってくれた部分をいかに広げていくか。広告でよりそのポイントを伝えていけば、刺さる人のボリュームも増えます。それを届けていくには、リアリティーのあるコンテンツとタイアップし、若年層にとって等身大に感じられる方に出演・代弁いただくことでさらにインパクトが出せると考えた時に、『今日好き』とのタイアップがアイデアとして上がりました。
松本氏 今、若年層に共通で刺さるコンテンツは数少ないと思います。そんななか、『今日好き』は若年層に人気があり、共通の話題になるコンテンツだと思います。タレントさんを使うことで認知は取れますが、高いエンゲージメントとなると、やはりインフルエンサーの力が強いと思っていて、「有名な方が宣伝しているから買う」というマインドではなく、自分が信頼している人が良いと思う商品なら買うという世代です。『今日好き』は若年層の中でも非常に認知度の高いコンテンツですし、相性がいいのではないかと思いました。
―そういった要望を聞いた中で、『今日好き』でどういうことを表現されようとしたのか、教えていただけますか。
杦野氏 若い世代への広告は「ちゃんとあなた向けですよ」と伝えてあげないと記憶に残りづらいというのがあります。今回背景を伺った上で、『今日好き』はそういった点で相性がいいと思いました。実は『今日好き』で男性向けの商品、また男性キャストがメインのPRは初めてでした。なので、自分向けと思ってもらえるように、クリエイティブな面ではかなりこだわりました。また従来のような「エモさで共感醸成をするドラマ風CM」にとどまらず、商品の魅力(機能)と番組の世界観を両立させる制作パターンにも挑戦しました。

『今日好き』に参加しているメンバーたちは地上波でも活躍する有名タレントさんほどパワーが大きいわけではないのですが、それぞれの個性があり、またインフルエンサーの集合体のような強さもあります。なので、広告に出演した男子たちのバックグラウンドや「この子だったらこういうことを言いそうだな」のような細かいところまで加味してセリフに反映させたほか、『今日好き』放送中に流れるCMなので、観ている人たちにも違和感なく、無関心にならないような作りを心がけました。大事なことは、彼らの日常的な「等身大の姿」を切り取り、産毛ケアなどのリアルな悩みを描くことで、「自分たちの悩みを解決してくれるもの」として自然に伝わり、没入できることです。また、製品が本当に自分たち向けだと感じてもらうために、男子メンバーたちに使用感想動画(Testimonial動画)も制作しました。本当に自然な感想を言ってもらいたかったので、男子メンバーには製品の話を細かくせずに撮影に臨んでもらうことで、本人たちのリアルな反応を映像に収めることができました。

売上は施策前比で約25%アップを記録、サイト流入数も最大で約20倍というポジティブな結果に
―実際にご覧になられて、どのような感想をお持ちになったかお聞きしてもいいですか。
大網氏 仮編集の動画が上がってきた時に「これだったら売れる」と思いました。没入感もあるし、我々が今回伝えたいと思っていることがうまく表現されていました。 製品機能の話をすると、どうしても説明的な話になり「見たい」とはあまりならないのですが、それが良い意味でうまく抑えられていて、でもちゃんと伝わる。本当にクリエイティブの妙だなと思っています。ABEMAチームと、今回制作代理店として入っていただいているkiCkさん含め、非常にいいチーム体制が取れたと思っています。
松本氏 番組コンテンツに乗せると不自然になってしまうことが多いのですが、このコンテンツに関しては、広告ではあるんですけど、ちゃんと『今日好き』の文脈というか良さを生かしながら商品の説明もしっかりとしている。広告臭くない、うるさくない感じに仕上げていただけたので、若年層にとってもすごく見やすい広告になったなと思っています。
―では、手応えがあった中で、実際の売り上げの数字や反応を具体的にお聞きしてもよろしいですか。
大網氏 売り上げに関しては、施策前と比べて初速は非常に良い結果がでました。特にCMの製品に関しては、売上は施策前比で約25%アップを記録し非常にポジティブな効果がでたと思っています。 今回、キービジュアルを全国のドラッグストアの店舗で掲示したのですが、そこでもプラスの効果があったと思っています。シェーバーのコーナーは、先ほども申した通り、ちょっとゴツゴツとした男っぽいイメージがあるのですが、そのイメージも変わって「自分向けの製品かも」と若い人に思っていただけるようなワクワクする売り場が作れたと思っています。小売店様からの反応も良く、若年層をターゲットにしていることや、『今日好き』自体のコンテンツパワーに期待していただいて、ポジティブに受け止めてもらうことができました。また広告と連動して、店頭においても数千店舗で『今日好き』メンバーが映ったKV・POPを掲示しました。元々シェーバーの棚が「ちょっと上の世代向け」と思う人もいるカテゴリーのイメージ変化にも貢献ができたと思っています。

松本氏 この動画を公開するタイミングで、各メンバーさんからもSNSに投稿いただきました。InstagramやX、TikTokなどで投稿いただき、その効果もあって、当日は前日と比較してサイト流入数が最大で約20倍。相乗効果もあり、増加できたのではないかと思っています。コメントとしても「この人が出てるから、紹介してるから買う」という声がすごく見られ、6秒枠の完全視聴単価もInstagram、TikTok両方でかなり良い数字を取れました。
大網氏 まず盛り上がるのは女性が多いのですが、ただ定量的な初速だけでいくと、ドラッグストアの購入者データを見た時に、若い男性の購入者比率が上がったという結果が出ました。元々カミソリコーナーの購入比率が高いのは、母親の代理購買を含めた40代ぐらいの女性が多いんです。ですが、今回の施策で普段は比率が高く出ない若年男性のところが伸びてました。ちゃんと気づいて買ってくださる若年男性が増えたと思っています。
―最後に今後の展開や展望をそれぞれお聞かせいただけますか。
大網氏 今回の実施で「Schick FIRST」が若年男性にとって「自分向け、綺麗になれそう」というポジティブなイメージ醸成ができたと感じています。若年層に振り向いてもらうには、共感性や等身大の人たちが代弁してくれているというのが大きなきっかけとなることが、成果と共に確認できたのは非常によかったです。若年層に共感してもらいながら製品の良さを伝えていくのには、『今日好き』などリアルに近いトンマナのコンテンツとタイアップすることが良い結果につながると思っています。
松本氏 番組発のクリエイティブを活用して、店頭でもしっかりと売り場を作ることができ非常に効果を発揮しています。今後もデジタルと店頭の連動性はしっかりとやっていき、若い世代の日常に入り込んでいきたいと思っています。
杦野氏 『今日好き』で初めて男性向けのプロモーションをやらせていただいて、このチャレンジに評価をいただくことができてとても嬉しいです。女性向けの商材が多いのですが、男性向けにもしっかりとアピールできることが証明できたので、今後もチャレンジしていきたいと思っています。
―ありがとうございました。

Schick FIRST TOKYO(シックファースト トーキョー)のWEBサイトはこちら
https://schick.jp/pages/schickfirst
◆大網栄太郎
シック・ジャパン株式会社 マーケティング本部ブランドマネージャー
2024年シック・ジャパン株式会社入社。Schick Firstなど新規ブランドのブランドマネージャーを担当。
◆松本典子
シック・ジャパン株式会社 マーケティング本部コミュニケーションスペシャリスト
2025年シック・ジャパン株式会社入社。若年層ブランドを中心とした、コミュニケーション領域に従事。
◆杦野莉鈴
株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 コンテンツマーケティング局
2020年、株式会社AbemaTVに中途入社。
現在は、ABEMAを代表するオリジナル恋愛リアリティーショー『今日、好きになりました。』シリーズの広告プロデュースを統括。
「ABEMA」はテレビのイノベーションを目指し"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業。
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