「次世代につなげたい」 住める芸術品「三鷹天命反転住宅」がピンチ 現代建築保存の難しさ
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 「3階の303号室にいるんですけど。球体の部屋があったり、こちらは畳の部屋があったりとか。このようなキッチンを中心にいろいろなお部屋がついている構造になっている」

 2005年に建てられた、東京三鷹市にある「三鷹天命反転住宅」。積み木を積み上げたようなカラフルな外観や、ハンモックや砂場のようなボコボコの床といった内部の作りが特徴的な建物だ。美術家・建築家の荒川修作氏らが手掛けたもので、人間の体を主役に設計された空間がテーマになっている。

【映像】建物内部は人間の体を主役に設計された空間

 「英語は『リバーシブルディスティニー』。運命を反転、簡単にできるんだよっていうような名前の意味が込められています。やはり体全体で体験して、周りの環境から変わることで、本当に自分たちが持っている可能性に気づけるんだって、そんなことを感じてこんな場所づくりをしています」(三鷹天命反転住宅・松田剛佳支配人、以下同)

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 そんな、ただの集合住宅の枠には収まらない天命反転住宅が今、ピンチに陥っているというのだ。

 「非常にシンプルにいってしまえば、宿泊部分に関して申し上げれば民泊でやっているんですけど、民泊事業としてお客様がいらっしゃる場合、コロナ前までは8割型海外のお客様のご利用だったんですね。コロナになって8割の部分がほとんどなくなってしまったので、収益という部分ではかなり難しい、というのは現状でございます」

 9世帯が入る建物のうち、5世帯が通常の賃貸、残りの4世帯分をショートステイや建物を管理する会社の事務所として利用しているという。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、利用者が激減。去年から大掛かりな修繕計画を進める予定だったが、経済的に厳しい状態となり、見直しを余儀なくされたということだ。

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 「俗に収益物件といわれるマンションを建てましょう、『敷地がこれだけあり、これだけのボリュームが建てられます』。そういう場合は、そのボリュームの中でどういうふうに切り取ったら一番収益が出るかという考え方。言ってしまえば、完全にお金優先の考え方だと思うんです。それも悪くはないとは思うんですが、そういった収益性ではなく皆さんがどういう風に使うか、暮らすかって場所などですね。実は一概に建築っていっても、目的によって収益性、目的・ゴールっていうのは異なるんですね」

 様々な思いが込められた建物を、歴史的建造物として次世代に繋げていきたい。修繕費用を賄うため、クラウドファンディングを開始し、支援を募っている。返礼品として、建物の見学会やショートステイの招待券が用意されていて、現在までに700万円を超える支援が集まっている(5日時点)。

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 「我々としては、作る段階から設計施工チームも、『50年100年残っていく建物だよね』、
そんなことを自分たちにも課しながら作った作品なんですね。今回の返礼品に関しても、返礼品の使用期限を設けておりません。『運営が続く限りはいつでも使えます』という風にしています。コロナがいつ終わるかもわからないですし、みなさんにご支援いただいたことで、この建物が30年50年、ひいてはもしかしたら世界遺産という流れも含めて続いていくっていうことが願いですので、ぜひご支援頂ければと思っております」

 この建物を実際に利用したことがあるという、建築家でモデルのサリー氏。その時はAirbnbを通して1週間程度、友人と勉強会をするために利用したそうで、「(勉強は)捗った。1日2冊哲学書を読むみたいなことをやっていて。場所的にも体を通して得る刺激がすごく多いので、議論が活性化したり、リフレッシュもしやすい。すばらしい、残ってほしい建物」と話す。

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 決して住みやすい建物ではないというが、「ずっと過ごしていられる。いろんな場所にいろんな工夫がされていて、自分の体をある程度建物に合わせないといけない。そういった体を使う楽しさみたいなものがあった。自分を建物に合わせて変えていくので、自分の殻を破れるような気がする」のだという。

 そんな建物でも、経営的に厳しい状況に追い込まれている。現代建築を保存する難しさについて、「日本は名建築が多くて、特に高度経済成長期からバブル期にかけて名建築が生まれた。現代建築というふうに呼ばれているが、評価がなかなか定まっていなかったり、遺産と呼ぶにはまだ若かったりする。耐久年数を近年迎え始めていて、中銀カプセルタワービルなどはそうだが、どういうふうに残していくのか、その資金をどう集めていくかが論点になっている」とした。(『ABEMAヒルズ』より)
 

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