女性初の「棋士」への壁 三段リーグは男性陣からのマーク厳しく 広瀬章人八段「候補が3人、4人いる状況がいい」
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 将棋ソフト(AI)の影響もあり、近年確実にレベルを上げている女流棋界。女流ではなく、今は男性しかいない「棋士」の誕生も近いのでは、という声も増え始めた。この状況に、冷静な見方をしているのが広瀬章人八段(34)だ。女流棋士による早指し団体戦「第2回ABEMAトーナメント」で、チーム渡辺の監督を務めることになった際にインタビューに応じると、「女性棋士」の誕生には、女性同士で三段リーグを切磋琢磨する状況を生むことが必要だと語った。

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 将棋界には男女の区別がない「棋士」と、女性のみがなれる「女流棋士」の2つがある。過去、棋士の養成機関である奨励会に女性が入会、棋士を目指してきたが、まだ女性棋士は誕生していない。今年、年齢制限により退会した西山朋佳女流三冠は、三段リーグで14勝4敗という好成績ながら、わずかに次点で届かなかった。広瀬八段から見ても「西山さんが三段リーグを抜けそうになったところが、女流としては一番レベルの高いところ。14勝4敗なら、本来であれば四段に上がっている成績ですからね」と、棋士と呼べる実力は十分に備えているという。

 ところが、すぐに次の候補が出てくるかと言われれば、そう甘くもない。現在、三段リーグには中七海三段がいるが、女性は1人だけ。この紅一点の状況が、さらに壁を高くしている。「やはり他の男性の三段からすれば、簡単に(女性棋士を)誕生させたくないというか、マークは厳しくなりますね。特に女性が1人だと、そういうことが起こりやすいんだと思います」。棋士を目指す、という点においては男女に変わりはないが、男性からすれば、初の女性棋士が生まれるきっかけとなる勝利を譲った者にはなりたくない。女性棋士が当たり前に出る状況になれば、それもなくなるだろうが、今は男性同士とは違う意地を持って対局に臨んでくることも多いという。

 女流制度はあれど、やはり男性メインであることは変わらない将棋界。この三段リーグで起こる状況を打破するには、女性候補の絶対数を増やすほかない。「三段リーグに女性が1人じゃなくて3人、4人という状況がいいと思います」と、マークが分散すれば、それだけ星を伸ばしやすくもなる。新しい時代を作るには、1人の力だけでなく、多くの人々の力が必要ということだろう。

 女流棋界も里見香奈女流四冠と西山女流三冠の2人がタイトルを持ち合い、女流枠として参加している棋戦でも、男性の棋士相手に好成績を収めている。三段リーグ経由でなくても、公式戦で勝ち進めば、棋士になれるというチャンスも増えた。求められるのは孤軍奮闘ではなく、切磋琢磨。1人、また1人と棋士候補が増えるほどに、快挙への距離も近くなる。

◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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