「こういう商品があったらいいのに」
「あのサービス、もっと改善できるのに」
日常生活でふと感じる「不満」。そんな不満をお金に換える夢のようなアプリが存在する。
「あなたの不満を買い取ります」と掲げられた、その名も「不満買取センター」。ユーザーから不満を投稿してもらい、その対価としてポイントを付与するアプリだ。
使い方は至って簡単。具体的な不満をアプリ画面に入力。その後、商品や会社名などを入力し、投稿するだけ。投稿はAIによって識別、最大で10円分のポイントが付与され、キャンペーン時にはなんと50円分のポイントが付与されることも。集めたポイントは500円分のポイントから商品券と交換できるという仕組みになっている。
不満をお金に……そんな“錬金術”を可能にした「不満買取センター」開発したInsight Techの伊藤友博代表はアプリについて「マーケティングのトレンドの変化」を背景に挙げる。
「ニーズ(需要)起点のマーケティングから『こういうものがあったらいいのに』というペイン(悩み)起点のマーケティングに確信がありました。不満や不安といった“負の気持ち”を集めることがビジネスになるのではないかと思い、サービスを運営しています。生活の中でちょっとした不便やちょっとした改善予防みたいなところに、小さなイノベーションの種が隠れているんだろうなと思っています」
そんなユーザーから寄せられた“不満”の行き先。それは「ビッグデータ」としての活用だ。企業などにユーザーからの不満を提出することで商品やサービスの向上を図り、さらなるビジネスチャンスを生み出す。不満買取センターはこうした支援を行うことで収益を得ている。
「ビジネスとしてはお金が出ていくばかりになってしまうのですが、たまった不満の声が企業にあててみると、アンケートやインタビューでは引き出せないような声があるんです。具体的で粒度が細かい、解像度が高い声にデータの価値があると感じています」
連日、多くの不満が寄せられている不満買取センター。現在およそ68万人が登録し、不満を投稿してポイントを獲得する、いわゆる“ポイ活”を楽しむ人もいる。これまでに5万6000ポイントを獲得した「きなこさん」(仮名)に話を聞くと、6年ほど前から投稿を始め、現在では8000件を突破したという。
「(今まで)5万6000ポイントくらい、いただいています。ただ(不満を)溜め込むよりは、ちょっと発散というか、はけ口として出すことでスッキリもしますし、何かあればすぐに開いて投稿するようにしています」
「(自分で思っても)友人や家族にいうくらいで終わってしまっていたものが『もしかすると第三者に伝わって何か役に立つかもしれない』と思うと、より意見したくなるというか、意見がどこかで役に立って、企業の役に立てていると思うと、すごいサービスだなと思います」
内容は商品への不満から家族への愚痴など、些細なことも多いというきなこさん。こうしたユーザーから集められたデータはすでに活用され始めている。今月には「コロナ禍における買い物のトレンド」も一般向けに公開。ユーザーからの不満を多く集め、活用する中で“社会課題の解決”が「次の目標になる」と伊藤代表は話す。
「不満の声を見ていると、企業だけでは解決できない不満がたくさんあるんだと実感しました。社会課題につながるような困りごとがたくさんある。企業様との取り組みだけではなく、自治体との取り組み、あるいは政治家の皆さんとコラボレーションするなど、いわゆる政策立案といったところにも関与していくべき立場にあるのかなと感じています。社会的な価値を発揮できるように頑張っていきたいですね」
(『ABEMAヒルズ』より)
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