今月31日に投開票を迎える衆院選を前に、選挙への投票を呼びかける“ある映像”が反響を呼んでいる。タイトルは「VOICE PROJECT 投票はあなたの声 #わたしも投票します」。
【映像】「まず意思を示さないと」投票を呼びかける橋本環奈さん
映像には、俳優・アーティストをはじめとした総勢14人の著名人たちが出演。小栗旬さんや菅田将暉さん、橋本環奈さんら有志によって集まった作品は今月16日にYouTubeで公開され、30日現在、約64万再生を記録している。
映像の制作者「日本の投票率の低さに対しアクションを起こしたかった」
ネット上では彼らの投票を呼びかける姿に対して「発信力・影響力が有る人達が選挙について語ることは多くの若者達へ伝わる」「こういう立場の方々がこういう発言をすることをタブー視する世の中に疑問を感じてました。 勇気を出して動画を上げてくださって感謝します」などの声が寄せられている。
政治への言及がタブー視され、時には批判を浴びることもある中で公開されたこの作品。映像の節々には出演者たちの“覚悟”が垣間見える。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』の取材に対し、映像の制作者は公開の背景について「日本の投票率の低さに対しアクションを起こしたかった」と話す。
「俳優の方やミュージシャンの方など、影響力のある方と一緒に映像で発信することが最も多くの人々に伝わるのではと考えました。このプロジェクトの広まりによって、より風通しの良い、暮らしやすい日本社会になる一助になればと願っています」
この映像に、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏は、動画の印象に加えて、改めて若者の投票率の低さに言及。
「動画に関しては非常に豪華でオシャレだし、特にファンからすればカッコいい印象を受けるだろう。その意味でいえば、論理というよりは直感に訴えて感情を動かす力はあると思う。作り込まれているという部分では、YouTubeっぽい、よい意味でのライトさみたいなものはないが、著名人が政治について発信する第一歩と考えれば、とても意義のあることだと思う」
「一方で62万回という再生数は、トップユーチューバーだったら数時間から1日程度で達成する数字だ。これほどの著名人の方々が出演するなら、もっと再生数が伸びてもおかしくない。社会に若者の声が反映されていない現状は改善すべきだが、目先の投票率にとらわれない視点も大事だ。『投票率』と『投票の質』はまた別の話で、単純に『投票率だけ上がればいいのか?』といった疑問もある。自分で考えて投票する若者がどれだけいるか。投票率は投票の質と一緒に上がっていくものだと思う。現状、投票は義務ではなく権利。若い世代は政治を知るタイミングが少ない。特に学校でも政治に関して、システムやルールについてはある程度触れられる機会があるが、具体的な政党や政策について教育の文脈で扱われることは避けられている。教育現場にも政治について知る機会をもっと設けるべきだ。そういう意味では、地道に、時間をかけて行っていくべき作業ともいえる」
「20代の若者に教える中で日々感じているのは、本質やファクトを見抜く力があるということ。ある学生が、ふとした会話で『政見放送を見たけど、国会で見る姿とぜんぜん違った』と言っていた。あるいは政策に対する具体性の不足や、実現可能性に対する疑念について、彼らの言葉として耳にすることもある。選挙時の公約や選挙用に作られた映像を見て、そう思ってしまうと、政治に対する若者の期待も高まらない。若者の本質を見抜く力を侮らないでほしい」
また、前述の映像でロックバンド・ONE OK ROCKのボーカルTakaさんは「自分が行くことによってその一票のなにか変わるのか、すごく疑問に思った瞬間もあった」と振り返っている。これについて藤井氏は「投票につながっていった具体的な行動や、政治と自分とがどうつながっていると感じたか、個々のエピソードの部分が動画の中でもっと見えればより良かった」と話す。
「著名人が具体的にどのように政治に興味を持ったのかという経験談を話してもらうのもいい。あるいは政治家と対談してもらって、気になることを率直にガンガン突っ込んでもらうのでもいい。また過去、小栗旬さんは『芸能人も組合を作るべき』といった旨の発信をしていて、メンタルヘルスを守る意義でも僕もそれは同感だ。例えばそのためのバックアップやサポートを求める陳情の様子を動画にするとか、政治に関わる具体的行動をロールモデル(見本)として見せることで、若者の意識や感受性、考える力を刺激することができるのではないか」
最後に藤井氏は、国会や政治家自身の投票率向上に向けての姿勢について、「根本的に投票率を上げるには投票の義務化、インセンティブをつけるなどの施策になるが、ライフスタイルにあわせて夜間投票を受け付けたり、ネットで投票できたりといった新しい仕組みが導入されれば投票率は今より確実に上がっていくはずだ。しかし、これについて、国会議員の中に本質的なやる気あるのかどうか。それが見えない」とした。(『ABEMAヒルズ』より)
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