与野党の大物候補の“比例復活”に有権者から不満の声も…「選挙制度改革」から25年以上が経過、再び見直すべき時期との声
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 衆院選で相次いだ、小選挙区で敗北した閣僚経験者やベテラン議員たちの“比例復活”に、「なんかズルくない?ゾンビみたい…」「敗者復活戦みたいなナゾ制度」「小選挙区で敗北したなら、民意に従って辞めるべきでは?」といった声が相次いでいる。

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 現行の衆議院議員選挙は、1994年に導入された「小選挙区比例代表並立制」を取っている。まず「小選挙区」においては全国289に分けられた選挙区で最も得票の多かった候補者が当選、そして「比例代表」においては全国11に分けられた選挙区(ブロック)ごとに得票に応じて政党に議席を配分し、各党の名簿の上位から順に当選する仕組みだが、政党に属していれば重複立候補も可能であるため、小選挙区で落選した候補者が比例区で当選するという、いわゆる“比例復活”が起こるのだ。

 2日の『ABEMA Prime』では、実際に“比例復活”した与野党の議員を招き、導入から25年が経過した現行制度の是非について考えた。

■“比例復活”は候補者にとって「悔しい」当選

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 千葉9区から4選を目指し立候補した自民党の秋本真利議員は立憲民主党の奥野総一郎議員に約4500票差で破れ、比例南関東ブロックで復活当選を果たした。

 「当選おめでとうございます」との呼びかけに、複雑な表情で「申し訳有りません」と第一声を発した秋本議員。「本当に悔しくてならない。正直言って、当選した気が全くしない。過去3回は小選挙区で当選したので、比例復活は初めての経験だが、こんなに気持ちが違うものなんだと感じている」と絞り出した。

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 「小選挙区での落選を受け止めきれていないというか、気持ちの整理ができていない。自分の力では勝てず、党の力で救ってもらったということでご迷惑をかけているし、そのことによって比例の枠を使ってしまい、1人が押し出されて落選してしまっているわけだ。そういう意味でも申し訳ないという気持ちでいっぱいだ。我が党の場合、“役職は選挙区で受かった議員から”、という線引きもあるし、重複で復活した人間だけが受けなければならない“講座”みたいなものもある」。

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 また、神奈川7区から立候補するも前回に続いて自民党の鈴木馨祐氏に破れ、秋本氏と同じ比例南関東ブロックで復活当選を果たした立憲民主党の中谷一馬衆議院議員も「なんとか比例で引っかかりました」と苦笑する。

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 「とても悔しい。みんなが人生を懸け、全力でやってくれた試合で負けるというのは、こんなにも悔しいことがあるのかというくらい悔しい」。

■偉い人たちにとっての“セーフティネット“に?

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 実業家のハヤカワ五味氏は「お二方のように僅差で負けてしまった候補者が復活できる制度ということでいえば納得感もあるが、“この候補だけは当選させたくないから他の候補に投票した”という場合、復活と聞くとモヤッとするような部分もあると思う。実際、偉い人たちにとっての“セーフティネット“として使われている面があるのではないか」と指摘。


 テレビ朝日平石直之アナウンサーも「比例復活いいじゃないかという声がある一方で(比例復活は」党の中での話なので党によっては”惜敗率高いのに落選した人””かなり負けたのに当選した人”が出てくる。もしかしたら、”この人は入れたくないと思ったのに当選した人”が出てくる」という可能性を示唆した。

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  これに対して、小籔千豊は、「比例制度の問題点は今に始まったことではなく前から言われ続けている」と切り返した。その上で2005年の“郵政解散”に伴う衆院選で自民党が大勝、自民党の比例南関東ブロックで35位だった杉村太蔵氏が当選したことを踏まえ、

 「小選挙区で通って何の仕事もしない人よりは、比例区での当選でも一生懸命やってくれている人の方が、僕らとしてはありがたいし、お二人とも小選挙区で立候補して10万票以上取った上での落選・比例復活だが、杉村太蔵さんの場合、誰も票を入れてないのに小泉さんがすごい人気の時だったから当選した。民主党や、維新もそういった側面もあるはず。“よくわからないけど、人気だから入れておこうか”という有権者は比例だけでなく小選挙区にも絶対いるはずだ。制度にはメリットもあれば、デメリットもある。それなのに、こういうときだけマスコミが文句を言うのはおかしいと思う」と憤る。

■やっぱり中選挙区制に戻すべき?

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「そもそも“比例復活”という言葉自体がメディア用語だ。選挙区と比例区は対等で重複立候補も認められているし、どちらかで当選すればいいという話だ。だから負けた人が復活したという、捉え方自体あまりよくない」と指摘する。

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  「僅差で負けてしまった候補者に入った票が“死票”になってしまうのはもったいないよねといった意見や海外の事例、メリット、デメリットを踏まえて今の制度ができたわけだ。そもそも日本は一つの選挙区から複数の候補が当選できる中選挙区制でやってきた。しかしそれが派閥中心の政治を生んでしまっていたし、アメリカのような二大政党を目指そうということで小選挙区制を導入した。

 つまり“どぶ板選挙”中心だった時代の反省から、議員個人の力だけではなく、政党も重視する政治にしましょう、という決断を我々はしたわけだ。あれから30年近くが経ってみて、全く二大政党制になっていない。むしろかつての強い自民党vs強くない社会党という55年体制のような、強い自民党vs強くない立憲民主党という構図が出来上がってしまった。だったら中選挙区の方がいいのではないかという議論もありえるはずだ」。

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 東洋経済新報社の山田俊浩・会社四季報センター長は「公明党のように小選挙区と比例を切り分け、重複を避けることもできるわけだし、議員自身が私は名簿に入りませんという判断、逆に私は比例だけでいくという判断をしてもいいわけだ。それから今の制度のいい面として、やはり中選挙区制の時代よりも公職選挙法違反が減って、オープンでクリーンになってきたことはあると思う」と話した。

■「やはり時代にそぐわないところもある」

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 中谷議員は「小籔さんと佐々木さんの言ったことが本質だと思う。ドイツでは小選挙区と比例が半分ずつにしているし、小選挙区のようにドラスティックな部分と、比例代表のように少数の声を拾っていく制度は並立させるべきだ。一方、ハヤカワさんのおっしゃった、“そうは言ってもこの人は落としたいのに”、“これはおかしいだろう”という声も反映させたような優先順位付連記投票という選挙制度がオーストラリアにある。しかもマークシート方式なので、開票も効率的だ。

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 やはり、みんながもっと参政行動を起こしやすい仕組みを作った方がいいと思っていて、以前、私が筆頭提出者となって立憲と国民でインターネット投票を推進する法案を出したが、これを今度の立憲民主党の代表選で実証して世の中に示していきたいし、被選挙権年齢を下げるなどして、より投票のハードルを下げることに取り組みたい」。

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 秋本議員も「もちろん、本当の意味で落選してしまって議員でなくなれば“ただの人”。そうなれば政策的な決定にも関われないので、国会にきちんと戻るという意味からも、制度としてある以上、重複立候補は使わせていただく。そして次は捲土重来、絶対に小選挙区で受かるぞということだ」としたで、次のように訴えた。

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 「ただ、正直言って私も分からないうちに比例名簿の順位は決まっている。その意味では、まずは党内を変えたい。選挙をやると決める人間、そして順番を決める人間は同じ人間だ。そういう人たちに対して“重複立候補はやめよう。選挙区で上がってきてよね”というのは当然なのではないかと思っている。総裁選挙の時に河野太郎さんが言っていたが、制度は変えるべきところは変えなければならない。我が党や立憲民主党の場合、ほとんどの選挙区で候補者を立てているが、そうでない小さい政党もあって、そのための制度でもあるが、やはり時代にそぐわないところもある。中谷さんもおっしゃっていたとおり、党派を超えて協議していきたい」。(『ABEMA Prime』より)

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