「地球からの搾取をやめろ!」グレタさんのメッセージに感じてしまう違和感の正体…制限の“無理強い”ではなく選択肢の“提示”を
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 英グラスゴーに約120カ国の首脳が集結、温室効果ガス削減などについて話し合っている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)。これが外交デビューとなった岸田総理は、日本が脱炭素社会に向け取り組むともに、発展途上国の温暖化対策支援に5年で100億ドルの追加支援を行う用意があることを表明した。

【映像】益若つばさと考える、グレタさんの発信スタイル

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 とはいえ、パリ協定で掲げられた“気温上昇1.5℃以内”の目標に向けた各国の計画はバラバラ。そこに「COPはこれまでと変わらない。私たちをどこにも導かない。成果はない」と痛烈な批判を浴びせたのが、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさん(18歳)だ。

 報道を前にグレタさんは「政治家や権力者たちは未来を真剣に考えるフリや気候危機によって被害を受けた人々を心配する真似事ばかり。本当のリーダーシップは私たちにある。人々や自然、そして地球からの搾取はもうたくさんだ!搾取をやめろ!ああだこうだ言うのはやめろ!」と訴えている。

■コアなファンがいる分、敵も存在するスピーチ

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 これまでもCOPに参加、“取り組みに消極的な国”に与えられる不名誉な賞として知られる「化石賞」を日本代表として受け取ったこともある国際環境NGO所属の塚本悠平さん(京都大学大学院)は「素直な意見だと思う。多くの人に刺さる部分が多いのではないかと思う。言い方にかなりラディカルな部分もあるが、もう手遅れなんだ、今対策しないと、1.5℃はおろか2℃も達成できないよという逼迫感を感じる。本当にシンプルなメッセージとして世界全体で受け止めた方がいいのではないかと思う」と話す。

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 「まず、“これまでと同様で何の成果もない”ということに関して言えば、パリ協定や条約はできたものの、途上国への技術移転など、大事な条項が詰め切れていない。また先進国は、2020年までに開発の必要な途上国への1000億ドルを支援すると言っていたが、これも全くできてない。こうした果たせていない様々な約束について、やはり若者、特にグレタさんからすれば信頼が低下しているということで、このような発言が出てきたのだと思う。

 次に“搾取”については、二つの意味があると捉えている。一つは先進国が共有資源である水などの資源を途上国から取ってしまっているのではないかという意味での搾取。もう一つは、水や食料が原因で紛争が起きているような状況を見ると、明らかに地球全体が持続可能になっていない。つまり人間が地球から、という意味での搾取だ。こうしたことへの怒りの声だと思う」。

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 一方、教育サービスを提供する株式会社Culmonyの岩澤直美代表は「“なぜ皆が彼女の言葉に耳を傾けるのか”といったことが良く言われるが、私の場合、少なくとも耳を傾けているという感覚ない。うるさいから勝手に入ってくるみたいな感じだ。そして、この“うるさい”というのは悪いことではなくて、訴え方のパターンだ。そうすることで、“あ、じゃあ変えなきゃ”と思う人もいる」とした上で、「もちろん、“もっと環境にいいことをしたらライフスタイルが楽しくなるよ”という話を方の方が刺さる人もいるので、アプローチの方法にも多様性が必要だ」と指摘した。

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 スピーチライター・カエカの千葉佳織代表も「特に政治家を敵に回すような言い方など、言葉が強いのが彼女のスピーチの最大の特徴だと思う。“We say no more blah blah blah”、つまり“ベラベラ話すのはもうやめろ”といった表現に対して皆さんが“そうだそうだ”とデモを行っている。彼女の信念が表れた言葉が多いと思う」とコメント。「ただ、彼女の話し方は、コアなファンがいる分、敵も存在してくることになる。実際、彼女を叩く記事が世界中で出ている現状もあるし、私も全てが正しいとは必ずしも思わない」との見方を示した。

■グレタさんは選択肢の“提示”を

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 “化石燃料を使用する産業への補助金は恥”だとし、大陸間の移動は旅客機を使わずヨットで行っていることでも知られるグレタさん。畜産が気候変動の主要因であり、植物由来の食事に変えればCO2を年80億トン削減できるとのデータを踏まえてヴィーガン食を推奨、ファストファッションを批判し、「最後に服を買ったのは3年前」とも話している。

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 塚本さんは「移動については私もそうしたいが、学校に通いながら仕事をしているので、日本からイギリスまでヨーロッパまで船、シベリア鉄道、ユーロスター等々を使うとなれば、1年間の有給を全て使ってしまうぐらいの勢で時間がかかる(笑)。各々の立場でできること、できないことがある中で、その限界を超えてきているグレタさんだ。その意味では、別に全員が同じ生活スタイルをした方がいいというわけではないと思う。それぞれが好きな生活を送ったらいい。ただ、グレタさんの取り組みが世界で注目されることで、例えば畜産から出るメタンによってCO2等で温暖化が進んでしまうこと、服を作る際には水が大量に使われ、マイクロプラスチックが出るといったことを知る一つの大きなきっかけになる」と説明。

 「レジ袋にお金がかかるようになったのは、負の金銭的インセンティブだが、例えばドイツではビール瓶を洗ってスーパーに持っていくとお金が返ってくるデポジット制が導入されている。小さくてもいいから、そういった金銭的なインセンティブがあることも活動が広まる要因だと思う」。

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 モデルの益若つばさは「グレタさんが18歳にしてあんなに意見を持っているのは素晴らしいし、賛同した方々が協力して同じことをしてみるのも素晴らしいことだと思う。ただ、将来のためにSDGsを意識しよう、節制しようと思う一方で、自分はどこまでやればいいのか、という基準が分からないこともあると思う。私は普段、お洋服を作る仕事もしているけれど、作ること自体が罪なんじゃないかな、と感じてしまうこともある」と懸念を示す。

 「何々はダメ、何々は制限しようとなると、なにかにつけて罪悪感を抱きながら生活することになってしまうし、お肉を食べる人や飛行機に乗る人は悪なんだ、と敵を作ってしまうようになるのは違う。ファストファッションも流行語になるぐらいブームになったのに、数年経ったら“悪”になってしまえば、ついていけなくなる。でも、テレビなどが楽しみ方を提案してもらえれば、“プラスチックを使っていないものにした方がいいんだな”という知識もつけられる。ビニール袋が有料化されたことで、ちょっとずつエコバッグを持つようになったように、流れを導いて、ポジティブに環境を良くしていこうと思えるようにしないといけないと思う」。

 岩澤氏は「私も二十歳ぐらいまでは環境問題に興味がなく、自分が生きている間に地球があればいいやぐらいの感覚で生活をしていたが、SNSでライフスタイルとして環境問題を発信しているインスタグラマーの方などを見て変わってきた。グレタさんのようにしないといけない、罪悪感を持つべきだと言われると、ちょっとウッとなってしまうが、牛乳ではなくオーツミルクという選択肢、リサイクル素材で作られた服という選択肢があるといったことを知れば、選ぶ時間も楽しめるようになる。毎日食べていたお肉も、赤ワインを飲む時だけにしよう、みたいにすると、特別な感じがあって楽しめる。そういうアプローチの方法が大事だと感じている」と話した。

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 慶應義塾大学の若新雄純・特任准教授は「高校生たちとSGDsワークショップをやると、多くの生徒が“持続可能性”について勘違いをしていてびっくりする。つまり、人間の欲望ある生活、経済活動も、これくらいであれば環境に負荷をかけ過ぎない形で持続可能になるよ、ということであって、地球環境を持続可能ではない。かつてはみんなが道端にゴミを捨てていた時代もあったけれど、今は減っている。それに僕らがものすごくストレスを感じているかというと、そうではない。それが持続可能という意味だと思う」と話す。

 「それなのに、どこか“資源を守れ”みたいなものだと勘違いをしている。グレタさんもちょっと惜しいと思うのが、その言動自体が周りの人にとってはとてもじゃないけど“持続不可能”なものになってしまっていること。人は強制されるより、自ら選んだ行動の方に納得する。“AはダメだからBかCにしろ”ではなく、“AもBもCもあるけれど、どう?”と言われることで、“今まではAにしていたけど、新しいBかCを選んでみよう”と考えることができる。まずは提示からではないか。そうすれば、僕らも真似して、ちょっとでも負荷を下げられるというもの選ぼう、と思えるかもしれない。そういうデザインがグレタさんには必要だと思う」。(『ABEMA Prime』より)

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