「ハッキングから今晩のおかずまで」というキャッチフレーズで、ひろゆき氏が1999年に設立した電子掲示板「2ちゃんねる」。スレッドと共に利用者が増加し、2004年には訪問者が700万人を超える日本最大級の掲示板に成長した。
【映像】当時のひろゆき氏「嘘もあるしひどいことも書かれる」テレビ初登場時の貴重シーン(50秒ごろ〜)
エンターテインメントの分野では、ある男性の電車での出来事を書いたスレッドが「電車男」として映画化され、大ヒットを記録。他にも掲示板を通じて募金活動が行われ、アフガニスタンに学校が建設(2004年)されたり、有志による白血病解析を行う研究プロジェクトが発足したりと、社会貢献としての功績もある。一方で、本人特定の晒しや誹謗中傷といった流れが「2ちゃんねる」によって加速したといった声も。
ひろゆき氏は、掲示板で起きた本人特定の晒しや誹謗中傷について、どのように考えているのだろうか。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演したひろゆき氏は「昔から『結局人間はそういうものだよね』と言っていた。(晒しや中傷は)2ちゃんねる以外でも起こる。Twitterなどを見ていただければ分かるが、2ちゃんねるの問題ではなく、人間の問題だと思う」とコメント。
脳科学者の茂木健一郎氏は「ひろゆきは今、4chan(※英語圏が対象の世界最大規模の掲示板)の管理人だ。4chanはアメリカで視覚的なミームを大量に生み出していて、すごく偉大な存在になっている。ひろゆきはインターネット史における世界的な偉人だと。4chanはマジですごい」と、その後の実績も含めて評価。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「ひろゆきは覚えていないと思うが、以前対談か何かでひろゆきに『2ちゃんはどういう文化か』と聞いたら、『一生懸命やっている人、熱くなっている人をバカにする文化だ』と言っていた」と話す。
「2ちゃんねるにいることが社会的、世間的には恥ずかしい、『我々は恥ずかしい場所にいるんだ』と自虐とシニカルさが同居している。それが2ちゃんねるの文化だと言っていた。これはインターネットの文化でいうと、アメリカにおける西海岸のヒッピー文化だ。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが世の中を変えていこうとしたように、前向きでポジティブなムーブメントに比べると、日本のネットはシニカルで後ろ向き、自虐的で情けない感じ。それが2000年代における日本のネット文化の一つの基盤になっていて、それが2010年くらいまで続いた」
その上で、佐々木氏は「東日本大震災や福島第一原発事故が起き、2012年に第2次安倍政権が生まれた後、ものすごい勢いでTwitterが政治化した。荒れ狂った後、今はフェイクニュースもあって何が何だか分からなくなっている。そうやって振り返ってみると、2ちゃんねるはあんなにバカにされてシニカルだって言われていたけど、真っ当な言論が成立していた。今のTwitterよりはましだった。そういう振り返りにならざるを得ない」と述べた。
茂木氏も「匿名性があるから日本人は創造性を発揮できる。国歌の『君が代』の歌詞は古今和歌集の読み人知らずの歌だ。誰が作ったか分からない。読み人知らずの文化はあの頃からある」と説明。「ヨーロッパだと『俺が作った』『俺の作品だ』となる。夏野さん、匿名性は日本文化の特徴ではないだろうか」と投げかけた。
慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「共通の関心事を持った人が匿名で集まる。これは想像を絶するパワーだ」とコメント。
「そういった人たちがスレッドに集まると異常な力を発揮する。当時、僕は携帯電話を作っていたが、2ちゃんねるに立ったスレッドは、全部モニタリングしていた。3時間半くらいで必ずバグを発見してくるから。プロがチェックしているのに、ドコモショップで発売開始して大体2時間半後くらいに“バグ発見”とくる。この特異性は本当だったら雇いたい。そういう特異な“とんがり”があった」
佐々木氏も「基本的にインフルエンサーが存在しなかった。今の言論はハブと言われる人たちが軸になって、その周囲に人が集まるという構造になっている」と、当時と今を比較。
「2ちゃんねるは確かにフラットなんだけど、たぶんこの人と同じ人が書いているんだろうなと、トリップがあるので誰か分かる。それで、この人は自分と同じところにいるんだなというのが見えてくる感じがあった。この集まっている人の質の高さは『人数が少なかったから』という結果に行き着くんじゃないかと思っている」
「これは仮説で、僕は決して同意しているわけじゃないし怒る人もたくさんいると思うが、2010年代にインターネットは衆愚化した。さまざまな理由があるが、一つ言えるのはTwitterが爆発的に広がったことだ。Twitterが爆発的に広がった1つ(の理由)は東日本大震災でTwitterを使うとライフラインにもなるよねと。ほかにも2007年問題の影響があると思う。団塊世代の大量退職によって、暇になった高齢者が大量にネットに流入した。僕は同意していないが、それがTwitterを衆愚化させたと指摘している人はいる。僕は同意していないけれど、そういう意見もあるわけだ。2000年代初頭は、どちらかというと技術系・理科系の20代、30代が中心になってネットをやっていて、全体的に言論の質が高かった。そこは評価するべきだと思う。どんなサービスでも始まったときは面白い人がいっぱい集まるが、有名になるとどんどん衆愚化していく」
佐々木氏の見解を聞いたひろゆき氏は「2010年頃にスマホがみんなの手に渡った。パソコンは持っていなくてもスマホがある。インターネットが通じる。それで、そんなに賢くない人がネットに大量に出たというのが要因なんじゃないか」と考えを示した。
2ちゃんねる誕生から20年以上経った今、ひろゆき氏はなぜ、世の中で人気になっているのだろうか。
ひろゆき氏は「自分で解説すると、2ちゃんねるには、ネットで匿名で書きたい人たちが大勢いた。だから僕は場所を提供した。あと、動画サービスが流行り始めたときに、自分で顔出しすると恥ずかしいので顔出しをしなくて、そんなに面白くない人でもコメントで盛り上げてくれるニコニコ動画をやった」と回答。
「それで何年か休んだ後、YouTube文化になったときに『人が面白いか、より長い間で顔を出して喋り続けた方が絶対人気出るよ』と前から言っていたが、みんなやらないので『じゃあ僕がやるから見ててね』と言ってやった結果だ。要はネット上のユーザーが何を求めているのか、それに合わせてやっているだけ。最後は自分自身を商品として使っただけで、基本的にやっていることは変わらない」
振り返って分析するとさまざまな要素が見えてくる2ちゃんねる。今後のインターネットを考える上でもヒントがありそうだ。(『ABEMA Prime』より)
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