将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、棋聖、19)が12月2日、順位戦B級1組9回戦で近藤誠也七段(25)に114手で勝利、今期の成績を8勝1敗とし、初のA級昇級にまた一歩前進した。2021年の公式戦最後の対局だったが、苦しい時間が長かった展開ながら懸命の粘りが功を奏し、深夜の終盤に逆転。公式戦連敗を「2」で止め、大活躍の年を白星で締め括った。
【中継】順位戦 B級1組 第9回戦 藤井聡太竜王 対 近藤誠也七段
タイトルを取りまくった2021年の公式戦最終局は、我慢の一局だった。C級1組時代、順位戦で初黒星を喫した近藤七段の先手で始まった一局は、プロの間でも深く研究が進んでいる角換わりからスタート。序盤こそ互角だったが中盤に入ったところからじわりじわりと近藤七段にリードを許す流れに。夜戦に入った後もなかなか差を詰められなかったが、対局開始から12時間以上が経過した午後10時台に入ってから、形勢が大きく変動。藤井竜王の攻めに対して、近藤七段の受けが少し緩んだところを見逃さず、数手のうちに互角、さらには優勢にまで持ち込むと、その後は抜群の終盤力を活かして確実に仕留めた。
対局後、藤井竜王は「本譜は苦しい展開が続いていると思っていました。(終盤)角が使える展開になってから、難しくなったかなと思いました」と振り返ると、8勝1敗という結果には「自分は次の対局が年明けになりますので、それまでにいい状態にして、残り3局に全力を尽くしたいと思います」と語った。また2021年の振り返りについては「全体として実力以上の結果が出せて、いい経験ができた一年でした」と述べた。
厳しい将棋を逆転でものにし1敗を堅守した藤井竜王は、上位2人までのA級昇級にさらに前進した。前日まで7連勝でトップだった佐々木勇気七段(27)が敗れたことで、同組の首位にも立った。また3番手だった千田翔太七段(27)も敗れて6勝3敗と後退。残り3局となったが、結果次第では最終戦を待たずに昇級を決める可能性も出てきた。来期A級で挑戦権を獲得し名人を獲得すれば、谷川浩司九段(59)が持つ最年少名人、21歳2カ月の更新も可能だ。
直近では豊島将之九段(31)、永瀬拓矢王座(29)と連敗し、改めて強敵ばかりとの対局が続くことを感じさせる結果となっていたが、我慢を重ねて勝利につなげる勝負強さは、さすが四冠といったところ。来年1月には渡辺明王将(名人、棋王、37)との王将戦七番勝負で、最年少五冠への挑戦が待っている。公式戦の場からしばし解放され、次の戦いに備える時間が取れた藤井竜王。2022年も、さらに強くなった姿を見せてくれることだろう。
(ABEMA/将棋チャンネルより)