「断る選択肢ない」土日勤務、自腹で費用負担も…“ブラック部活”元顧問が払った大きな犠牲
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 長時間の拘束や週末、夏休みにまで及ぶ活動で教師たちを悩ます「ブラック部活」。本来であれば、やってもやらなくてもいい活動のはずが、気づけば学校生活の大きなウエイトを占め、過熱に歯止めが利かず、苦しんでいる顧問の教師たちがいる。

【映像】事務作業は夜に…部活顧問の「1日の過酷スケジュール」(画像あり)※5分ごろ〜

 実際にSNSには「明日は朝の7時に集合、夕方の5時まで部活」「真剣に転職活動を始めることにしました。何が働き方改革だ!」といった悲痛な声が寄せられている。

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、実際に新卒採用されてから去年辞職するまで10年間、中学教員をしていた、のぶさん(仮名・男性)を取材した。

「部活動が盛んな学校にいたときは、それこそ休みはお盆と正月とテスト前の部活動がない期間のみでした。あとは毎日練習があって、部活がない日が週1日設けられてはいましたが、そういう日もその後に保護者会が入っていたり、夜9時くらいまで夜練習をやったりしていました」

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 当時、バスケ部の顧問を務めていたのぶさん。OECD(経済協力開発機構)の最新調査によると、部活動への指導時間は平均1.9時間。日本は7.5時間と参加する全48国中ワースト1位。世界的に見ても日本の教員の勤務環境が、いかに過酷かがわかる。一方で、のぶさんは「部活の顧問は断りたくても断れない」と話す。

「選択肢があればいいのですが、なかなか若い段階だと断ることもできないですし『どうしても役割は振らなきゃいけない』ということで、選択の余地はあまりありませんでした。部活動の主催は、中学校体育連盟という組織がありますが、校長たちがそこに関わっていて、権力者が部活動中心に動いていることもあります。人事を考えると自分が希望した場所に行けるかどうかにも関わってくるので、そこでリスクは取れないと思います」

 また、部活動の顧問をしたことで、のぶさんにはさまざまな犠牲が生じたという。

「子どもが生まれたときも、次の日に遠征が入っていて、自分が行かないといけなくて休めなかったり、(教員時代の)後半はどうしても家族との時間が犠牲になって、それが一番つらかったです。大会準備の打ち合わせだったり、大会がない日も審判に呼ばれたりとかするので、そういった目に見えない部分でも働いていました」

 金銭面でも自腹を切るような負担が数多くあったというのぶさん。

「結局マイナスになるぐらいな感じ。例えば、練習試合に行くときの交通費は出ないですし、あとはいろいろスポーツ協会に登録するための“登録料”が毎月かかるのですが、そういったものも自分で払うことがありました。時間も拘束されるし、お金も自分で払わないといけないし『やってらんない』という声はけっこう多く聞きます」

 肥大化、複雑化する一方の部活動。文部科学省は去年9月、教員の長時間労働を減らすため2023年度から休日の部活動を学校ではなく地域の管理に段階的に移行する「地域移行」の方針を示した。休日の部活動は「必ずしも教員が担う必要のない業務」と位置づけたこの改革案では、学校での活動と“部活動”を切り離すことで教員の負担を減らすことを目的としている。

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 過酷な部活顧問の現実。『学校ハラスメント』の著者でブラック部活問題に詳しい、名古屋大学の内田良准教授は「教員の長時間労働は特に中学校・高校で問題になっている」と話す。

「長時間労働の原因として、やはり部活動が多くを占めています。先生たちは、授業の専門家として大学でトレーニングを受けているのに、部活動で多くの時間を使われて、ほかの重要な仕事ができないような状態になっている先生もいます。実際に、定時外の時間は教員は残業代がつきません。給特法といって、土日も4時間稼働してせいぜい3000〜4000円ほど。8時間やってもこの額は変わりません。本当に過酷な労働環境の中で、部活顧問をやっている教員がたくさんいます」

 また、内田氏は部活動に教員が多くの時間をかけることで、最終的に子どもにも影響が出てくると指摘する。

「授業では先生たちもその分野のスペシャリストですが、部活の顧問は半数がその協議の素人だといわれています。教員に負荷がかかるだけでなく、それによって授業を準備する時間も減ってしまったり、いじめなどが起こったときに個別対応で『本当はもっとゆっくり話を聞きたいのにできない』といった影響も出てきます。結局、子どもにもマイナス面が降りてくるような仕組みになっているんです」

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 前述ののぶさんのように、平日だけでなく土日のプライベートの時間まで奪うケースは問題にならないのだろうか。内田氏も「これが本当に部活の厄介なところだ」と頭を抱える。

「部活はそもそも趣味のような位置付け。趣味だけど学校でやることになっていて、趣味なのに土日は手当てとして数千円が出るといった、おかしな話になっているとも言えます。むしろ『出るだけありがたい』といった感覚になっていることもあります。ちゃんと管理していかなきゃいけないのに、『でも趣味でやってるんでしょ?』と聞かれたときに誰も反論できないようになっているんです。多くの教員が好きかどうかではなく『やらないといけない』になっているから、土日などのプライベートの時間を潰してしまうんです」

 部活動について、文部科学省は「地域移行」の方針を示している。将来的に、部活動を地域の人材で担うことについて、内田氏は「未来として期待できること」とコメント。

「確かに地域の人材の手助けによって、先生の負担は楽になるかもしれません。でも、子どもはずっと部活動をやり続けるわけですから、それを誰がマネジメントするのか、同時に見ていく必要があります」

(『ABEMAヒルズ』より)

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