今月、米ピュー・リサーチ・センターが公表したデータによれば、アメリカではキリスト教の信者だと自認する人が減少、逆に無宗教、無神論者を自認する人が増加傾向にあるのだという。
作家で宗教学者の島田裕巳氏は、「日本において宗教団体の信者数が最も多かったのはバブル期だと考えられるが、その後はどんどん減ってきている」と話す。
「昔は現世の暮らしが厳しいので、来世は何とか幸せな所に生まれ変わりたいという希望だ。だからどこの宗教でも、天国や極楽、浄土、逆に地獄などを説くわけだ。だが、今は現世利益的なものを求めるようになっている。だから皆さんは人が絶望した時に宗教を求めるものだと考えているかもしれないが、実はそうではなく、人は豊かな時に宗教を求めるものだ。経済が発展している間は、働くと良くなるということと並行して信仰心を熱心に持つ。それが相乗効果になって、全体として前に進んでいるなという希望を抱くことができる。
その意味では、人々が長生きするようになってしまったことが要因としては大きいと思う。現世での暮らしが良い、十分に生きた。じゃあ来世に期待するかというと、そういう気持ちはあまり起こらないということだ。また、かつてのように、念仏を唱えることによって来世に往生しようと考える人は、昔に比べると少ないと思う。宗教に救いを求めても、与えられるまでに時間がかかる。だけどスマホなら瞬時に解決してくれる。そういうスピード感みたいものを求めているという部分もあると思う」。
福井県にある実家が浄土真宗の檀家だという慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は、数年前から準備していた得度が年明けに迫っているという。
「島田先生がおっしゃった通り、人は誰でも拠り所がほしい。僕は若気の至りで、“中二病”的に、“すぐに答えを教えてくれそうなものは拠り所にしないぞ、そんなものはインチキだ、自分こそ拠り所だ”という感じでやってきた。でも、そういう考えは浅はかだったことにすぐに気がつくことになる。一度満たされただけで幸せになるなら誰も悩まない。そして、特に僕みたいなヤツは、欲が雪だるま式に膨らんで悩む。だからすぐに何かが変わるわけではないけれど、長期的に自分が向き合うことで、目先のしょうもない自分を薄めたいという気持ちが前からあった。そこに、たまたま実家がそうだったということと、親鸞聖人の教えが最適だったということで、意義があるなと感じた」。
これに島田氏は「福井、石川、富山といった、浄土真宗の信仰率が高く、風土として根付いている地域は幸福度も高い。おそらく東京なんかと違って、生活の中にそういう芯になるようなものがどこかにあるのだと思う」と指摘。
「一方で、カリスマ的な教祖がいることによって人が集まり、教団が大きくなるというパターンが鎌倉時代から変わらず続いてきたが、どういう原因なのか、今は新しい教祖のような魅力を持っている存在が社会に現れてこない。それが宗教にとっては一つの壁になっているということだと思う。もしかすると、お笑い芸人にそういう部分を持っていかれているということなのかもしれないが、何か困った時にこの人の話を聞くと元気になる、安心感みたいなものを与えてくれる。おそらくそこが一番重要なことだと思う。そういう人が今、出てきにくい社会になってしまっている。
その意味でオンラインサロンを少し調べてみたが、教祖のように思われている中心にいる人たちは、意外とそうでもない。会員の人たちも、教祖のように崇めている所は少ない。そんなにしつこくないというか、サバサバしている。求める側があんまり濃密なものを求めなくなってしまっているのはあるかもしれないし、それがオンラインサロンの魅力でもあるのだと思う。一方で、世界的な傾向でもあるが、年齢が上がるにつれて宗教に関心を持つ人は多くなる。お年寄りになると、お寺や神社巡りをする人が増えていく。それはやはり余裕があるからかもしれないが、死や人生の終わりを考えるようになるからだ」。(『ABEMA Prime』より)
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