プロの将棋界にも徐々に浸透した、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールール。この超早指しに経験値もある棋士も増えたが、それでもいざ本番で戦うとなると、その指は震え、頭の中も混乱するようだ。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ1回戦・第2試合、チーム谷川とチーム鈴木の対戦が1月22日に放送された。この第3局でチーム谷川・都成竜馬七段(32)とチーム鈴木・鈴木大介九段(47)は、最終盤でもつれる熱戦に。「あーっ!」「いやー、バカ」と対局者が自分の指し手に思わず声を出す、ドタバタ模様の一局となった。
チェスクロックが刻む「ピッ、ピッ」という音が、また緊張感を掻き立てる。都成七段の先手で始まった一局は、鈴木九段が得意の四間飛車で相手の居飛車・穴熊を攻略。序盤からペースを握り、有利、優勢、さらには勝勢と進み、勝利へと近づいていた。ここで追い詰められた都成七段は、なんとか状況を打開しようとあの手この手を繰り出したものの、ぎりぎりのところで指した一手に思わず「あーっ!」と悶絶しながら天を仰いだ。その後も、動揺が収まらなかったのか、手元にあったコップも倒してしまった。
勝勢だった鈴木九段も、勝てる将棋とわかるだけに余計に力が入った。持ち時間は残り1分以上あったものの、慌てる心を沈めながら詰み筋を読み切るのも至難の業。「いやー、バカ」と、自分の指し回しに思わず愚痴が出た。結果的に、この一局は鈴木九段が制したが、対局後には「最終盤が本当にひどい。赤ちゃんみたいな将棋でしたね。最後バタバタになったのはお恥ずかしいです」と苦笑いするしかなかった。
公式戦であれば最短でも1手30秒未満で指せばOKという中、最終盤には残り数秒という状況で勝敗に直結する選択を次々と迫られるこのルール。改めてファンからも「どうしたw」「難しいのか」「もだもだする都成先生!眼福。」と様々な声が挙がっていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)