受験シーズンもいよいよ終盤戦。進学が決まり、新たな大学生活を心待ちにする人も多いかもしれない。一方で大学受験に失敗し、すでに浪人を覚悟している人も。中には“多浪”といい、孤独や不安にさいなまれながら何年も浪人し、勉強を続ける人たちもいる。
【映像】予備校代だけで1000万円超えも「浪人時代にかかった費用」まとめ(画像あり)※21:03ごろ〜
そんな多浪生を数多く指導してきた武田塾塾長の中森泰樹氏は「2浪以上、いわゆる多浪の方々というのは少なくない。浪人が続いていくと、(志望校のレベルを)下げられなくなる。『浪人したからには得したい』みたいな。第一志望に受かるまで終わらない。悪い意味で慣れてしまって、勉強自体に対してモチベーションのキープがなかなか難しくなってくる。あとは引け目じゃないけどやはり世間からどんどん遠ざかっていく。メンタルに関しては、けっこうナイーブになっている生徒も多い」という。
将来への不安や取り残される焦燥感。ネガティブなイメージを抱きがちだが、9浪で早稲田大学に入学した濱井正吾さんは「全く後悔はしていない」と話す。
「高校時代、いじめを受けていた。自分をバカにした人たちを見返してやりたかった。自分の人生で一番必要なのが自己肯定感だと思っていて、それを手に入れないことには幸せに生きられないと思った。自分の力で何かを成功した経験が欲しかった」(濱井正吾さん)
濱井さんは現役で関西の私立大学に入学したものの、さらなる高みを目指し仮面浪人した。卒業後も働きながら勉強を続け、27歳で憧れの早稲田大学に合格した。予備校代など、9年間で約660万円がかかったが「多浪よりしんどいことは人生でほぼないと思っている。これさえ乗り切ってしまったら後の人生は明るいと。今とても人生が楽しい」と笑顔を見せる。
多浪だからこそ見える景色がある一方で、5浪で医学部に入学した森村拓哉さん(仮名)は「(多浪は)ただのモラトリアムだと思う。成長とかはあまりない」と話す。
開業医の親を持ち5浪の末、私立大学の医学部に合格した森村さん。5年間、さぞかし勉強したのかと思いきや……
「僕は遊んじゃった系だ。僕を含め、多浪の人のほうが少しだらしない。自由な時間が多いので、それこそパチンコとか、女の子に走ったりする人はいっぱいいる。浪人=真面目に勉強している人ではない」(森村拓哉さん ※現在私立大学医学部の3年生)
浪人期間が長くなるほど、怠惰な日々を過ごしてしまう人も少なくないという。多浪は回り道なのか、それとも人生の糧なのか。
自身も浪人経験があるひろゆき氏は自身の公式YouTubeで「僕は浪人したのは結果としてよかったと思う。高校卒業した後、僕は無職になった。世間は無職に対してどういう扱いをするのかわかった。人は立場によって相手への対応が変わる。これは知っていたほうがいいと僕は思っている」と語っている。
その上で、ひろゆき氏は「1年勉強してどこも受からないんだったら、もう勉強する能力がないから、親が金持ちじゃなかったら、早めに諦めたほうがいい」とコメント。「いろいろな事情があって勉強が1年できなかったとかであれば、何年も浪人するのもありかもしれない。でも、1年間の自由があって勉強がやれるにも関わらず、やらなかったのはそれが実力。受かったところに行くか、受からないならもう高卒で働いたほうがいい」と見解を述べた。
ひろゆき氏の意見に、森村さんは「僕はひろゆきさんがおっしゃる通り、僕はどちらかというと裕福なほうで、裕福だからこそできた浪人だ」と断言。「本当、ただ生きていたら5年経っていただけだ。『苦労して5浪した』ではない」と浪人時代を振り返った。森村さんは「3浪はまだ多浪の最初だと思っていた」といい、その後「5浪目はさすがにやばい」と気づき、勉強。医学部に合格した。
森村さんが浪人していた5年間でかかった金額は、約2110万円。費用は「親が払ってくれた」という。
「(家賃がかかったのは)実家が田舎で予備校がなかった。ちなみにこの金額はおそらく高い方だと思う。安く抑えようと思えば、もっと安く抑えられる。医学部に入学するような裕福な子は、こうやって『そんなに要る?』というくらい、お金がかけられている子は多い」
医学部入学後、勉強のモチベーションはどうなったのだろうか。森村さんは「1〜2年はそこまでじゃなかったが、3年生以降は医学に触れていくので、やったらやったでかなり面白い」と回答。「“勉強が好き”まではいかないが、やはり手に職を持つのはうれしい。例えば、飲食店でアルバイトとして働いて『社員になりました』というときに喜びを感じられると思うが、それに近い感覚で医学のことを学べる楽しさみたいなものがある」と述べた。
親からは、浪人をどう思われていたのだろうか。前述の“9浪”経験者の濱井さんは「もうやめてくれという感じだった」と苦笑い。森村さんは「僕は言うことを聞かなかった。たぶん親としてはめちゃくちゃ言いたかっただろうが、あんまり言われなかった」と話す。
そんな森村さんに、ひろゆき氏は「もう言ってもしょうがないから諦めていたのでは。でも医者は継いでほしいから『いつかやってくれるといいな』みたいな」と親心を推察。森村さんは「やはり多浪になるとメンタルをやられて、例えば命を落としてしまったり、そういう最悪のケースもある。おそらく親としてはそれが怖くて、意外と言わない家庭も多い」と述べた。
ひろゆき氏が「当時のパチンコ代は親が出してくれたのか」と聞くと、森村さんは「パチンコ代とは言わないが『お金ちょうだい』と言って『いや無理だから』みたいなことにはならない。裕福な家庭は」と回答。潔く答える森村さんにひろゆき氏は「森村さんはなんか良いお医者さんになりそうだ」と笑った。
大学ジャーナリストで自身も2浪を経験した石渡嶺司氏は「私も現役と1浪と2浪の前半までは遊んでいた。親に勘当されそうになって、慌てて勉強した」と話す。大学側からすると多浪生はどのような扱いなのだろうか。
石渡氏は「学部による。芸術系学部は、多浪生や社会人入学が多いので、ほぼ気にしない。他の一般的な学部、文系学部や理工系学部もあまり気にしない。ただ、医学部で多浪生であれば、医師国家試験の合格率が低い。つまり、大学受験でちゃんと結果が出てないので、医師国家試験も『合格しない確率が高いだろう』と判断してしまう。それが医学部入試差別(※医学部入試で女性受験者や多浪生を不利に扱った不正)にもつながっていた」と説明した。(『ABEMA Prime』より)
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