近年、宇宙関連における技術開発や投資に、民間企業の参入が相次いでいる。日本で宇宙開発をけん引する宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、民間の大手おもちゃメーカー「タカラトミー」などと共に超小型月面探査ロボット「SORA-Q」を開発。「ゾイド」や「トランスフォーマー」などの変形ロボットを作り出してきたタカラトミーの“変形技術”を取り入れ、設計されたロボットだ。
【映像】「ゾイド」「トランスフォーマー」の変形技術が集結! 月面探査ロボット「SORA-Q」(駆動の様子)
公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「今、宇宙開発では、公募を出して、そこに民間企業が手を挙げて参加するといったコラボレーション、いわゆるオープンイノベーションがトレンドになっている」と話す。理系の学生にとってもAIやプログラミングといった情報系の科目は人気で、毎年多くの学生が専攻するという。
▲3月25日に『17歳からの民主主義とメディアの授業』(日本実業出版社)を上梓した西田氏
一方で、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が発表した「民間企業の研究活動に関する調査報告2021」を見ると、企業が博士課程修了者を採用しなかった理由として下記の内容が掲載されている。
【研究開発者として博士課程修了者を採択しない理由】
・大学院を含む教育などで社内の研究開発者の能力を高める方が効率的。
・自社と博士課程終了者とのマッチングがうまくいかなかったため。
・特定分野の専門的知識を持っていてもすぐに活用できないため。
「企業は開発職も含めて“自前の人材育成”をずっとやってきた。社内に研究所を置いたり、修士を修了した学生を採用して、自分たちの会社で開発に専念させていた。その結果、博士号を取った学生は『もう会社に馴染まないかもしれない』、言ってしまえば『社畜になりにくいかもしれない』『就職しても大学や他の研究所に転職してしまうかもしれない』と思われてきた。一昔前だと、博士号を持っている学生に『専門バカ』と言うような人もいた」(以下、西田亮介氏)
国別のIT技術者の数を見ると1位の「アメリカ」は約477.6万人、2位の「中国」は約227.2万人、3位の「インド」は約212万人、4位の「日本」は約109万人となっている。
一方で、給与ランキング(平均年収)を見ると、1位の「スイス」が9万2500USドル、2位の「アメリカ」が8万3338USドル、3位の「イスラエル」が7万9511USドル、「日本」は18位で4万2464USドルだった。(※ヒューマンリソシア「92カ国をデータでみるITエンジニアレポートvol.2 世界各国のIT技術者給与まとめ」より)
宇宙開発などに欠かせない“IT技術者”を取り巻く環境は刻々と変化している。西田氏は「開発環境に恵まれ、給与水準も高い外資系の民間企業、IT企業は学生に大人気だ。高度な構想力を持っている開発者、技術者が大学で教員になるよりも、民間企業に就職してしまう」と話す。
「博士号を持っている人は総じて『自由でありたい』という欲求が強い。そうすると、会社の不条理な組織・文化に直面して満足できないと、転職していってしまう。過去、そういう部分が“日本式”の企業に『扱いづらい』と思われてきたのかもしれない。しかし、最近は変わってきていて、情報系で博士号を持っているような学生は引く手あまただ」
(「ABEMAヒルズ」より)
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