ものが見えない、見えづらいことから身だしなみに不安を抱えることが多いという視覚障害者たち。一方、ファッション業界では、こうした人たちに対する接客のノウハウが整っていないのが現状だ。
彼らが一体、どのような接客を望んでいるのか。大手アパレルの「ワールド」が先月、視覚障害者を集めて意見交換会を開いた。
【映像】実際の販売シーンを想定して行われたシミュレーションの様子
スタッフ「『試着室までお連れします』という声があると安心しますか?」
参加者「試着室(の場所)大体わかってないです。やっぱり見えていないので。試着室の内装も、こっちの手を取ってもらって『こっち椅子です~』とか教えて欲しいです」
他にも、「ブランドがどこに書いてあるのかとか文字の大きさを知りたいです」「中途で見えなくなった方と先天性でずっと見えない人によって違う」など、思い思いに要望を口にする視覚障害者たち。参加したスタッフも、これまでになかった気付きを得たという。
中学生のころから病気の進行が始まり、現在はうっすら光が感じられる程度だという坂田さん。色のイメージは、昔の記憶だけが頼りだ。
「(失敗談は)色ですよね。全身、上も、下も全部同じ『緑』で合わせてしまって、恥をかいてしまうということもあったりしました」
27歳の時に病気が見つかった川端さんは、接客のときに「こちら」「あちら」などの“こそあど言葉”を使われると、方向がわからず混乱してしまうという。そのため、別の言い方でより具体的な方向案内をしてほしいと話す。
「『クロックポジション』という案内方法です。お客様のおへそを向いている方向を12時として、2時の方向とか3時の方向とか。そういった時計の針になぞらえた方向で教えていただけると一番分かりやすい。それがちょっと難しかったら、右斜め前とか左手のほうとか」
「一般的な方向案内でも右左、前後ろをすっと言える世の中になるといいなと思う」。そう話した川端さんたちとの意見交換会から約1カ月。要望は届いたのだろうか。
スタッフ「9時の方向ですね、あちらにはオリジナル商品があって、3時の方向には期間限定のコスメがあります」
店員は「あちら、こちら」ではなく、具体的な方向の説明で川端さんを案内することができていた。商品説明はどうだろうか。
川端さん「これが何色で…これが何色でしょうか」
スタッフ「今触っているのが、カラーとしては『グリーン』です」
川端「深緑でもない?」
スタッフ「グリーンというカテゴリーなんですが、実際は水色によっているような……。水色とも言えないですし、緑と言い切れるほど緑にも見えない色なんです」
川端「一番どっちだかわからない色だ」
色の説明には課題が残るものの、スタッフの案内で川端さんは春らしい服を買うことができた。「ワールド」では、都内2店舗でこうした接客を積み重ね、マニュアルを作成し、ノウハウを全国の店舗に広げていきたいと広報の井原志津子さんはいう。
「一人でも多くの方、それは視覚に障害をお持ちの方も、体に障害をお持ちの方も、我々は同じようにおしゃれを楽しんでもらいたいと思っています。コミュニケーションの度合いは人によって違うので、どうやってコミュニケーションを取っていくかは今後の課題ですが、おしゃれで一歩踏み出していけるような接客ができればいいなと思っています」
(『ABEMAヒルズ』より)
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