これほどまでに大騒ぎになっていたスーパーレジェンド棋士を、ファンも見たことはないだろう。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第3試合、チーム羽生とチーム三浦の対戦が4月30日に放送された。この第8局、仲間の佐藤紳哉七段(44)が相手のリーダー三浦弘行九段(48)を相手に奮闘していたところ、最終盤に咄嗟に指した手が王手になった。これに羽生九段が虚を突かれたのか「王手!な、な、なんと。ひえー、ひえー、ひえー」とパニックのようなリアクションを見せ、ファンも大きな驚きと笑いに包まれた。
羽生九段といえば、若き頃の対局中には相手棋士に視線を投げかける「羽生にらみ」、終盤に勝ちが見えた時に出ると言われる指の震え、さらには時折寝癖がついたまま対局場に現れるなど、その仕草や見た目でもファンに注目されるほど、歴史に残る大棋士だ。たださすがに対局中に発する言葉となれば「いやー」「そうかー」といった独り言がほとんどで、そのボリュームも小さなもの。テレビのインタビュー取材でも、笑顔は多いながらも落ち着いた様子で語り続けるのがいつもの姿だ。
歴史的な棋士らしい振る舞いが続く羽生九段だけに、まさに「驚きを隠さない」様子は実にレアだ。チームメイトの中村太地七段(33)と見守っていた局面は、三浦九段のリードを跳ね返そうと佐藤七段が必死に食い下がっている終盤。わずかのミスで形勢がひっくり返るほど緊迫な局面で、両者ともに勝敗の分かれ目になるような手を連発していた。その中で突然、佐藤七段の7一に回った飛車が、三浦玉に王手をかけることになったから、さしもの羽生九段も驚いた。「王手!あ、あ、あ。な、な、なんと。ひえー、ひえー、ひえー」。もう言葉になっていないほどで、これを見たファンからも「羽生さん大興奮w」「こんな姿見たことない」「羽生さんかわええ笑」「羽生さんが跳ねた!」といったコメントが大量に投稿された。
この試合はチーム三浦に敗れ、予選敗退が決まってしまったチーム羽生。今年は例年以上に大会を楽しんでいる様子が印象的だった羽生九段だけに、予選敗退はファンも悲しむところだが、来年の大会ではまだ見ぬ様子がまた生まれてくると信じて、楽しみにしたい。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)