今月1日、厚生労働省が昨年度の生活保護申請者の件数が22万9878件に上ったことを公表。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年から2年連続で増加したことがわかった。
アイドルグループ「メロン記念日」の元メンバー・大谷雅恵さんも、コロナ禍の2020年末、生活保護の申請をした一人だ。
「借金もある中で収入が激減してしまい、うつ病もあってこれ以上働くのは厳しいな、という八方塞がりの状況になったので、役所の福祉課に駆け込んだ。“2週間かかる”と言われたが、所持金は4000円。すると“受給が決まったら差し引きますから”と、1日あたり500円の食費を2週間分、貸し付けてくれた。“もし足りなかったら”と、アルファ米も分けてくださった。“ありがとうございます”と、泣きながら受け取って帰ってきた」。
借金を抱えていることに加え、生活保護を受給することになった自分を責める日々だったという。
「本当に助かったけれど、同時に働くことができず、そして生活保護費で借金の返済をしてはいけないというルールがあるので自己破産の手続きをしなければならず、精神的には安定しなかった。人には言えず、家族にも迷惑をかけてしまっているので、罪悪感もあった。
それでもこうして生活保護を受給したこと、自己破産したことを公表したのは、やっぱり“申請しづらい”という方々に道を作ってあげたいと思った。たとえ生活保護を受けることになったとしても、収入がゼロではない方もいるし、一生これで生きていこうというわけではないと思う。
私の場合、結果として精神面も良くなったし、夢を持つこともできるようになった。賛否両論あるし、バッシングもされるかもしれないが、自分の命のことを考えるまで追い詰められてしまうような方を減らしたい。
私も、“自立するために国が作った制度だし、これまで税金も払ってきたでしょ。胸を張って受給していいんだよ”と言って下さった方がいて救われた。動画配信を復活し、収入も安定してきたので、8カ月で受給を止めた。皆さんも、まずは自分のことだけを考えて申請してほしい」。
他方、大谷さんは自己破産手続きと併せて、転居も求められた。都心の住まいでは家賃が高額だとみなされたためだ。
■「車の維持費を税金で賄うとかありえない」のか?
そんな中、5月27日付の河北新報(宮城県)が問題提起した、生活保護制度に関する記事が話題を呼んでいる。妻と病気療養をしながら2人の子どもを育てる福島県の男性(30代)が受給の申請にあたり、福祉事務所から自家用車の処分を求められたというのだ。
生活保護費を受給するためには、扶養してくれる家族や親族がいないことなど並び、活用できる財産が無いことが条件だ。ところが男性の妻にはパニック障害があるため、移動には自動車が欠かせず、「車なしでは通院や買い物もできない。便利な場所は家賃が高く保護費で賄えない」と話しているという。
こうしたケースについて厚労省が例外を認めるよう通知を出していることを踏まえ、福祉事務所に申立書を提出したのが、東北生活保護利用支援ネットワーク事務局次長の太田伸二弁護士だ。
「生活保護は世帯の人数や年齢、障害の有無などによって決まる“最低生活費”を基準に、資産や収入が下回っていれば認められるものだ。また、最低生活費は食費や被服費、光熱費などを賄う“生活扶助”と、家賃を賄う“住宅扶助”などから計算される。
また、預貯金や保険など一定額は持てるものの、高額で換金できるものは処分して生活費に充ててくださいということになる一方、基本的に生活に必要なものは持てるということになっていて、例えば携帯電話については持っていなければ仕事もできず借りられないし、役所としても連絡に必要なので認めるという感じになっている。
そこで自動車だが、“所有”ではなく“保有”なので、カーシェアなどの借用も含まれることになってくる。一方で原付については認めることになっているし、ボロボロの車両も売らなければならないかといえば、そうではない部分がある。男性の妻は症状が重く、やはり夫の運転する車でなければ難しいと話しているので、そこは踏まえて欲しいと思っている」。
それでも、こうした訴えに対しSNS上には「車の維持費を税金で賄うとかありえない」「贅沢だろ 甘えるな」といった厳しい意見も少なくない。
■兼近「同じ人間だということ、それぞれに背景があるということを知って」
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“最低限度の生活”という言葉があるが、多少の“上乗せ”部分は必要ではないだろうか。“不正受給が起きる”と言いたがる人も多いが、余裕がなければ未来につながる教育を受けることもできなくなってしまう。一方、行政のコロナ対策を見ていると、例えば給付金が届くべき人にほとんど届かなかったという問題もある。背景には、制度があるにも関わらず、申請方法を知らない、調べることができない人たちの問題がある」とコメント。
「よく“自助・共助・公助”と言うが、生活保護というのは公助のセーフティーネットの一つで、その手前には自分で自分を助ける、あるいはみんなで助けるというものがあるはずだが、戦後の日本は終身雇用だったように、企業が人々を支える仕組みになってしまい、地域などで助け合う仕組みがあまり育たなかった。そうした問題にも目を向けるべきだ」。
元経産官僚の宇佐美典也氏は「私もお金がない時期があり、見栄を張らなければならなくてキツかった。それでも助けてくださいと言うと周りがご飯を食べさせてくれたりした。一方、とにかく助けてしまえばいいというのは、その人の可能性を潰すことにも繋がりかねないので、ある意味で自立を促すということも必要だと思う。その点では、行政が自動車や公舎の空き部屋などの資産を貸すなど、もっと“駆け込み寺”のようになっていかなければならないのではないか」と指摘。
また、ギャンブル依存にも取り組んでいる立場から、「例えばパチンコ店が積極的に社会福祉に力を注ぐようになればいい。ものすごい情報源、データベースが作れるし、そこから地域の問題点が把握できるはずだし、それらを活用して福祉団体につなげていけば、パチンコ店が立ち直りの出発点にもなり、日本社会は良くなるはずだ」と問題提起した。
EXITの兼近大樹は「僕は中学生の時、“生活保護を受けてくれ”と言ってお母さんとケンカした。それこそ“車があるからイヤだ。子どもたちやおばあちゃんの送り迎えどうすんの?”と言われた。車を捨てず、僕が働に出てば生活保護は受けられないが、それでも新聞配達をして、自分と妹の携帯を買ったという思い出がある」と明かす。
「そして、助けてくれる人もいたが、それが表ではなく、裏の世界の人だった。そうなると、自分もそっちの世界に行ってしまい、他の誰かを助けようと引きずり込んでいく。生活保護を受給しなかった人は、たまたま良い環境に生まれただけなのであって、同じ人間だということ、それぞれに背景があるということを知ってほしい」。
太田弁護士は「実際のところ、今の生活保護の受給者は高齢者が非常に多く、いわば年金の不足分を補うような制度になってしまっている。もちろん、就労して制度から出ていくことを考えられる人もいるので一律ではないが、そういう実態もある」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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