“菅前総理が高3に講演”が波紋…複数呼べば中立公正な主権者教育になる?元NHK堀潤「聞きにくいことをどんどん質問させればいい」
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 7月10日が投開票とみられる参院選を前にマスメディアが“選挙モード”に入る中、神奈川県の県立高が菅前総理が登壇する講演会を開催予定であることが波紋を広げている。

【映像】前総理が高校生に講演...なぜ問題に?

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 講演会に政治参加の意識を育む、いわゆる“主権者教育”としての効果が期待される一方、対象に選挙権を持つ3年生が含まれていることから、「学校は特定の政党を支持し、又は反対する政治教育その他政治活動をしてはならない」とする教育基本法14条に抵触する可能性も指摘されている。

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 実際、総務省と文科省が作成した副教材『私たちが拓く日本の未来~有権者として求められる力を身につけるために~』の冒頭では、「指導上の政治的中立の確保等に関する留意点」として「学校における政治的中立性の確保」を明記しており、具体的には「複数の会派を招くことも含め、生徒が様々な意見に触れることができるようにするといった工夫を行うことが期待される」とされている。

■堀潤氏「複数の総理経験者を呼ぶのがフェアなのか」

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 神奈川県の県立高出身のジャーナリスト堀潤氏は「三権分立がいかにごっちゃになっているかを象徴するような出来事だと思う。あくまでも内閣総理大臣は行政府の長であって、政党・会派が議論をする立法府の長ではないし、仮に各党から呼ぶとしても、例えば自民党から出てきた議員が全ての自民党議員の意見を代表しているかと言えば、決してそうではないと思う。

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 そこはコロナ対策など、聞きにくいことをどんどん前総理に質問するような緊張感があれば中立性は保たれると思うし、中立性は保たれるのではないかと思うし、むしろ皆がこうしてざわついていることについて、“皆はどう思う?”と議論させてもいい。それこそが生きた“主権者教育”だし、多角的な視点を提示して生徒が考える時間を作り、リスクを取ってガチンコで議論させるのが先生の腕の見せどころではないだろうか。

 テレビの場合は放送法の関係で自主的に公平中立を目指しているが、僕がNHK時代に見たのは、偉い人たちが名刺を持って来局した政治家に挨拶する様子だ。そんな空間で本当に中立性を保てているのだろうか。“複数”だからといって、総理経験者を呼べばそれでフェアだということになるのだろうか」。

■若新雄純氏「ちょっとずつ汚れていくしかない」

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 慶応義塾大学の若新雄純特任准教授は「そもそも運転免許のように“合格ライン”があるわけでもないし、18歳の段階で“正しい主権者”になることなんて不可能なんじゃないか。結局、人からの影響は受けるだろうし、反省することもある。それが主権者ではないか」と主張。

 「“意識高い系”だった僕の場合、20歳になって選挙権を得ると“俺こそが地域の課題解決を担う一員なんだ”と張り切って投票所に行った。そして“どうしてあんなの応援しちゃったんだろう”と反省したことを友達に明かしたり、共産党支持者の親父と公明党支持者のおかんと議論をしたり(笑)。そういうことを繰り返しながら“主権者”としての経験を積んできた。

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 そして完全に中立な立場で政治を語れる人なんていないし、むしろ人には何かしらの偏りがあることを前提に、“自分はどうしよう”かと判断することが大切なのであって、“色の付いたものに振れさせてはダメだ”と自主規制するのは、“真っ白な状態だから、自分の頭では考えられない”と、18、19歳の子どもたちのことをバカだと決めつけているのではないか。それなら放っておいた方がマシだと思うし、“菅さんを呼んだのってどうなの?”と話をしながら、ちょっとずつ汚れていくしかないと思う」。

■成田悠輔氏「投票に行くのをやめた、でもいい」

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 米・イェール大学助教授で半熟仮想株式会社代表の成田悠輔氏は「この時期に菅さんが特定の学校に行って講演しても、大したメリットはないのではないか。それをわざわざやるということは、こうやって議論をしてもらいたかったからではないのか(笑)。やはり各政党から1人ずつ呼んで並べておけば中立でしょうという発想が思考停止なんじゃないかと思うし、中立性というのは、その場での議論のあり方や呼んだ人に対する接し方に宿るのではないか」と指摘。

 「僕は政治や民主主義の問題を若者に押し付けようとする、上から目線の“おっさん”っぽい言葉だなという感じがして、“主権者教育”という言葉はあまり好きではない。そして“主権者教育”という概念そのものが混乱を極めていると思う。政治家が講演するとか、模擬投票をするとか、そういったことが主権者教育なのだろうか。それよりも、校則を自分たちで決めることなどを通して社会をどう作っていくかを考える。その結果として“あんな政治家たちには任せておけない、あんな国会には何の期待もできない、だから投票に行くのをやめた”、という判断をしたなら、それも主権者教育の立派な結果だと思う」。

■西野偉彦氏「校内の身近な問題について考えてみては」

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 かつて神奈川県教委が設置した政治教育に関する会議の座長を務めた経験もある西野偉彦・慶大SFC研究所上席所員は「主権者教育と聞くと投票率を上げるためにやっているというような誤解があるが、本来は国や社会の問題を自分のこととして捉えるということがポイントなわけで、そこは模擬選挙を一生懸命やったとしても、関心が高まらなければ本末転倒だ」と話す。

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 「例えば社会科教育の中で重点が置かれてきた政治の仕組みだけではなく、その中身である政策についてもしっかり考えましょうということだ。私が薦めているのは、憲法でも消費税でもコロナ対策でも構わないので、自分が関心を持つ“マイ争点”を掘り下げ、各政党、各候補者が何を言っているのかを考えてみる。あるいは部活動の予算の配分の基準を考えることで税金の配分を考える気づきにもつながるので、校内やクラスのルールなど、より身近な問題について考えてみるのも大切だ」。(『ABEMA Prime』より)

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