全国の小中学生に1人1台端末を配付するGIGAスクール構想。そして、コロナ禍での接触の機会を減らすため急速に進んだICT教育。誰もが子どもの頃から情報通信技術に触れる新たな学びの形が始まる中、浮上した問題――。それが、“タブレットいじめ”だ。
東京・町田市で2020年、小学6年生の女子児童がいじめを訴え自殺した。女子児童の両親によると、複数の同級生が学校から配布されたタブレットのチャット上に「うざい」「死んで」などと書き込んでいたという。
文部科学省の調査では、パソコンやスマホを使ったネットいじめは2020年度、1万8870件で過去最多に――。オンライン上の見えないいじめが増加し続ける中、その対策は急務となっている。
そこで、ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、全ての子どもがスマートフォンやタブレット端末に触れる現代のいじめの実態。そして、子どもを守るため、保護者や学校に何ができるのかを児童のネット利用に詳しい、千葉大学の藤川大祐教授に話を聞いた。
Q.パソコンなどを使ったネットいじめは、2020年度に過去最多となったが、タブレットいじめは実態としてはどういう状況なのか。深刻なのか。
ネット上のいじめ自体は、子どもたちがスマートフォンをかなり使うようになってきて、非常に深刻になっていると見た方がいいですね。数値にも出ていますけども、ネット上の人命に該当する事案というのはかなり年々増えています。深刻なものも多いので注意が必要ですね。
Q.年齢としては小学校高学年や中学生が気をつけなければいけないのか。
特に中学1年生は注意が必要で、もっと前からスマートフォンを使っているお子さんも多いのですが、中学校に入るとSNSの利用が急増するんですね。そして、子どもたちも生活が変わりまして、クラスの仲間とか部活の人とか、いろんな人と連絡を取るようになります。世界が広がるのでいじめにつながるリスクも大きくなります。
Q.どうしたら防ぐことができ、子どもを守ることができるのか
もちろん多くの子どもたちが、ルールを守って使おうという意識にならないと大変なことになります。きちんと指導していたら9割の子どもたちはしっかり使うと思います。しかし、子どもは未熟ですから1割くらいは危険な使い方をしてしまうと考えていた方がいいと思います。そういう子どもたちが、学校の端末や私用で使っているスマートフォンなどでいじめを行ってしまうのは、どうしてもゼロにはできないと考えるべきですね。ですから、何かあった時に被害を受けたお子さんや、目撃したお子さんが教師や保護者に相談などできるようにするのが重要ですね。
また、いじめ対策の観点からすると、ネットのいじめは証拠が残りやすいので対応はしやすいんです。ですから、被害を受けたお子さんや、目撃したお子さんがスクリーンショットを撮り記録をとっておき、それを持って学校に相談してもらうと、学校としては基本的に対処しやすいです。問題となっているケースは、学校の対処が遅れてしまっているケースとなります。東京・町田市の例は典型ですが、相談があっても学校がきちんと対処してなくて、事態が深刻化しています。早く相談して、学校が対処すれば深刻化することはほとんどないです。
Q.中学生になると親子の適度な距離感というのが難しいと思うのだが、大人はどうしたらいいのか
特に中学生くらいの時期は、親子の関係が組み変わっていく時期なんです。反抗期なども経て、新たな関係を築いていく時期なので何もかも保護者に相談するとは期待しない方がいいと考えます。ですので、さまざまなルートで相談できるような体制が必要です。
(『ABEMAヒルズ』より)