将棋の里見香奈女流四冠(女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花、30)が7月6日、女性初となるプロ編入試験受験に向けての記者会見に応じた。8月から予定されている編入試験の五番勝負に向けて「できる限りのことをして全力で挑みたい」と意気込みを語った。主な会見の内容は以下の通り。
――5月27日に受験資格を獲得した際には、あまり受験に前向きではないような印象がありました。受験を決意するまでにどのような心境の変化がありましたか?
1ヵ月間ありましたが、あまり深く考えるということではなくて、他棋戦の対局も入っていましたので、目の前の対局や出来事を全力でこなしていました。その中で、あまり考える余裕もなく、ただ挑戦してみたいという気持ちが出てきたので決めました。
――編入試験への意気込みをお聞かせください。
正直、自分の実力からすると厳しい戦いになると思いますが、試験までにできる限りのことをして全力で挑みたいと思っています。
――奨励会とは違うアプローチとなります。応援している方へのメッセージをお願いします。
自分自身は悔いのないように過ごしていきたいと思っています。その中で周りの方に何かを届けることが出来たらいいなと思っています。
――女性初の受験ということで注目や期待も集まっていると思いますが、ご自身ではどのように感じていますか?
これだけ多くの方に注目してもらえるのは大変嬉しいと思うのと同時に、こういうことが珍しくない社会になればいいなとも思います。私自身は自分のことで精いっぱいの部分もあるので、目の前のことに全力で取り組めたらいいなと思います。
――将棋における男女の差についてはどう感じていますか?
歴史も違うので何とも言えないところもありますが、現状としてはかなり差があると感じています。少しでも埋められるようにと思っています。隣の囲碁界では男女が拮抗している印象を受けますので、私自身にも刺激になっています。
――「棋士」への思いに変化はありましたか?
奨励会に編入したときは、棋士になることだけを考えてやってきましたが、今は、純粋に将棋が大好きという気持ちです。少しでも棋力向上を目指して、強い方々と対局をしたいという、ただそれだけです。
――成績が上がっていている要因はどのように考えられていますか?
昔は時間重視で勉強していましたが、年を重ねるにつれてやり方を変えた部分もあります。AIが強くなっていますが自分の個性を出せる将棋をしたいなと考えていて、自由度の高い、勝敗に限らない将棋を指したいという思いが結果として良くなったのかなと思います。
――具体的なAI研究の取り入れ方について教えてください。
自分の棋風と照らし合わせてというところもありますが、すべてAI通りに指せる訳ではないので、AIが良しとしている場面と自分が指しこなしていけるかという局面が一致したところを落としどころとして使っています。すべてをAIに頼っている訳ではないです。
――編入試験の対策についてどのような準備をさせていますか?
相手によって変わってくると思いますが、相手がどうこうという訳ではなくて、自分の力が出し切れるような対策を練って戦いたいなと思います。
――女流棋士との両立についてはどのように考えていますか?
その(両立していく)つもりですが、現実になった訳ではないので、そうなってから考えたいと思います。
――周りの方への相談はされましたか?またその中で印象的な言葉などはありましたか?
身近な人、兄妹に声をかけて意見を求めたくらいですが、体調を気遣ってくれる言葉ばかりでした。そういう言葉がかえって挑戦してみたいという気持ちに変わったところもあります。両親の考えていることは大体わかるので、あまり相談することはなかったですが、とにかく体調を気遣ってくれていました。
――奨励会三段リーグ時代と現在との棋力の差をどのようにとらえていますか?
当時と比べると、自分の心境も変わっていますし、将棋を指せていることがどれだけ幸せかということに気付けました。そういったところが大きく違うところかなと思います。
――地元・島根県の存在について教えてください。
地元にいる時は温かくお声がけしていただきましたし、10年ほど前に大阪に出てきてからも、常に温かく見守ってもらっていると感じています。将棋を指す上でのモチベーションになっています。
――編入試験で対戦する5人の棋士の印象について教えてください。
奨励会を含めると、全員と対局したことはあります。それぞれ個性があり、全く違う将棋を指されるので、一局一局対策を練らないといけないのかなと思っています。
――里見先生は終盤力が突出した印象がありますが、強化したいテーマなどはありますか?
自分の中ではどちらかというと序中盤型と思っています。とにかく終盤の力勝負になったところでの正確性、終盤力を上げられるように勉強していきたいなと思っています。
――棋士として対局することの魅力についてはどのように考えられていますか?
深く考えてはいないですが、ただ強い方と対局したいという気持ちがあります。棋士になれるかというよりは、自分がどこまでやれるかということを重視しています。
――受験申請が期限ぎりぎりになった理由を教えてください。
毎日考えるということではなくて、自分がより後悔しないような選択をするために、ぎりぎりまで自分の感情の動きを見ていました。最後は自分がどれだけやれるのかなというところで判断したところはあります。