将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Eリーグ第1試合、チーム渡辺とチーム藤井の対戦が7月9日に放送された。決勝戦さながらの豪華なカード。リーダーの渡辺明名人(棋王、38)、エース近藤誠也七段(25)、新加入の渡辺和史五段(27)が力を合わせて、大会4連覇中の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)率いるチーム藤井に5勝3敗で勝利。「がんばりマンモス!」を合言葉に強敵を破り、予選突破に王手をかけた。
名実ともにチームを支えたのはリーダー・渡辺名人だった。第1局は自ら先陣を切り、敵将の藤井竜王を「予想していなかった」と驚かせた。名人VS竜王、タイトル戦さながらの大熱戦を王手竜取りから即詰みに討ち取り、143手で勝利。チームに吉報を持ち帰り、「上手く指せたと思う」と喜んだ。誰よりもABEMAトーナメントを楽しむエンターテイナーの渡辺名人。仲間の出陣の際には「頑張り?」「マンモス!」とチーム名を掛け声に送り出した。
しかし、第1局の渡辺名人の勝利がチーム藤井の闘争心に火をつける結果に。第2局では近藤七段が永世名人保持者でタイトル通算12期のレジェンド森内俊之九段(51)に、第3局では渡辺五段が竜王3期の藤井猛九段(51)に連敗。何とか流れを引き戻したい第4局では、再び渡辺名人と藤井竜王のリーダー対決となったが、今度は藤井竜王が「お返し」。チーム渡辺は3連敗で一気に劣勢に追い込まれた。
予選突破、さらには優勝を目標に掲げるチーム渡辺。渡辺名人は「今のところチームメイトが勝ってくれないので、発破を掛けていきたい」と苦笑いを見せる場面もあったが、そんな心配は不要とばかりにエース近藤七段が奮起した。第5局では藤井九段を相手に快勝を飾ると、新鋭・渡辺五段も森内九段を討ち取り連勝。初勝利を挙げた渡辺五段は「ひとつ勝ったので、気持ちは楽にチームの元に返れそう」と喜んだ。さらには第7局で近藤七段が藤井竜王から白星を奪取。「手ごたえがあった訳ではないが、必死にやった結果」と振り返り、いよいよチーム勝利にあと1勝まで盛り返した。
最後を決めたのはやはり渡辺名人だった。対するは過去2大会で高いフィッシャー適性を発揮してきた森内九段。矢倉の出だしとなった一局は、序盤から渡辺名人がペースを握ると森内九段の粘りを振り切り148手で勝利。一気に4連勝でひっくり返して、通算5勝3敗で激闘を制した。渡辺名人は、「チームのみんなも1勝以上挙げて勝ちあがることが出来たので、最高の滑り出しになった。どれも熱戦で濃密な8局だった。これを次戦にも活かしたい」と満足気。初出場ながら個人1勝1敗と奮闘した渡辺五段は、「チームメイトの対局を一喜一憂しながら見ていた。団体戦っていいなって思いました」と感慨深げに振り返った。「がんばりマンモス!」「お疲れマンモス!」と互いに士気を高め合ったチーム渡辺。やはりこのチームには笑顔が似合う。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)