これぞ下克上。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Eリーグ第3試合、エントリーチームとチーム藤井の対戦が7月23日に放送された。黒田尭之五段(25)は、棋界の頂点に君臨する藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)を破るなどの大活躍で、チーム本戦進出へのけん引役となった。藤井戦で勝ち星を奪った黒田五段は「自分でも信じられない。夢なのか現実なのか…」と声を震わせ、ファンからも「感動しちゃったぁ」「黒田先生めちゃくちゃカッコいい」「下克上だーー!!」と熱いコメントが多数寄せられていた。
黒田五段は、2019年4月に四段昇段。6年間在籍した三段リーグの間には、令和の天才棋士・藤井竜王が1期抜けで先にプロ入りを果たした。この日は「雲の上の存在のような人」という藤井竜王とまずは第2局で対戦となったが、ここでは力を発揮できずに黒星を喫した。
仲間の折田翔吾四段(32)、冨田誠也四段(26)の奮闘もあり、3勝1敗でリードして迎えた第5局。波に乗るエントリーチームは、一気に王手をかけるべく黒田五段が立ち上がった。一方、予選突破に黄色信号が灯るチーム藤井からは、藤井竜王が出陣。再び黒田五段と藤井竜王のマッチングとなった。ピンチに立つ藤井竜王は、なんとしてでも本戦進出に望みをつなげるべく「チームの事を考えると荷が重いので、個人戦だと思って戦いたい」とギアチェンジ。黒田五段は、「こんなに早くリベンジの機会が巡ってくるとは。エース戦法で頑張ります」と“必殺・横歩取り”を絶対王者にぶつけた。
ビシビシと思いを込めるように駒音高く指し進める黒田五段。リーダーの折田四段も「ここ最近で一番ワクワクしている」と大一番を見守った。先に主導権を握ったのは黒田五段。チーム藤井の控室の森内俊之九段(51)、藤井猛九段(51)は「駒の損得は無いけど、自信なくなってきた」とやや不安げにモニターをのぞき込んだ。
絶対に負けられない藤井竜王は、圧巻の勝負術で局面の複雑化を図るも、逆転には至らず。黒田五段が106手で絶対王者から金星を奪い取ると、解説の千葉幸生七段(43)も「序盤から華々しい展開。強気の応酬で見ごたえ充分だった。大駒を駆使して一気に寄り形に持っていた黒田さんの切れ味が光った一局だった」と絶賛した。
敗れた藤井竜王は、「序盤の構想段階で良くない指し方をしてしまった。玉が薄い展開で、全体的に思わしくなかった」と肩を落とし、チーム藤井はカド番に追いやられることに。一方、予選突破に王手をかけたエントリーチームの控室からは「黒ちゃんすげー!」「圧倒的強者…」と声が上がっていた。
熱戦を制した黒田五段は、「自分でも信じられない。夢なのか現実なのか…」と夢うつつ。「横歩取りは自分の得意戦法。どの程度藤井竜王に通用するかと思っていたが、まさかという感じ。奇跡みたいに勝つことができてすごく嬉しい。“このために将棋をやっている”と言っても過言ではない」と熱い言葉で激戦を振り返った。普段は物静かな黒田五段の、熱気あふれるフレーズにファンも歓喜。「ちょっと泣きそう」「熱いなあ!」「ただただ、すごい」「これぞ下克上!」と大興奮のコメントが寄せられていた。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)